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「ゆうさ、ん……っ」


自分の声とは思えないくらい甘くなる。


胸が、どくどく鳴っている。


さっきまで笑っていたのに。


からかっていたのに。


“うちのやけん”なんて、強がって。


覚悟は、していたはずだった。


でも。


腕の中に閉じ込められた瞬間、


初めて思った。


――あ、ちがう。


悠さん。


やさしい人。


理性的で、いつも止まってくれて。


私が余裕なくなっても、笑って受け止めてくれる人。


そのはずなのに。


「お前が煽ったんだろ」


低い。


耳に落ちる声が、いつもと違う。


熱い。


「ちゃんと俺のになれよ」


息が、近い。


苦しくなるくらい近い。


心臓が跳ねる。


怖い、とは違う。


でも、初めて見る表情。


目が、真っ直ぐで。


逃がさない、って顔。


「……もう、むり……っ」


思わずこぼれる。


体が追いつかない。


頭も。


覚悟はあった。


でも想像よりずっと、重い。


熱も、呼吸も、視線も。


いつもなら。


「大丈夫か」って止めてくれるのに。


今日は止まらない。


止まらないのに、


乱暴じゃない。


ちゃんと見てる。


ちゃんと、待ってる。


「やめてほしかったら言え」


低い声。


その一言で分かる。


無理やりじゃない。


選ぶのは、私。


喉が鳴る。


怖いんじゃない。


知らない悠さんが、いる。


でも。


目を開ける。


ちゃんと、見る。


悠さんの目。


真剣で、少し苦しそうで。


余裕なんて、ない。


私だけじゃない。


「……やめないで」


小さく言う。


震えているのは、覚悟のせい。


その瞬間。


腕の力が、ほんの少しだけ強くなる。


抱きしめられる。


壊さない力で。


守るみたいに。


でも、逃がさない。


「……っ」


呼吸が絡む。


息が、うまくできない。


「苦しいか」


すぐに聞いてくれる。


やっぱり優しい。


でも、止まらない。


「……すこし」


正直に言う。


「でも、いやじゃないです」


それを言った瞬間、


悠さんの目が、揺れた。


ああ。


この人、やっぱり。


優しいだけじゃない。


男の人だ。


欲しいって、思ってくれてる。


選んでくれてる。


私を。


「……ゆうさん、すき」


途切れ途切れ。


情けない声。


でも、嘘じゃない。


深く、抱きしめられる。


胸に押しつけられて、


鼓動が聞こえる。


早い。


私と同じ。


余裕ないの、私だけじゃない。


「俺も」


低くて、かすれた声。


その声が、背筋を震わせる。


触れられるたびに、


優しいのに、強い。


守られてるのに、奪われてるみたい。


混ざる。


体温と、呼吸と、覚悟。


「……いっぱいいっぱい、です」


正直に言う。


すると、


「俺もだよ」


小さく笑う声。


その一言で、力が抜ける。


ああ。


この人となら、大丈夫。


優しいだけじゃない。


ちゃんと欲しがってくれて、


ちゃんと確認してくれて、


ちゃんと、私を選んでる。


「……ちゃんと、俺のだから」


囁かれて、


胸がぎゅっとなる。


“俺の”。


それは、縛る言葉じゃない。


選ばれた言葉。


私は、小さく頷く。


怖さは、もうない。


あるのは、熱と。


信じたい気持ち。


優しい悠さん。


でも、今日知った。


悠さんは、男の人なんだ。


そしてその人が、


私を欲しいって言ってくれる。


それが、こんなに。


嬉しいなんて。




2人が言う「俺の」は

自分のもののように扱う、遠慮しない


初めて悠が遠慮せず、欲をぶつけた日。

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