第1章 吟遊詩人で占い師 第6話 才能と独立
リーセの教育係をすることになってしまったけれど、どうするかな、、、。
シュンゴは考えた。
もともと前の世界でもシュンゴはマニュアル作成が得意だった。そうだ。彼女は文字が読めるし、経理の業務内容をマニュアルにしてこれを渡し、わからないところを聞いてもらうようにしよう。
「そうと決まればさっそく経理やってた人に聞いて業務をマニュアル化していくか、、、。」
「ジェイクさんって数字にも強かったんですね、、、。」
「なんだ?俺は数字に弱いただの酒飲みに見えたのか?」
「すみません、、、。人って見かけによらないものなんだなあ、と再認識しただけです。私もまだまだですね、、、。」
「お前って変なところ真面目だよなあ、、、。」
よく見ると眉の上の骨が少し出ている。これは計数部位に強い、、、。つまり計算が強い、と人相学的には判断できる。占いを過信するつもりはないが、こうして答え合わせの連続で精度を上げていくところが占いの楽しさであり、ある種の難しさでもある。
「それでジェイクさん。リーセは知っての通り、文字が読めます。マニュアルという作業をまとめた資料を作成してリーセに渡し、わからないことを都度聞く形を取りたいのですが、可能でしょうか?」
「いいぜ、それじゃあ。昼過ぎにまた従業員控え室に来るから、それまでにある程度聞くこととかまとめといてくれ。まあ、見てもらった方が早いと思うから、今日、シュンゴは早めに仕事を切り上げて経理の仕事をリーセと一緒に見てな。」
「わかりました。ありがとうございます。」
そうだったよな。リーセも手が空いてるしリーセも見た方が早く覚えられるか。
「シュンゴ、お前ってただの吟遊詩人じゃなかったんだな、、、。というかこっちの方が向いていないか?」
「まあ、前いた場所ではよくやっていたことなので。」
ジェイクは驚いた顔をしてマニュアルのざっくりした構成案と質問内容を読んでいた。
リーセも隣にいる。どうやらここに住む手続き等が整って時間ができてきたらしい。
「シュンゴ、マニュアルって何?」
「仕事でやる作業を小さい本にしたようなものだよ。」
「ふーん。たしかにあった方が効率がいい。こういう資料があった方がシミュレーションもしやすい。」
「そうだよね。結局、全工程やって仕事の流れを把握した方が無理矢理覚えるよりも応用が効くし。とは言っても仕事は回さないといけないから。多くの職場でこういう問題はたくさんあると思う。」
「本当は客として業務をよく観察してみたかったけど、私はそういうのなく、ここに就職が決まってしまった。困ってた。」
「そうだよな、、、。ところでリーセ。私が作ったこのマニュアルの構成と質問リストでいったんは大丈夫そうかな?」
「、、、図が必要かもしれない。実際の作業は帳簿をつけて項目別に仕分ける内容だけれど、どこにどの帳簿を保管するとか、どこにこの資料を納めるか、などについては図で場所を示してくれた方がわかりやすい。」
「、、、そうだったね。ありがとう、リーセ。そこもジェイクさんの仕事を見ながら追記することにするよ。ジェイクさん、一応マニュアル完成しましたら、内容が間違っていないか、確認していただくことはできますか?」
「おう!2人とも気合い十分って感じだな。まあ肩の力抜いて見ていってくれや。」
「はい。」
「ジェイク、ありがとう。」
数日後、無事マニュアルは完成し、リーセも少しずつ経理の仕事に慣れていった。
シュンゴは吟遊詩人として2、3曲、人気のある曲を演奏した後、残りの時間はずっと占い業に明け暮れた。
「さて、占いも少し客足が落ち着いてきたし、リーセのところにでも行くかな、、、。」
リーセは経理の仕事をしていたが、どことなく複雑な表情をして悩んでいるようだった。
「リーセ、どうしたんだい?」
「、、、シュンゴ、ちょっと気になることがあって、、。」
リーセは帳簿のある項目を指で差した。
「ここ。改善したらもっと利益率上がると思う。」
「、、、リーセ。言ってることはわかる。でもたぶん、そこはジェイクさんの経営方針的なところだと思う。たしかに酒の値段はここの相場としてはかなり低めに設定していて、それがこの店の利益率を下げているのかもしれない。でも、それと人の感情は別物なんだ。それはロジカルには捉えられないからね。」
「そう、、、。」
「でも着眼点はいいと思う。ただ、ジェイクさんに伝える時は少し今の話し方より丁寧に説明した方がいいかもしれない。こういう話題って結構難しいところがあるんだよ。言って試して失敗した後、責任を取るのはリーセじゃなくてジェイクさんだからね。」
「わかった。」
「どちらかというと経理の仕事で完結する範囲での業務改善、とかなら喜んで受け入れてもらえると思うよ。ジェイクさんなら。」
「そう、、、。ありがとう、シュンゴ。少し考えてみる。」
「うん、応援してるよ。」
数日後、リーセが考えてきたのは、マニュアルを字が読めない従業員でもわかるようにしたマンガ風のフローチャートのようなものだった。これなら経理の数字が読めなくても経理がやっている作業を店全体で共有できるだろう、、、。
「というかリーセって絵がすごく上手いね、、、。これってもともと習っていたの?」
「違う、ぜんぶ独学。トライアンドエラーして上手くなっただけ。」
「そ、そうか。」
「おい、シュンゴ。話がある。」
「なんですか?ジェイクさん。」
「お前、占いの店を出してみる気はないか?」
「えっ!」
そんなこと考えたこともなかった。シュンゴは驚きつつも、占いの店を出せる、ということに少しワクワクしている気持ちがある自分を感じていた、、、。




