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時間になる五分前から、ページは開いている。


更新ボタンの上で、指が止まる。


「まだだぞ」


隣から悠さん。


分かってます、と小さく返す。


分かっているのに、落ち着かない。


受験番号は、もう何十回も確認した。


メモにも書いた。


スマホのメモ帳にも保存した。


間違えないように。


間違えたくないから。


「……いきます」


時間ぴったり。


一瞬、白い画面が表示される。


息を止める。


上から、目で追う。


……ない。


まだ上の方だ。


もう少し下。


……ない。


胸の奥が、じわっと冷える。


スクロール。


指が震える。


数字がうまく追えない。


一回止める。


深呼吸。


もう一度、ゆっくり。


上から。


ひとつ、飛ばしてないか。


似てる番号、見間違えてないか。


ない。


視界の端が、暗くなる。


「……朱里」


悠さんの声。


すぐ隣のはずなのに、


すごく遠い。


まだ全部見てない。


まだ下がある。


スクロール。


もう一段。


……ない。


喉がひくっと鳴る。


あれ。


だめ、だった?


そんなはず。


心臓が、どくん、と大きく鳴る。


手が、冷たい。


「……もう一回、上から見ます」


自分の声も遠く感じる。


震えてる。


最初から。


ゆっくり。


一行ずつ。


数字を、声に出さずに読む。


ちがう。


ちがう。


ちが――


止まる。


あれ。


指が、止まる。


見間違いかもしれない。


もう一度。


数字。


受験番号。


合ってる。


一桁も、間違ってない。


一瞬、脳が理解できない。


これ、私?


ほんとに?


「……あ」


やっと声が出る。


でも、笑えない。


まだ、信じられない。


「どう?」


悠さんの声。


振り向く。


言葉が出ない。


画面を、ただ指差す。


悠さんが、覗き込む。


「……あるじゃん」


静かな声。


その一言で、


やっと現実になる。


ある。


私の番号。


ある。


その瞬間、視界が揺れ足の力が抜ける。


抱き止められる。


ぎゅっと。


強く。


「言えよ」


低くて、少しだけ掠れた声。


「……ありました」


やっと言えた。


言った瞬間、涙が溢れる。


安堵が、一気に押し寄せる。


怖かった。


落ちるかもしれないって、ずっと。


口には出さなかったけど。


悠さんの胸に顔を埋める。


「よくやったな」


その声が、あたたかい。


背中を撫でる手が、ゆっくり。


震えが止まらない。


でも、怖くない。


「……悠さん」


「ん?」


「私、受かりました」


当たり前の確認みたいに言う。


「知ってる」


少し笑う気配。


でも、腕は離れない。


「これで」


言葉が、自然に出る。


「ちゃんと、隣に立てます」


一瞬、腕の力が強くなる。


「最初から立ってるだろ」


ずるい。


涙がまた出る。


でも、今日は弱い涙じゃない。


嬉しい涙。


「……逃げませんよ」


小さく言う。


すると、耳元で。


低く。


「逃がすかよ」


心臓が跳ねる。


私は今日、


未来を掴んだ。


そして。


この人の隣にいる未来を、


ちゃんと選べた。




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