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チャイムが鳴る前から、なんとなくわかる。


玄関を開けると、いつもの二人。


「お邪魔します」


「お邪魔します」


変わらない空気。


なのに。


今日は、少しだけ違う。


リビングに入って、四人で座る。


他愛もない話。


仕事のこと、最近のこと。


けれど、どこか

湊さんと遥花さんの視線が合う回数が多い。


小さな合図みたいに。


ふと、二人が同時に息を整えた。


「あの」


湊さんが、遥花さんを見る。


遥花さんが、小さく頷く。


そのやりとりだけで、胸がきゅっとする。


すごい、ちゃんと“夫婦”なんだ。


「報告があります」


空気が変わる。


悠さんが、わずかに姿勢を正す。


「遥花さんが、妊娠しました」


一瞬、音が消えた気がした。


「……は?」


悠さんの間の抜けた声。


でも目は、すぐに柔らかくなる。


「まじか」


「安定期入ったから、やっと言えた」


遥花さんが、少しだけ照れたように笑う。


「十二月予定日です」


湊さんの声は、落ち着いているけれど。


ほんの少しだけ、誇らしさが混じっている。


家族になる覚悟の声。


「……おめでとう」


悠さんが、ゆっくり言う。


その声が、優しい。


私も、言葉を探す。


「おめでとうございます……」


お腹はまだ目立たない。


でも、そこに命がある。


こんなに近くで。


こんなに当たり前みたいに。


妊娠って、もっと遠いものだと思っていた。


社会に出て。


仕事に慣れて。


何年も先の話だと。


でも今、目の前にある。


夫婦が目を合わせて、覚悟を決めて、伝える瞬間。


その空気が、こんなにも温かい。


胸の奥が、じんわりする。


……いいな。


私には、まだ早いかもしれない。


社会人になったばかりで。


自分のことで精一杯で。


でも。


もし。


もし、いつか。


悠さんとの子どもができたら。


きっと、今みたいに。


二人で目を合わせて、覚悟を決めて。


伝えるんだろう。


その光景が、はっきり想像できてしまう。


ふと、悠さんを見る。


「……何」


「なんでもないです」


でも心の中では、はっきりしていた。


遠い未来だと思っていたものが。


急に、現実の延長線にある。


私も、いつか。


悠さんとの子どもが、欲しい。


その気持ちが、初めて、形になった。




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