第2章 占い師としての日々 第6話「過去と試験1」
アンジェに呼び出されたシュンゴとリーセ。
アンジェは居住まいを正し、こう言った。
「シュンゴ、リーセ。君たちを臨時の職員として雇いたい。要はいずれは私の部下候補にしたいんだ。もちろん給料は弾むし、人々をたくさん救うような偉業を成し遂げる可能性もあるかもしれない。興味があれば試験を受けてみてはくれないだろうか?」
シュンゴは驚いてアンジェを見つめ返した。
「わ、私がですか?そんな大したやつではないですよ。勿体ない話です。」
アンジェはハハハ、と笑い、少し真剣な表情になった。
「、、、冗談でこんなことは言わないさ。私は領主の娘だ。どうだろう?少し考えてみてはくれないか?」
「、、、わかりました。リーセは大丈夫かい?」
「私は先生の言うことに従う。」
「、、、そうか。ありがとうございます、アンジェさん。少し考えてみます。返事はどれくらいまでにしたらよいでしょうか?」
「そうだな、、。一週間後で頼む。」
「わかりました。ご提案ありがとうございます。考えてみます。」
自警団を後にしたシュンゴは少し浮かない顔をしていた。
(私がいずれ領政を仕切る立場となる、、、?信じられない。さすがに荷が重すぎる、、、。)
「、、、先生?」
気づけばリーセが足を止めたシュンゴを見上げていた。
「、、、すまない。少し考えごとをしていた。」
「、、、部下候補の話、やってみてもいいと思う。先生がやりたいかやりたくないかの問題。試験受けても落ちるかもしれない。でもそれが経験になる、、、。それは先生から教わった。」
「、、、リーセ。」
シュンゴはリーセを見た。
「あそこの公園で私の話を聞いてくれないか?それで率直な意見を言ってほしい。つまらない私の過去話さ、、、。」
「、、、わかった。」
公園のベンチに2人で座り、シュンゴは少し項垂れてポツリポツリと話し始めた。
「、、、私は昔技術者だったんだ。」
「、、、うん。」
「これでもいろいろやってきたんだが、やっていることが評価されず、いろんな職場から追い出されてきた。」
「、、、。」
「私は表舞台に立ちたくないんだ。ただ、自分が生きてきた足跡だけを誰にも気づかれずに残しておきたい、、、。それだけなんだ。」
「、、、先生が目立ちたくないのは、結果を出すと人間関係に摩擦が生まれるから?」
「、、、そうだね。最初は善意からの行動だったけど、それが人を傷つけることになるとは知らなかったんだ。」
「先生が臆病に見えるのも、そのせい?」
「ハハハ、、、。まあ、そう見られてもしょうがないね。私は人と争いたくないんだよ。だから人の知らないところで結果を出して、人々の生活の役に立ちたい、、、。それが現時点での私の結論だね。だから、領政に携わることについて考えてしまうんだ。私なんかがやっていいものなのか、とね、、、。」
「、、、大丈夫。」
リーセは急に力強い声で言った。
「先生ならきっと大丈夫。私にちゃんと残してる。」
そのあと少し気恥ずかしそうに俯いて、
「、、、きっと先生なら、もう嫌われることはない。先生はちゃんと他の人の心にも、大切なものを残すことができると思う。」
シュンゴは照れ臭そうに言うこの少女の頭にポン、と手を置き、
「ありがとう、、、。リーセ。そうだね、やってみるよ。私はリーセの先生だもんな。先生が迷ってたら生徒も道に迷ってしまう。ちゃんとしないとね。」
にやり、と笑った。
普段笑わないリーセも珍しく、人差し指で口角を無理やり上げて、
「にやり。」
と言ったので、シュンゴはまた笑ってしまった。




