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現代異能バトル漫画のヒロインにTS転生したけど人生めちゃくちゃです  作者: 小野千春


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第3話

 とりあえず家に帰って掃除道具をもってきた。まずはひたすらゴミ集めだ。カップ麺や灰皿のタバコ、缶ビールなどをゴミ袋に入れて床を掃く。合皮のソファを見てみると、背もたれと座面の隙間にゴミとかが挟まっていて気持ち悪い。なんか虫とか湧いてそうだ。おっさんの皮脂とかも染み込んでそう。


 ヤニかなにかで黄ばんだ冷蔵庫をあけてみる。缶コーヒーが数本入っている以外は中はほとんど空だ。なにか黒い汚れというかカスみたいなのが落ちてて見てて気分が悪くなってくる。便所で落とした缶コーヒーよりもこの冷蔵庫の飲み物の方が飲みたくないって気持ちにさせられる。


 色々買い替えよう。冷蔵庫とソファとテレビと机とパイプ椅子と、何なら流し台もリフォームしたいくらいだがそれはさすがに無理だろう。トイレの中を見てみるとめちゃくそきちゃない。最悪だ。想像はしてたけど。シャワールームもあるので覗いてみると、そこは意外と綺麗だった。家で風呂につかりたかったのだろうか。


 超強力なトイレ用洗剤を検索してとりあえずカートに放り込んでおく。あとは芳香剤とか…、新しいケトルも欲しいな。


 なんかふとワクワクしている自分に気づく。ここ1年くらいはしんどいことばっかりだったから、やっぱりいい気分転換になってるのかも。


 ざっと片付け終わったので家にもどっておばあちゃんに封筒と切手をもらう。書類を中にいれて糊付けしてからまた外出する。今日中に全部すませちゃおう。


 駅までの近道に田んぼのあぜ道を突っ切る。稲が青々と茂っていて見ていて爽やかな気分になってくる。かがみ込んでなにやら作業しているおじさんがこちらを見たので大きく手を振ったところで自分がハイになりすぎていると気付いた。


 完全に躁状態になっている。やばいやばい。テンションが上がりすぎた。なんで知らないおじさんに手を振ってるんだ。ふぅ~と息を吐いて精神を整える。落ち着け落ち着け、なんでもない、と頭の中で言い聞かせる。


 しばらく頭を空っぽにして歩いていると無人駅にたどり着いた。ザ・ど田舎の駅といった趣きで、改札すらない。構内の赤いポストに封筒を放り込んで、ベンチに腰掛ける。日陰で気持ちがいい。これからやることを頭に思い浮かべる。


 郵便は出した。掃除もある程度やった。あとはネットで手続きするか。


 スマホを取り出して協会のHPを開く。10分ほどポチってから手続きを終わらせた。やることやると、なんかまたダルくなってきた。間引きは週末くらいからでいいかな。


 のそりと起き上がる。家帰ろっと。なにかすることもないけど。


 快速電車が通過していく。自然と強化された視界なら高速で走る電車の中の人々の顔もはっきり見える。なんとなく見ていた電車の中に、制服を着た女の子を見つけて更にテンションが下がるのを感じた。




「おかえり~」


 と言って玄関の扉を開ける。


 居間に入るとおばあちゃんがテレビを見ていた。


「おかえりじゃなくて、ただいま」


 こっちも見ずに指摘された。あぁ、そうだった。なんか、混同しちゃうんだよね、おかえりとただいまって。何も考えずに喋ってるとたまに間違う。


「そうだっけ」といいながら隣に座ってテレビを見る。昔の、なんか謎の時代劇をやっていた。丁度、いいところだったんだろう。画面の中のお侍さんが敵っぽい人に殺陣をしている。刀で人を斬り殺しながらお侍さんがなにやら喋っている。


 ひとつ、人の世の生き血をすすり

 ふたつ、不埒な悪行三昧

 みっつ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎


 そのセリフを聞いて思わず笑ってしまった。私には、このお侍さんが助けに来てくれなかったなって。

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