第1章 吟遊詩人で占い師 第5話 就活と助手
アンジェのいる詰所に着いた。
「どうする?いろいろ聞かれたくない話もあるかもしれないし、私は途中で離席する形でいいかな?」
「、、、いや、問題ない。最後まで一緒にいてくれればいい。ありがとう。」
自警団の方に事情を伝え、アンジェのいるところに通された。
「お、久しぶりだな。シュンゴ!君が変わった学問を使って人の未来を当ててサポートしている話は聞いてるぞ。」
「お久しぶりです。アンジェさん。ありがとうございます。吟遊詩人のつもりが占い師になってしまってますが、おかげさまで楽しくやれていますよ。」
アンジェは青髪の少女に目をやった。
「シュンゴ、この子がリーセか?」
「はい。まだ短い期間ですが、接している私から見ると、頭の回転が早く、知識も豊富そうなので、何か事務系の仕事を紹介していただければ、と思うのですが。」
「ふむ、リーセ。君は何ができるんだい?」
「私は、、、。何もできない。ただちょっと知識が多いだけ。」
「お、おい。リーセ!それじゃあ、アンジェさんも仕事の紹介がしにくくなるぞ。何かの分野に詳しいとか、この分野で新しい結果を出した、とかあるだろう?」
リーセはうつむき、力なく答えた。
「私は、特に詳しい分野も新しい結果も出していない。全部独学。言っても伝わらなかったし、何をやっても上手くいかなかった。」
「、、、。」
アンジェは黙っていた。
さすがにちょっと慌て出したシュンゴもアンジェの様子を見て、落ち着いてきた。
(そうだよな。アンジェさんはリーセの話だとこの街の領主の娘と聞くし、これくらいの対応はできるはずだ。私が信頼していないだけか、、、。)
「、、、リーセ。」
「はい。」
「君の事情はわかった。まあ、私も何件か紹介してみよう。ただ、君のその受け答え方だと、、、。まあ、上手くいかないだろうね。シュンゴ、聞いていないかもしれないが、実はジェイクのところが最近儲かっているので、経理の仕事をやってくれる人材が必要らしい。全部ダメなら、君がリーセに経理の仕事を教えてやることはできるだろうか?」
「、、、!はい、わかりました。経理の初歩くらいは教えられると思います。ありがとうございます。アンジェさん。」
「ありがとう。アンジェ、、、。」
「おい、リーセ、、、。こういう場では相手にさんはつけるんだよ。あとは、ありがとうございます、な。」
「いいんだ。いいんだ。結局、どれだけ言葉を尽くそうにも、仕事に取り組む姿勢と結果でその人物の人格などすぐにわかる。君も真面目だよな、シュンゴ。」
「、、、アンジェさんの心が広くて助かりました。」
アンジェに礼を言い、自警団の詰所を後にした。
リーセとシュンゴはお互い無言のまま、帰路に就いた。
宿も無いので事情を察したジェイクのはからいで、仕事が決まるまでの間、リーセも店に泊まらせてもらうことになった。
「なあ、リーセ。」
「、、、何?」
「元気出せよ。お前は何も悪いことはしていないんだからな。悪いとするならば、お前の才能を理解して育ててこなかった、この世の理不尽さだ。そこに嘆く必要はない。大事なのは今、どうしたいのか、と。これからどうしていこう、と未来に想いを馳せることだからな。」
「、、、ありがとう。シュンゴ。」
リーセの就職先は決まらなかった。結果的にジェイクの店の経理見習いとして働くことになったリーセは落ち込んでいるような、でもどこか安心しているような表情をしていた。
「うーん、、、。まあいいのかな。これで。」




