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目が覚めると部屋はうっすら明るい。
カーテンの向こうから夏の光が滲んでいる。
寝返りを打とうとしたとき、隣で布団がわずかに動く。
悠さんも起きていたらしい。
「……早いですね」
声をかけると、少し間があって返事が返る。
「朱里も」
短いやり取り。
それだけで会話は止まった。
窓の外で遠くを車が走る音がする。
鳥の声もいくつか重なって聞こえている。
夏の朝は、思っているより早く始まる。
ふと視線が合う。
悠さんは何も言わない。
ほんの一瞬だけ、そのままになる。
カーテンの向こうの光が
少しずつ部屋に広がっていく。
先に視線を外した。
枕元の時計を見る。
アラームが鳴るまで、まだ少し時間がある。
「朝ごはん、何がいいですか?」
そう聞くと、悠さんは少しだけ間を空けて答えた。
「なんでもいい」
思わず小さく笑う。
「それが一番困るんですよ」
シーツが少し肌に張りつく。
布団を抜け出し、足を床に下ろした。




