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「私にもできます!」
段ボールの前で、両袖をまくる朱里。
……いや、できるとは思うけど。
説明書を広げながら、ちらっと見る。
小さい。
本当に小さい。
「手、届いてねえぞ」
「届きます!」
届いてない。
天板を押さえようとして、背伸びして、ぐらっとする。
「危ねえ」
反射で腕が出た。
細い。
折れそうなくらい細いくせに、
妙に頑固だ。
「貸せ」
「大丈夫です!」
体重かけてるけど、びくともしない。
……力、全然足りてねえ。
でも、言わない。
悔しそうな顔してるから。
「朱里」
「はい」
「できるのと、無理すんのは別だ」
むっとしてわかりやすい。
「私だって、役に立ちたいです」
その声が、小さい。
ああ。
そういうことか。
家具がどうとかじゃねえな。
「じゃあ役割分担」
「お前が押さえろ。俺が締める」
朱里の手の上に、自分の手を重ねる。
朱里の体温が伝わる。
きゅ、と音がして、板が固定される。
「……できました」
「だろ」
「私が押さえたからですね」
一瞬、笑いそうになる。
けど、ちゃんと見る。
「そうだな」
目を丸くしてる。
「お前が押さえてなきゃ無理だった」
嘘じゃない。
一人でやるより、早い。
安定する。
並んでる、感じがする。
完成した本棚を見上げて、
「達成感ありますね」
誇らしげな顔。
小さいくせに、でかい顔。
「ほぼ俺だけどな」
「押さえました!」
こうやって、ちょこまか動いて。
できること探して。
並ぼうとする。
妻だから、とかじゃなくて。
朱里だから。
「神谷家、って感じしますね」
その言葉に、少しだけ胸が鳴る。
ああ、そうか。
俺は今、
家族を作ってる。
「まだ本入ってねえけどな」
そう言いながらも、
本棚よりも、
隣で汗かいてる小さい身体のほうが、ずっと愛しい。
朱里がいるだけで、完成してる。




