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面接は、思っていたよりもあっけなかった。
緊張して、言葉が詰まりそうになって、
でも準備してきたことは、ちゃんと話せた。
手応えがあるかと聞かれたら、分からない。
でも、やれることはやった。
それだけは言える。
「ん、買ってきた」
インターホンの音のあと
悠さんが袋を提げて立っていた。
「え、そんなに……」
「今日は何も考えんなって言っただろ」
テーブルに並べられるお惣菜。
からあげ、サラダ、ちょっといいお寿司。
そして。
「これなら飲めんだろ」
差し出されたのはアルコール分が少ない甘い酎ハイ。
「覚えてたんですか」
「ん」
自分の分のビールを開けながら言う。
その“当たり前”が、ずるい。
乾杯、と小さくグラスを合わせる。
一口飲むと、少しだけ体があたたまる。
張り詰めていたものが、ゆるむ。
「面接、思ってたより普通でした」
「そうか」
「不安はあります」
ふと笑ってしまう。
「でも、悠さんがいるから、大丈夫です」
口に出してから、少し恥ずかしくなる。
酔っているのかもしれない。
悠さんが、ぴたりと止まる。
視線が、ゆっくりこちらに向く。
「……お前さ」
低い声。
胸がどきりと跳ねる。
「そんな顔でそれ言うな」
「え?」
そんな顔って、どんな。
分からなくて首をかしげると、ため息が落ちる。
「俺がどんだけ我慢してると思ってんだよ」
「……我慢?」
「面接前だから、遠慮してたんだよ」
そういえば。
最近は、触れる手も、少しだけ控えめだった。
「今日は頑張ったんだろ」
ふわりと抱きしめられる。
「お疲れ様」
それだけで、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「……ありがとうございます」
小さく返す。
抱きしめられたまま、ゆっくりと息を吐く。
未来はまだ分からない。
結果も、まだ来ない。
でも。
この人がいる。
それだけで、ちゃんと立っていられる。
腕の力が、少しだけ強くなる。
「ほんと、ずるい」
ぼそっと聞こえる。
「何がですか」
「自覚ないとこ」
顔を上げると、視線が絡む。
一瞬、空気が変わる。
そのまま、近づきそうになって。
ぴたりと止まる。
「……今日は、手出さねえ」
自分に言い聞かせるみたいに。
「え」
「お疲れ様の日だって言ったろ」
そう言って、頭をぽん、と軽く叩く。
その優しさが、余計に甘い。
「……ありがとうございます」
もう一度言うと、
「そればっかだな」
と笑われた。
でも、その笑い方が、やけにやわらかくて。
ああ。
やっぱり、私は。
この人の隣に、いたい。




