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朱里の身体が、わずかに震えているのがわかる。
寒さじゃない。
「……怖い?」
耳元で聞く。
朱里は小さく首を振る。
でも、指先はきゅっと俺の服を掴んでいる。
「大丈夫、です」
その声も、少し揺れている。
俺はゆっくり背中を撫でる。
落ち着かせるみたいに。
でも本当は、自分を落ち着かせるためだ。
キスをする。
今までより深い。
確かめるんじゃない。
進むためのキス。
朱里の呼吸が乱れる。
シーツに背中が触れる。
「……嫌になったら、言え」
「言いません」
その強さに、胸が軋む。
「無理すんなよ」
「してません」
言葉とは裏腹に、
睫毛が震えている。
かわいい。
やばい。
キスが少しずつ熱を帯びる。
指が頬から首へ、
ゆっくり降りる。
そのたびに、
「大丈夫か」
「……はい」
小さく返る。
触れるたび、
止まるたび、
確認する。
朱里が震える。
「……悠さん」
名前を呼ばれる。
それだけで、理性が削れる。
「なに」
「ちゃんと、見ててください」
目を逸らさないでほしい、
逃げるなと
俺は息を呑む。
逃げたいわけじゃない。
でも。
大事すぎる。
朱里の肩に顔を埋める。
「……やばい」
「え?」
「俺、ほんと止まらなくなる」
指先が、温度を確かめる。
呼吸が重なる。
距離が、ゼロになる。
朱里の手が、
俺の背中に回る。
ぎゅっと。
逃げない。
預けてる。
ここまで来ると、
もう後戻りはできない。
繋がる直前。
ほんの、あと一歩。
朱里の瞳が揺れる。
不安じゃない。
覚悟の揺れ。
その顔を見た瞬間、
急に、怖くなる。
俺の中の何かが、強く警鐘を鳴らす。
自分で自分を止める。
朱里が驚いた顔をする。
「え……?」
俺は深く息を吐く。
額を押しつける。
「やっぱり、やめよう」
「え……」
朱里の手が離れかける。
俺はすぐに掴み直す。
「違う」
「怖くなったわけじゃない」
本音を探す。
「俺が、焦ってる」
正直に言う。
「お前が揺れたから、俺も揺れて」
喉が詰まる。
「今じゃなくてもいい」
はっきり言う。
「不安で進むのは、違う」
朱里の目が潤む。
「でも、私——」
「わかってる」
「ちゃんと選んでくれたの、わかってる」
指で頬をなぞる。
「だからこそ」
ゆっくり離れる。
距離を戻す。
「ちゃんと、余裕あるときにしたい」
少しだけ苦い。
「今の俺、余裕ない」
朱里はしばらく黙ってから、
小さく笑う。
「……ずるいのは、悠さんです」
「知ってる」
抱きしめ直す。
今度は、静かに。
「春が来ても、離れない」
耳元で言う。
「それだけは、約束する」




