第2章 占い師としての日々 第10話「試験と信頼3」
「、、、これであらかた絞り込めたな。」
透視度と魚による試験で飲み水等にすべき水源について2、3箇所まで絞り込むことができた。
「あとはもう一度バイオアッセイを実施して、、、。」
「、、、先生」
「なんだい?」
「本当に川魚と透視度だけで飲み水になるの?」
「、、、そうだね。人間と魚じゃあ、いろいろ条件は異なる。あくまでも目安でしかない。最終的には飲んでみない限りわからないね。」
シュンゴは候補として最終的に残した水を火にかけて湯を沸かし始めた。
「、、、これは何をしているの?」
「煮沸消毒と言って、水を加熱することによって水中の有害な微生物を殺しているんだ。これで腹を下しにくくなる。」
「、、、さて、準備はできたな。」
シュンゴは立ち上がり、例の水問題で悩む住民たちのところへ向かうことにした。
「、、、説明できそうかな、リーセ?」
「少し難しいかもしれないけど、やってみる。」
リーセは街の広間に集められた住民に説明を始めた。
熱心に聴く住民達。しかしシュンゴ達のやり方はこれまでのやり方と大きく異なっており、説明終了後に質問が殺到した。
「、、、たしかに候補の水源が安全であるとわかった。ただあっちの水源の方がもっと綺麗だったぞ。なぜこの水源にしたんだ?」
「、、、それは、候補の水源がきれいなだけでなく、生物にとっても安全な水である可能性が高いから。いろんな種類の魚を試したけど死ななかった。」
「でもよ、飲み水として使用するのは魚ではなくて人間だ。そこはどう確認すればいいんだ?」
「、、、それは。」
シュンゴはそこで声を上げ、ある瓶を掲げて説明を始めた。
「皆さん。ここに今回の水源の候補地の水があります。ただの水ではなく、腹を下すリスクを下げるために沸騰させています。沸騰させた後も菌が繁殖する恐れがあるので早めに飲むようにしてほしいのですが、それはさておき。」
「、、、この水をこれから私が試飲します。そして少なくとも飲んでもすぐには問題が起きない、と証明されれば皆さんでこの水源の水を飲み水や生活水として、利用してはいただけないでしょうか?」
広間にいる住民達は少し驚いた様子であったが、すぐに静かになりシュンゴを見つめた。
「、、、それでは試飲していきます。コップ一杯程度飲んでみます。」
シュンゴはごくごくと喉を鳴らし、その水を飲んでいった。
「いやあ、暑かったもんで水を飲むと生き返りますね。」
笑いながらそう言った。
「、、、先生、大丈夫?」
心なしか少し慌てて見えるリーセにシュンゴは笑いかけた。
「正直、半々かな。でも、あの場で緊張していたら住民の方々に信頼してもらえないからね。今のところ大丈夫そうだ。」
「、、、先生は無鉄砲過ぎる。私は怖くてできない。」
「技術者には責任が伴うものなんだよ。なあに、失敗しても少しお腹を下すだけさ。そのために水質の試験だってやっているんだからね。」
「、、、シュンゴさん。」
住民の方が技官とともにやってきた。
「お身体は大丈夫でしょうか?」
シュンゴはにっこり笑った。
「ええ。全く問題ないですよ。」
「すみません、疑うような真似をしてしまって。これまでも何回か水源の選定に失敗して、どうにも過敏になってしまったようです。必要だったのは前を向く勇気だったのかもしれませんね、、、。」
「いえいえ。私も最善を尽くした上での行動なので。後悔しない選択をするためにやっているだけですよ。」
「、、、ありがとうございました。また何かありましたら相談させてください。」
「こちらこそ。私がやった水質試験は短期間のものなので、長期間のものはまだデータ不足です。何かあったら遠慮なくご相談ください。」
「、、、私、もっと技術のことを知りたい。」
というリーセのワクワクした声と対照的に
「、、、知っている範囲でよければ教えるよ。」
シュンゴはどこか物悲しげに、少し遠くを見つめるような目をして答えた。




