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朝、目が覚めたらもう明るい。


カーテンの隙間から強い光が入っていて

嫌でも目が覚める。時計を見ると七時二十分。


「あ」


スマホに通知。


「味噌汁冷蔵庫。卵焼き焦げたかも」


夏なのにお味噌汁は作るらしい。


キッチンに行くと、ラップのかかったお皿と

小鍋ごと冷蔵庫に入っているお味噌汁。


卵焼きの端が少し濃くなっている。


電子レンジで温めてる間にエアコンをつける。

もわっとした空気がゆっくり動き出す。


職場では、来客対応で一瞬言葉が詰まった。


敬語の順番がぐちゃっとなって自分で「あ」と思う。


相手は気にしていない顔だったけれど

頭の中で何度か再生される。


昼休みに冷たいお茶を飲みながら

もう一回思い出して小さくため息をつく。


帰宅すると、リビングからエアコンの風が流れてくる。


「おかえり」


悠さんはシャツの袖をまくったままソファに座っている。


「ただいま」


「今日暑いな」


「外、むわっとしてました」


鞄を置いて、髪をまとめ直す。


「夕飯どうします?」


「さっぱりしたやつ」


冷蔵庫を開けて、とりあえず冷しゃぶに決める。


肉を茹でながら、背後から悠さんが覗き込む。


「昨日も肉だった気がする」


「気のせいです」


「減らないな」


「食べる人が二人しかいないので」


振り向いたら肩がぶつかる。


「邪魔」


「そっちがです」


火を止めて、氷水に落とす。


水が跳ねて、床にぽたぽた落ちる。


「拭いてください」


「今?」


「今です」


渋々キッチンペーパーを取る姿がちょっと面白い。


テーブルに並べると、

悠さんがグラスに麦茶を注いでいる。


「氷入れすぎです」


「暑い」


カラン、と音が鳴る。


食べながらテレビを流す。


「今日ちょっと詰まりました」


「何が」


「言葉」


「噛んだ?」


「そこまでじゃないです」


「じゃあ大丈夫だろ」


基準が甘い。


食後、流しに立つと当然のように隣に来る。


「俺洗う」


「じゃあ拭きます」


皿を取ろうとして手がぶつかる。


「だから邪魔」


「そっちがです」


水が跳ねて、腕につく。


「冷たいです」


「水だからな、夏でよかったな」


「冬だったら怒ります」


「怒らないだろ」


「どうでしょう」


洗濯機が鳴る。


ベランダに出ると、まだ空気がぬるい。


「暑」


「夜なのに」


シャツを広げながら、悠さんが聞く。


「明日何時」


「八時です」


「俺七時半」


「静かに出てください」


「善処する」


部屋に戻ると、エアコンの風がありがたい。


お風呂に入り髪を乾かしながら、悠さんが言う。


「卵焼き、焦げてなかった」


「焦げてました」


「気のせいだ」


「端、硬かったです」


「タンパク質だ」


意味が分からない。


布団に入ると、シーツが少しひんやりしている。


「電気」


「はい」


パチ、と消える。


エアコンの低い音だけが続く。


少ししてから、隣が寝返りを打つ。


「明日も暑いらしい」


「嫌ですね」


「アイス買うか」


「帰りにですか」


「溶けるな」


「溶けますね」


小さく笑い声が混ざる。




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