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夕飯後。


テレビの音がなんとなく流れてるリビングで

俺は水を飲みながら言う。


「プロポーズした」


母親が、湯のみを持ったまま止まる。


一拍。


「あらまあ」


リアクション薄いな。


「今度、連れてくる」


そう続けると、やっとちゃんとこっちを見る。


「どんな子?」


少し考えてから、


「ちっさい」


「なにそれ」


即答で返される。


「他にないの?」


「落ち着いてる。ちゃんとしてる」


「それで“ちっさい”が最初に来るの?」


「事実だろ」


母親が笑う。


「可愛いの?」


「……まあ」


「へえ」


にやっとするな。


「遥花ちゃんたちには会わせたの?」


「ああ」


ソファに座りながら答える。


「半年前くらいに。

ちょいちょい連絡取り合ってるらしい」


「らしい、ってなに」


「俺通してないときもあるみたいだし」


母親が頷く。


「なら安心ね」


「何が」


「あんた、うちより遥花ちゃん達といる時間の方が長かったから」


「そんなことないだろ」


「毎日毎日入り浸って」


「入り浸ってねえ」


「遥花ちゃんと結婚するのかと思ってたわ」


その言葉に、思考が一瞬止まる。


「……は?」


母親は普通の顔だ。


冗談でもなんでもなく。


「え、考えたことなかったの?」


「1ミリもない」


「ほんと?」


「遥花は妹みたいなもんだろ」


呆れたように言うと、


「あんたのが年下じゃない」


言い返せない。


確かに。


「でも、そういうんじゃない」


「へえ」


また笑う。


「じゃあその子は?」


「……違う」


何が、とは言わない。


でも、自分で分かる。


違う。


最初から。


「その子はちゃんと“女の子”なのね」


「当たり前だろ」


「ふーん」


母親が湯のみを置く。


「楽しみにしてるわ」


さらっと。


重くない。


詮索もない。


「泣かせたら許さないからね」


「泣かせねえよ」


「どうだか」


立ち上がりながら、ぽつりと付け足す。


「でも良かった」


「何が」


「ちゃんと自分で選んだ人なんでしょ?」


少しだけ、言葉が詰まる。


「ああ」


「ならいいわ」


それだけ。


テレビの音が戻る。


日常。


でも、少しだけ違う。


部屋に戻りながら思う。


遥花と結婚するかと思ってた、か。


1ミリも考えてなかった。


朱里以外、考えられない。


スマホを手に取る。


『母親、楽しみにしてるって』


すぐ既読がつく。


『えっ、もうお話されたんですか?』


小さく笑う。


『した。ちっさいって言っといた』


『……それ最初に言うことですか?』


怒ってるスタンプ。


そのやり取りが、やけにしっくりくる。


ああ。


ちゃんと、選んだ。


今度はこの家に、あいつが来る。


その光景を想像して、


少しだけ、口元が緩んだ。




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