第1章 吟遊詩人で占い師 第2話 働く
シュンゴは宿屋で一泊した後、アンジェが紹介した酒場へと向かった。
「どうやらここのようだ、、、。」
シュンゴは昔からいわゆる面接が苦手である。彼はその弱点を補うために人相学を学んだ。と言っても人柄がざっくりわかるだけだが。それでも何も知らないよりは良いだろう。何より失敗しても次に生かせる気がするからだ。
一呼吸置き、シュンゴは門を叩き、アンジェの紹介で仕事をしたい旨を伝えた。やはり面接となった。
酒場の店主であるジェイクは、シュンゴに席につくように促し、こう言った。
「俺は堅苦しいのは嫌いだ。まあざっくばらんに話そうや。」
「ありがとうございます。それなら私も正直に話して行こうと思います。」
(だろうな。人相学的に観ると彼の顔は縦長で顔の中心のパーツが大きな面積を占めている。顔は浅黒く雰囲気としては現場でひたむきに取り組み、共感と思いやりを重視する感情型だろう。意外と手を見ていると土の手(ずんぐりしていて手のひらは四角く肉付きが良い。)だ。ガーデニングの話でも振ってみるか。)
「ジェイクさんはどういうお店を目指しているのでしょうか?入り口で野菜を育てているようでしたが、これもお客様のために新鮮な食材でもてなしたい、という想いからでしょうか?」
「よくわかってるじゃねえか、シュンゴ。俺はな、飯が上手くねえといい酒が飲めねえのよ。だからなるべく鮮度を保つために自家製にこだわってるのよ。肉もそうだな。たまにお前のところは納期が短すぎるって文句言われるがな!」
ガッハッハと笑い上機嫌で飲んでいるジェイクを見て、シュンゴはこう続けた。
「ジェイクさんの店の構想はよくわかりました。それなら私はお客様のリクエストに応える形でオリジナルソングを弾いた方が店も盛り上がりそうですね。」
ジェイクは眉を上げた。
「そんなこともできるのか?それなら俺の店に合うテーマソングでも弾いてもらおうかね。」
「ええ、できます。ちょっと紙とペンをいただけますか?」
「おうよ。詞を書くんだな?」
シュンゴは店のイメージを詞に起こそうとした。
(何か忘れてるな)
「ジェイクさん、すみません。店のお名前と由来について教えていただけますか?緊張して店の名前頭に入ってなくて、、、。」
「ああ、そうか。そういえば言い忘れていたな。ここの店名は金曜日、だ。まあ仕事終わりに飲みたくなるような店を目指してるって感じだ。入り浸ってるやつらもいるがな。」
「ありがとうございます。詞に起こしていきます。」
10分後、シュンゴは簡単に作詞を終え、音の確認とコードづけをしていた。
「うん。これなら大丈夫そうだ。ジェイクさんラフですが出来ましたよ。聴いていただけますか?」
「おうよ。どんな感じなんだろうな。アンジェは結構癖の強い曲だ、って言ってたが。」
「まあ、、、。とりあえずお聴きください。飽きはこないと思いますよ。」
シュンゴはギターを手にし、こう弾き語っていった。
仕事終わりに飲む酒だけは、きっと最高の贅沢さ!
金では買えない、そんな酒場さ、今日も明日も金曜日
酒と肴とくだらない話もきっと最高な金曜日!
、、、。
「どうでしょうか?」
シュンゴは少し不安だった。
「あの、必要なら修正を、、、。」
「いや、それはいらない。お前、なかなか自分の味、持ってるじゃねえか!たしかにまだまだ足りないところもあるだろうが、これから毎日やってりゃそのうち板にもついてくるだろ。」
「、、、ありがとうございます。」
「明日の夜からうちで仕事だ。宿は上にある。とりあえず今日は疲れただろうから、荷物運んでさっさと寝ちまいな。」
「ありがとうございます。一生懸命働いていきます!」
「よろしくな!」
「はい!」
ジェイクの言った通り、シュンゴは荷物を運んで振る舞われた食事を食べた後、倒れるように眠りについてしまった。
「疲れた、、、。やっぱり私はメンタル弱いよな、、、。」
少し昔を思い出す。もっと私がメンタル強かったらこんなことにもならなかったのだろうか?
気がついたら夜だった。
ちょうど仕事する時間の少し前だ。
「よし、ちょっと早く店に降りて職場のメンバーに挨拶へ行こう。」
身支度をし、少し早めに酒場へ向かった。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう。シュンゴ、この店は俺含め5名で回してるんだ。ホール、ウェイター、に挨拶しておけ!」
「はい!」
夜勤で慣れてはいたが、挨拶は「おはようございます」でよかったようだ。
ホールは男性2名、ウェイターは女性2名のだった。どちらも飾らないジェイクの性格に合うような、変に癖の強いようなタイプでは無いことにシュンゴは安心した。
酒場からジェイクの声が聞こえる。
「シュンゴ!紹介するからこっちへギター持って来い!」
「わかりました!」
酒場は一瞬シン、とした。
「えー、皆さんに一つ報告がある。今日から吟遊詩人を1人雇った。きっとこの店を盛り上げてくれるだろう!シュンゴ・グラナイトだ。」
「よろしくお願いします。シュンゴです。即興で歌うのでリクエストあれば是非お願い致します!」
ジェイクはシュンゴの背中をバンッと叩いてカラカラ笑った。
「ま、こんなクソ真面目っぽいやつだが、曲は意外と砕けたやつなんだ。よろしく頼むわ!ほらシュンゴ!さっそく何か弾いてやれ!」
「わかりました。それでは、この曲を、、、。」
シュンゴは少し笑んでギターを弾き始めた。




