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カーテンの隙間から、昼の光。
真っ白な天井がやけに明るい。
呼吸がまだ少しだけ荒い。
「……ひる、ですよね」
朱里の声が、布団の中からする。
悠は腕を額に乗せたまま、天井を見ている。
「昼だな」
静かに答える。
隣で、もぞ、と動く気配。
シーツをぎゅっと掴む音。
「……まさか」
「何が」
「真昼間から、こんな」
言葉が続かない。
顔は見えないけど、赤いのは分かる。
悠はゆっくり横を向く。
髪が少し乱れている。
頬が熱を帯びている。
目が合わない。
「誘ったの、どっちだよ」
「っ……!」
布団をさらに被る。
耳まで隠そうとする。
「くっつきたいって言っただけです」
「それが引き金だろ」
淡々と言う。
でも声は柔らかい。
朱里は布団の中で小さく呻く。
「昼に、することじゃないです……」
「誰が決めた」
「なんか、だめな人みたいです」
小さく笑う。
そのまま布団を少し引き下ろす。
「顔見せろ」
「やです」
「見せろ」
抵抗は弱い。
指先で頬に触れる。
まだ熱い。
「後悔してる?」
問いは真面目。
朱里はすぐ首を振る。
「してません」
小さく。
でもはっきり。
「……ただ」
「ん」
「昼間だと、全部見えるじゃないですか……」
ああ、そういう。
悠は少しだけ視線を落とす。
そして。
「綺麗だった」
さらっと言う。
「っ……!」
真っ赤。
「言わなくていいです!」
「なんで」
「恥ずかしいです!」
布団に潜る。
腕を伸ばして、布団ごと抱き寄せる。
「甘やかすって言っただろ」
「さっき交代って」
「もう一周」
朱里の動きが止まる。
布団の中から、そっと顔が出る。
「……悠さん」
「ん」
「優しいです」
「今さら?」
「ちがいます」
目が、少しだけ潤んでいる。
「ちゃんと、大事にしてくれてるの、分かります」
胸の奥がじんわりする。
額に軽く触れる。
キスじゃない。
確認みたいな距離。
「寝るか」
「え」
「昼寝」
腕を枕代わりに差し出す。
朱里は一瞬迷ってから、そこに頭を置く。
ぴたり、と体温が重なる。
さっきより穏やか。
呼吸がゆっくりになる。
「……幸せです」
眠たそうな声。
「俺も」
午後の光が、少しずつ柔らぐ。
真昼間。
誰にも見られない。
二人だけの時間。
朱里の指が、無意識に伸びる。
離さない。
悠はその手に、自分の指を絡める。
守るとか、奪うとかじゃない。
ただ、ここにいる。




