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「悠さんが、限界…?」


どうして。


体調も


通院も


身体に機械を入れるのも


全部私なのに。


どうして悠さんが限界なの。


「……俺は朱里を守ってるつもりだったんだ」


「守られてますよ、ずっと」


「朱里」


私の名前を何度も呼ぶ。


まるで、存在を固定してるみたいだ。


「今日、朱里は泣いてないこと気づいてるか」


泣いてない…


確かに、泣いてない。


あんなに嬉しくて


あんなに楽しみだったのに。


だめだったって理解したのに。


悲しくなかった…?


違う。


ちゃんと悲しかったはず。


……よく、わからない。


「何年も、朱里が望むように進めてきた

でもそれじゃだめだったんだ」


「だめってなにが…」


「朱里を守るには

ちゃんと歩幅を合わせなきゃいけなかった」


歩幅を、合わせる。


「ちゃんと隣で手を握って

つまずいた時は、転ばないように支えないといけなかった」


「……隣に、いなかったんですか」


腕の力がまた強くなる。


息が詰まる。


「…俺は、」


悠さんは大きく息を吸う。


「俺は、後ろで見守ってただけだ」


なんとなく、


わかった気がする。


私ばかりがつらいと思うのは


悠さんが隣にいなかったからなのかもしれない。


でもそれは


私が先に歩きすぎたせいだ。


悠さんが悪いわけじゃない。


「……私が悪いです」


「…誰が悪いとかじゃないんだよ」


優しい、諭すような声。


「朱里を守ることが俺の存在価値なんだ」


「そんなこと…っ」


何も言わせたくないみたいに


呼吸ができないくらい腕の力が強くなる。


「言ったろ、朱里のためじゃない」


「……朱里を守れない“自分”が嫌なんだ」


守れない自分が嫌。


私のためじゃない?


私が傷つくから、じゃないのか。


じゃあ何の話をしているんだろう。


悠さんの呼吸が首元で震えている。




ああ、そういうことか。


でも


そんなのエゴじゃないか。


私を守れない自分が嫌なんて、


そんなの、


私には関係ない。


私はまだやれる。


まだ一回目だ。


ここまで来たのに。


時間も、


お金も、


身体も、


全部使ってきた。


ここでやめる理由なんて、


どこにもない。


ない、はずなのに。


首元に触れている悠さんの呼吸が浅い。


腕の力も、


さっきからずっと強いままだ。


まるで、


離したら何かが壊れるみたいに。


……この人、


本当に限界なんだ。


そう思った瞬間、


胸の奥がきゅっと締まる。


そんな顔、


初めて見る。


こんな声、


聞いたことない。


こんなふうに


縋られたことなんて、


一度もない。


ずるい。


こんなの、


ずるいじゃないか。


そんなこと言われたら


私はもう


前に進めない。


守られない選択肢なんて


選べない。


……守られるしかないじゃないか。




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