↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/157

20




冷房の効いた図書館は、外の暑さを忘れさせる。


夏休み前で利用者は少なめ。


カウンター横で、篠原が誰かと話している。


ああ、あの同級生。


ラフな格好で、距離が近い。


「今度の飲み会来るだろ?」


軽い調子。


篠原は少し困った顔をしている。


「飲みとかはちょっと苦手だし…」


声はやわらかいけど、はっきり断ってはいない。


「みんな来るし朱里も来いよ、な?」


呼び捨て。


距離が、近い。


篠原がうーん、と曖昧に笑う。


断りきれない顔。


ああ、そういうの苦手なんだろうな。


気づいた瞬間、足が動いていた。


「篠原、今ちょっといい?」


二人の間に立つように、自然に。


声は落ち着いている。


篠原だけを見る。


「この本のことなんだけど」


手に持っていた資料を軽く持ち上げる。


口実なんてなんでもいい。


篠原が一瞬驚いた顔をする。


それから、すぐに頷く。


「あ、はい。ごめんね、また今度」


「おー、了解」


と肩をすくめて去っていく。


静かになる。


篠原がこちらを見る。


さっきより少しだけ近い。


「ありがとうございます」


小さな声。


「別に」


本を開くふりをする。


「さっきの、大丈夫か?」


自分でも驚くくらい自然に出た。


篠原が瞬きをする。


「え?」


「飲み会」


目を逸らさない。


責めるでもなく、探るでもなく。


ただ確認。


篠原は少しだけ考えてから、笑う。


「苦手なんです。ああいうの」


「断れよ」


つい言う。


少し強めに。


言ってから、ほんの少しだけ後悔する。


篠原は怒らない。


「はい」


素直に頷く。


「今度から、ちゃんと」


その言い方が妙にまっすぐで、


胸の奥が静かに熱を持つ。


「……無理すんな」


篠原が一瞬、目を見開く。


それから、小さく笑う。


「はい」


その「はい」が、いつもより柔らかい。


自分はただ、割って入っただけだ。


大したことじゃない。


でも。


さっきの困った顔が消えている。


それだけで充分だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。