第11話
学校が終わったので帰路につく。
色々と買い物をしたかったので、氷華と蓮夜の2人とは途中で別れた。
まずは探索者協会に向かうことにした。街中にある、県でも一番大きな協会本部の中に入ると、一斉に視線が向けられた。
視線を無視してカウンターに向かう。
「買い取りお願いします」といって魔石がじゃらじゃらつまっているビニール袋と登録証を受付のお姉さんに差し出した。トレーに移した魔石をなんかの機械に入れている。しばらくして「一万二千四百円になります」と返ってきたので振込で、と返しておいた。
次は協会の装備品売り場に向かう。探索者登録をしている人間しか買い物できないところだ。しばらくウィンドウショッピングをしていると、お目当てのものが見つかった。腕輪だ。これがいい。
いわゆるアイテムボックスである。迷宮からのドロップ品ですんごい高い。けど私なら全然買えるので、店員さんを呼んで鍵を開けてもらう。着けてみますか?と言われたので、腕に通してみる。銀色で少し幅広のシンプルな腕輪でなんの刻印もない。魔力をながすと、まるで生きているかのように隙間なくピタリと肌に吸い付いた。
そのまま腕を振ってみる。うん、非常にいい感じだ。ストレスを感じない。容量は大体一立方メートルでお値段はなんと二百五十万以上する。このまま私が走って逃げたらどうなるのかな、なんて不謹慎なことを想像する。まぁ多分私が有名人だったから信用してくれてるんだろう。そのままそれを着けた状態でお会計に向かった。
色々と、アイテムボックスを携帯する上での注意事項を聞かされた後、カードによる支払いを終えて店を出た。
ロビーに向かっていると、黒いローブを被った集団がぞろぞろ入ってきていた。
ちなみにファンタジーな格好は、探索者協会周りでは普通である。なんなら中世鎧?みたいなのを着てる奴もいる。そういうのが迷宮でドロップするし、特別な効果をもってたりするから。
で、この黒ローブ集団。有名な集団で名前は黎明会という。ダンジョンを神聖視しており、ダンジョンの調査や探求、異界への到達などを目的としている教団である。
私はこいつらは確実に悪の組織だと思っているが、世間的には変わった人達としか思われていない。ちょっと危機感足りんのんとちゃう?と思うが、まぁ言ってもしょうがないことだ。ちなみにこの教団に属してる奴は高校にもいる。
なんとなく見つからないようにコソコソと後ろを通って、協会の外に出た。
駅前のショッピングモールに向かう。まずはアウトドア用品が売っている店だ。適当によさげな寝袋と自立式の小さなテント、あとは椅子と…、他になにがいるかな。適当に店内を歩き回る。厚めのマットだ。これは欲しい、ってかないと背中いたくなりそう。あとは小さめのテーブル。クッカーと小型のコンロも欲しくなってきた。お湯沸かしてカップ麺食いたい。楽しくなってきた。
適当に、真空断熱になってるマグカップとかも追加してお会計に向かう。大荷物に、これ送りますか?と言われたので腕輪を見せる。
「これ、アイテムボックスなんでしまって帰ります」
どやぁ、とならないようになるべく平然を装う。普通に「あぁ、なるほどですね」と返された。
魔力を通しながら一つ一つを手に取ると、魔物が死んだ時のように光となって腕輪に吸い込まれる。そのまま全てを仕舞って店を出た。
「あの、すみません。ライカさんですよね!写真いいですか?」
ぼけっと歩いているとJKギャル2人組が話しかけてきた。
「いいよ~」と言うと、嬉しそうに「ありがとうございます!」と言って通りがかりのおじさんに撮影を頼んでいる。そのまま両側から挟まれてパシャパシャと何枚か撮られた。
「ありがとうございます!あの、私昔からずっとファンで、その、子役のときからずっと見てました」
「マジで!嬉しい~!」とこちらもギャル対応してあげる。
嬉しい事を言ってくれる。こういう事を言われると、なんとなく、無駄じゃなかったと思える。
「会えて嬉しかったです!応援してます!」
ペコリと頭を下げて、ギャルたちは去っていった。こういう人達はたまにいる。事件に触れてこない人。こう言われると、SNSくらいは更新してもいいかなって思うこともある。思うだけだけど。まぁいいや、買い物を続けよう。
あとはスーパーかな。モールに入っているスーパーに寄ってカップ麺と水とエナジーバー、おやつにチョコやポテチもしこたま加えて会計を済ませる。
あ、着替えも欲しいかも、と急に思い立った。安くて有名な服屋にはいって、適当なでか目の白Tシャツとバスパン、下着を5日分くらい買って収納する。
こんなもんかな~とモール内をうろついていると、一枚のポスターが目に入った。探索者協会の、探索者募集!って書いてあるポスター。1人の有名な探索者が映っている。御影静香という探索者協会の会長だ。御年70歳のはずだが非常に若々しい。というか20歳くらいにしか見えない。普通に美女だ。
ダンジョンに潜りまくって、深層をうろつくような探索者になるとこうなる。こうなるまでにほとんどが死ぬけど。魔素に侵された体は不老と化し、食事も睡眠も摂ろうと思わなければ必要なくなる。メリットばかりではなく、デメリットもある。生殖不能になることと、一度に大きな魔力を吸収した時に、異形と化すことがある。あと、不老になっても大体がさらにダンジョンに潜り続けて帰ってこなくなるか、死ぬ。
異形化した敵を出したいからこんな設定になってるのかな、とか正直思ってる。
まぁ、私も流石にここまでは潜らないと思う。死にたいわけじゃないし。
電車に乗って、駅についた。家に帰る前にゲートハウスになんとなく寄る。中は多少は綺麗になっているが特に家具とかは変わってない。
ネットの通販サイトでソファとか机、椅子や冷蔵庫を適当に選び、カートにいれてゲートハウスの住所をいれて会計する。あとは廃品回収業者に回収してもらえばいいか。こんな田舎に来てもらうのは割高になるだろうけど、まぁいいや。
ダンジョンに入って転移の間でテントなどを組み立ててみる。なかなかいい感じでカッコいい。組み立てたテントにマットを敷いて、その上に寝袋を置いて、その状態でそのまま腕輪に収納した。物質そのものの体積しか換算されないので、これであとで組み立てる必要がなくなるはずだ。何度か出し入れして確かめる。
ゲートハウスを出ると、辺りはもう薄暗くなっていた。家具選びに意外と時間を掛けてしまった。扉に鍵をかけて、軽く捻って確認する。
家へ続く細い道を歩く。両側は田んぼだ。昼間は遠くまで見えるが、今は水面に残った空の色と、黒くなり始めた山くらいしか分からない。蛙があちこちで鳴いている。腕の銀色の輪を指でなぞってみる。今日買ったものが全部この中に入っている。改めてすごい。二百五十万以上しただけのことはある。存在を知ってからずっと欲しかった。
道の先にぽつんと街灯がついている。その下だけ明るくて、虫がいっぱい飛んでいるのでなるべく端を通る。蛾とかに顔面へ突っ込まれたら最悪だ。
家は所々にあるが、窓に明かりがついていないところも多い。庭の草が伸び放題になっている家もある。昼間なら何とも思わないけど、この時間だとちょっと不気味だ。
おばあちゃんの家が見えてきた。古い二階建てで、道路から玄関まで少し庭がある。端には植木鉢が並んでいて、何が植わっているのか知らないが、おばあちゃんが毎朝水をやっている。
台所の窓が明るい。近づくと、換気扇からなんかいい匂いがしてきた。
腹減ったな。玄関を開けて、靴を脱ぐ。
「ただいま~」
おかえりと間違えないようにちゃんと確かめた。
「ライカ。遅かったね」
「買い物してた。あと、ゲートハウスにちょっと寄ってきた」
「ご飯できてるよ。手、洗ってきな」
「は~い」
廊下に鞄を置いて洗面所へ向かう。家に帰れば飯がある。非常にありがたいことだ。




