第2章 占い師としての日々 第5話「依頼と信頼2」
アンジェのいる自警団の詰め所へと入ったシュンゴは自警団のメンバーに軽く自己紹介した。
「シュンゴです。占い師をやっています。本日はよろしくお願いします。」
メンバーの反応は様々であったが、アンジェの指示ということもあるのか、皆協力はしてくれそうだった。
(本日、集まったメンバーは10人か、、、。アンジェさんは除外するとして今回集まったメンバーが全員だから、9人の中から調べればいいみたいだな。)
「まず人相手相、数秘術と算命学で性格や特徴を把握し、10分程度ヒアリングをします。呼ばれましたらご対応お願いします。」
1人目、2人目は概ね異常は無さそうだ。人相も特に癖が強いわけでもなく、真面目で責任感が強めな性格なのも数秘術と算命学をもとに推測したが大きくずれてはいない。この2人は調べる優先度は低い、と言えるだろう。
3人目のロックさんは少し受け口で唇の左右が歪んでいるようだ。で、あごに細かいつぶつぶのようなシワがある、、、。これはちょっと僻みっぽい性格なのかもしれない。心なしか目も癖が強く、ちょっと人相が悪そうな気がする。
「ロックさん、生年月日を教えていただけますか?」
ロックは不機嫌そうな表情をした。
「なんであんたに年齢を言わないといけないのよ。私はあなたのことを信用してないんですからね。そもそも占いなんてもので人のことなんか全てわかるわけないじゃない。」
シュンゴはニッコリと笑った。
「仰る通りです。占いはあくまでも仮説を組み立てるだけの材料です。ロックさんが清廉潔白な人物であるならば、生年月日も堂々と私に伝えていただき、その上で私のことをインチキ占い師と罵っていただいた方がスッキリすると思いますよ。」
「、、、わかったわよ。言えばいいんでしょ、言えば。」
「ありがとうございます。」
予想通り、貫索星が多めに出ていた。そりゃ頑固だよな。あと数秘術の数字も未来数11ピンチに弱い、か、、、。まあ、なんとなく想像がつく。この人は都合が悪くなると嘘を吐き続けて誤魔化すタイプかもな、、、。
まあ、ここまでは占いによる仮説に過ぎない。
ただ、生年月日の時の反応とその後の質問で少し目が泳いでいたのが気になったな、、、。
この人が犯人ではないかもしれないが、何か事情を知っているかもしれない。マークはしておくか、、、。
その後も滞りなく調査は進み、無事自警団のメンバーの情報はある程度集まった。
「先生、鎧が重い、、、。」
自警団の鎧を着たリーセが出てきた。今回、彼女には自警団に入団して内部から調査をしてもらうことを頼んでいる。
「リーセ、すまない。今回は帳簿調査の臨時の事務職ということで入っているから、鎧は入団時の挨拶だけだ。それと今回の調査が終わるまでの一週間だから、、、。そうだ。これが終わったら何か欲しいものをプレゼントしよう。何か欲しいものはないかな?」
「先生の占いの本を貸して欲しい。」
「わかった。わからないところがあったらいつでも言ってくれ。」
「うん。」
「で、今回の調査の件だが、ロックさんを重点的に見張っておいてくれ。彼女が何か事情を知っているかもしれない。」
「、、、わかった。」
、、、先生から任された占いの初めての1人仕事。
「ちゃんとやってみよう。大丈夫。」
ロック、という人の行動をチェックして、彼女の普段の行動をできる限り把握するように努めていこう。
9時、出勤。
10時、見回り業務。
11時、休憩。
12時、昼食。
13時、報告書作成。
15時、休憩。
16時、後輩の仕事の遅さについて文句を言い続ける
17時、見回り業務。
18時、引き継ぎ。
19時、帰宅。
総じて、愚痴や噂話が好きで、共にベテランのフレイと後輩いびりや嫌がらせをして職場の人に煙たがられている。
「、、、少し疲れた。」
3日目、休憩所代わりに使用している詰め所近くの小屋でロックとフレイの声がした。
「ねえ、あのリーセって娘、なんか生意気よね。」
「そうそう。いくら団長のお気に入りだからといってあの態度はないわよね。」
「例の件に対して、団長が調査のために入れた伏兵だと思っているの。」
「、、、まあでも、バレるわけないわよ。例の件は、私たちと付き合いの長いジョージに預けているんだから。彼ならきっと上手くやるわよ。」
「、、、それもそうね。ま、杞憂で終わるでしょうね。」
リーセはなるべく音を立てないように静かに立ち去った。
「ええと、この街の商店街の地図は、、、。」
あった。おそらくジョージという者は何らかの店を営んでいて、そこへロックたちがこっそりお金を流しているのかもしれない。、、、仕組みはわからないけど。
可能性としてはお金に絡む店ということが考えられる。具体的には金貸し、質屋、、、。
「、、、ジョージ、あった!」
後日、アンジェがリーセの報告をもとにジョージの身辺を調べ、彼の営む質屋へと調査に入った。帳簿や入出金等、金の流れの確認をしたところ、ジョージは観念して口を割った。こうしてロックとフレイの不正も明らかになり、二人は自警団を追われ、牢へ入れられることとなった。
「いやあ、しかしよくやってくれた。シュンゴ、リーセ。今回のことは感謝してもしきれないよ。」
「ありがとうございます。しかし今回の1番の功労者はリーセですよ。私はただ当たりをつけただけです。褒美はリーセに全てやってください。」
「先生、それは嬉しい。でも違うと思う。先生がロックにマークしろって言ってくれなかったら私も気づけなかった。」
「、、、ありがとう、リーセ。アンジェさんもこれが占いの限界だとわかったでしょう?こういうものなんですよ、、、。所詮いくら知識と頭を使ってあたりをつけても、最終的には現場で汗をかいた人間が勝つんですよ。、、、すみません。これは余計なお世話でしたね。」
シュンゴは頭を下げた。
「、、、いや、私もこの件で占いの力と君たちの実力について考えを改めることができた。後日、また相談したいことがあるのだが、また自警団に来てくれるかな?」
「、、、?はい、わかりました。」
「、、、」
リーセはなぜか少し不機嫌そうに沈黙していた。
夕暮れの帰り道でシュンゴはリーセに尋ねた。
「リーセ、さっきはなぜ少し不機嫌そうだったんだ?」
「、、、先生が私だけの先生じゃなくなるから。」
リーセらしからぬ、年齢相応に頬を少し膨らませた、不服そうな表情にシュンゴは思わず笑ってしまった。
「、、、先生はこれだから困る。」
「すまないな、リーセ。とりあえず占いの本は貸すし、他にもリーセが興味持ちそうなことはいろいろ教えるから機嫌直してくれ。」
「、、、わかった。」
静かに笑みを浮かべながら、2人は店へと帰っていった。




