第12話
完全に朝起きれなかったので、おばあちゃんと昼食を食べている。
「今日は何するんね」
「ん~またごろごろするのもあれだし、間引きでも行こうかな~」
ほうれん草のおひたしを食べながらそう返す。すりゴマがかかっていてめちゃ美味い。
「なら、気をつけりぃ」
と返してくれた。
ゲートに飛び込む。一瞬の光の後、即座に目を開けて構えるが、特に何もない。一応だ。氷華も気をつけろって言ってたし。
そのままてくてくと進む。一応魔力温存のために、六角棒でゴブリンやスライム、コボルト達を叩き潰しながらひたすらてくてく進む。
なんかあれだな。暇だ。探索者登録の時に購入しておいた専用のスマホで、魔力がどうのこうのでネットには繋がる。が、動画などは見れない。ここのダンジョンだと、普通のサイトにつなげるにもいつもより時間がかかる。読み込みが遅いのがストレスだが、六角棒片手にweb小説を読みながら歩くことにした。
一応、曲がり角ではスマホはしまう。六角棒を構えながら覗き込んだが何もいない。そのままスマホを取り出した。
これはこれで面倒くさい。あれだ。骨伝導イヤホンみたいな。それがあれば外の音も聞こえるし、今度ラジオかなんかをダウンロードしてきてそれを聞きながら探索しよう。適当に芸人のオールナイトジャッポンでも何本か入れとこ。
小説の中では、主人公が自分を追放したパーティーから、戻ってくれと懇願されている。「もう遅い」と、彼がそう言って宿をでたところで、私はスマホをしまった。あとは主人公くんがハーレムといちゃいちゃするだけだろうからもういいや。
ざまぁでドーパミンを補充した私は 前回引き返してきた所までやって来た。
さすがに初見のところはスマホを触るのはやめとこう。
五層目への階段を下りる。コボルトが増えた。しかも、前から走ってきたやつに気を取られていると、横の通路からもう一体出てきたりする。六角棒で片方を殴り飛ばし、スニーカーでもう片方を蹴り飛ばす。
流石に全部殴って済ませるのはダルいな。
異能も使っちゃおう。手を向けずに撃つ練習もする。たまに外れるが、相手は標的と違ってこっちに来てくれるので、近づいてきたら殴ればいい。非常に助かる。
七層目で一旦休憩する。転移できるのは十層ごとだが、魔物の入ってこない部屋は途中にもある。
椅子とテーブルを出して水を飲む。スマホを見ながらついでにエナジーバーとチョコをつまむ。なんかもうちょっと食べたいけどカップ麺は到達記念として十層まで我慢しよう。魔力もまだまだ余裕がある。椅子を収納して先へ進むことにした。
八層目からは盾を持ったゴブリンが出てきた。結構だるいなこれ。盾に隠れて迫ってくる。足を撃つと倒れるのでそのまま頭を殴り潰す。
九層目では、その後ろから別のゴブリンが石を投げてきた。連携までし始めたか。盾を回り込むように広めに炎を放つと彼らは盾ごと燃え始めて消滅する。結局これが一番楽だな。
十層目をしばらく歩くと、通路の先に大きな扉が見えた。両開きで、いかにも重そうな石造りだ。
ここか。このダンジョンを調べていて、存在はしっていたけど生でみるのは初めてだ。階層守護者。いわゆるボス。こいつを倒した先に転移の間がある。ここは割とオーソドックスな底無しのダンジョンの造りだ。
扉の前で六角棒を握り直す。身体強化を万全にして、押し開けた。
広い部屋の奥で、何かが立ち上がる。
でっかいゴブリンだ。ゴブリンジェネラルって個体。私より頭二つ分くらい高い。手には、今までのやつらとは比較にならない太さの棍棒を持っている。あれで殴られたら人生終わるな、と確信できるサイズ。
そいつが棍棒を肩に担ぎ、こちらへ走ってきた。でかいくせに速い。胸に雷を放つと少しよろめいたが、そのまま棍棒を振り下ろしてきた。
「おっと」
横へ跳ぶ。床が砕けて、破片が足に当たった。ほんの少し痛いけど、あれを頭に喰らうよりはマシだ。避けながら振り上げていた六角棒を、棍棒を握る右手首へ全力で振り下ろす。バキっという音と鈍い手応え。ゴブリンジェネラルの右手首が粉砕された。
ギャオギャオと、ゴブリン語でなにか喚いている。あ、左手で棍棒を拾ってる。両利きなんだ。
手をピストルにして、魔力を練り上げる。よーく眼球に狙いを定めて強力な紫電を放った。
ガァァと叫んで仰向けに倒れる。折れた右手で顔面を庇って悶えているので六角棒をその手の上から全力で何度も振り下ろす。これが人相手だったらとんだサイコパスだな、なんてふと思う。
なかなか消滅しないので大きく開いた口から炎を叩き込む。絶叫しながら無茶苦茶に棍棒を振り回しているので、一旦下がってしばらく見ていると動きが鈍ってきた。
こそっと頭の側に回り込んで、仰向けの頭頂部を野球かゴルフでもやるように六角棒でフルスイングをかましてやる。ぐしゃっという音と共に、今度こそゴブリンジェネラルは動かなくなった。
「ふぅ~」
つか、タフすぎない?いや、こんなもんか?右手で庇ってたから衝撃が伝わらなかったのか?今までミニゴブ達は一撃でぶっ殺せてたのに、こいつはどの程度で殺せるか分からなかった。
あまり気持ちの良い感覚ではなかったな、と思いながら腕輪に六角棒をしまう。手をプラプラと振りながら消えゆくゴブリンを見守る。淡い光となって溶けていく彼の身体から、魔力が流れ込んでくる。体感で分かる、今までよりだいぶ多い。完全に消滅しきった地面には魔石と、一本の剣が残されていた。
剣?と、少し疑問に思う。棍棒とか、そういうのじゃなくて?ゴブジェネのレアドロ?
レアドロップというのは普通に存在するが、剣は珍しいんじゃないだろうか。
無骨な西洋剣。幅広で重量感があるが、片手で振れないこともない大きさだ。持ち手には使い込まれたような革が巻いてある。柄頭には何かの紋章。なかなかにカッコいい。これも使ってみようかな。
まさか呪われてるなんてことはあるまい。剣を拾い上げて、軽く振ってみる。袈裟斬り、返す刃で逆袈裟。そのまま横に薙ぐ。刀身の重さに腕を引かれるが、身体強化していれば問題ない。両手で握り直して頭上から振り下ろし、切っ先を床の手前で止めた。
おぉぉ、なんかいい感じ。テンション上がってきた。何も斬ってないから切れ味は分からないけど、見た感じよく切れそう。右手でくるくると剣を弄んでいると、それは起きた。
『やった!やっと繋がった!』
「……ん?」
ビクっとして周囲を見回す。誰もいない。
『ねえ、おねえちゃん!聞こえる?』
耳からじゃない。頭の中に直接、子供みたいな声が響いている。性別不明のロリかショタみたいな幼いボイス。
手元の剣を見る。
「……お前?」
『うん!拾ってくれてありがとう!』
喋る剣。インテリジェンスウェポンってやつか。
なるほど?いや、なるほどではないが。




