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【水の匣】※書き直し  作者: 石田善二郎
第二章 現場調査

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9 まるで人工知能のようになった分子ネットワークをもった水

 そうしながら、

「まあ、とりあえず、」

 ドン・ヨンファが、ポチポチと、友人とチャットをかわしていく。

『ちょっと? 明日、君の研究室に、遊びに行ってもいいかい?』

『おっ? いいけど、何か、あったのか?』

 友人が、気さくにOKしつつ、ワケを聞いてくる。

『ああ。ちょっと、ある水を、調べてほしくてね』

『ある水、だって?』

『ああ、例の、“水の匣事件”の水が、手に入ってさ』

 と、そこまでチャットを交わすと、

『お、おっ……』

 と、友人の文章の様子が変わり、

『な、何だって――!?』

 と、スマホの向こうで、驚きの声とテンションをあげているのが伝わってくる。

『調べたい。いや、ぜひとも、調べさせてくれ!!』

『ああ、じゃあ、明日もっていくよ』

 と、そこまでチャットしたところで、

「――とりあえず、明日、会う約束を取りつけた」

 と、ドン・ヨンファが言った。

 横から、パク・ソユンがチャットをのぞきながら、

「何か、ムダに、テンションあがってんじゃん」

「まあ、彼は、水を研究しているからね。この“水の匣の水”っていうのは、興味深いんだろう」

 と、ドン・ヨンファが答えた。

 その件は、いったん、そこでおいておき、

「それで、ヨンファの友人に分析してもらうのは良しとして、いまは、我々で出来る範囲で、何か、“可能性”を考えようか」

 と、カン・ロウンが、ふたたび話を仕切る。

 続けて、

「ありうるパターンは……、ひとつは、異能力や、魔力のようなものを介在せずに、純粋に、“何か、テクノロジによるもの”――」

 と、カン・ロウンが言った。

 それを受けて、ドン・ヨンファが聞く。

「“それ”っていうのは、水に、何か微量の成分だったりが混じることで、水が特別な構造を得て……、それによって、通常の水ではない、“何らかのSFめいた能力”を与えている――、ってことかい? まあ、それを、友人に確認するつもりだけど」

「ああ……。おおむね、そういうことだ」

 そこへ、

「それで、“そんな水”が、ドローンのようにガイシャを襲って、“匣”にとじこめた――、ってこと?」

 と、パク・ソユン。

「水が、ガイシャを襲って、匣にとじこめただと?」

 キム・テヤンが、すこし顔をしかめて聞き返す。

「ああ……」

 と、カン・ロウンが、うなづきながら、

「何者かが、先にガイシャを襲ってから殺害したのちに、匣にいれたわけではないとのことだ。それに、現場には、何者かの――、すくなくとも人間の、侵入の形跡はなかった。それで、恐らくは、そこにあった――、現場の庭園の水辺から、“水に”襲われたと思われるんだ」

 と、答えた。

 そのまま、カン・ロウンが続けて、

「それが、たぶんは、ドローンのように同時多発的に、七人のガイシャ達を襲ったと思われる。ちなみに、屋敷の持ち主は、すこし離れた駐車場で、車に乗ってにげようとしていたんだろうな。捕まって、恋人とともに、水の匣にとじこめられていたようだが……」

 と、補足した。

「てか? 車に乗らなきゃ、逃げられたんじゃない?」

「まあ……、そうだろうけど、よ……、そいつを気づいた時には、遅かったんだろ」

 と、身も蓋もないように言うパク・ソユンに、「いまさら、そいつを言ってやるなよ」とキム・テヤンが言った。

 それはさておき、

「しかし、そんな、“SFみたいな能力をもった水”ってのが、実現可能なのか――? って、話だな」

 と、キム・テヤンが、話を本題にもどして皆に問いを投げかける。

「まあ、これまで知らべてきた事件を考えたら……、ありそっちゃ、ありそうじゃん」

 と、軽い答えのパク・ソユン。

「まあ、な……」

 カン・ロウンが、相づちした。

 まあ、確かに、“その認識”は、ここにいる四人とも同じではある。

 ただ、その可能性については、今は思い浮かぶ材料はなく、

「それとも……、もっと“シンプルに”考えて、何か、怪人や異能力者の手によるものなのか?」

 と、カン・ロウンが、こんどは“不可思議な力が介在している”可能性について考える。

 まあ、“異能力者”であり、“そのような類の事件”を調べることの多いSPY探偵団のメンツにとっては、“何か現代の科学技術というかガジェットをトリッキーに駆使した可能性”よりも、“こちらのほう”がシンプルで、なおかつ親和性があるのだろう。

 それはさておき、

「怪人、異能力者ねぇ……」

 と、ドン・ヨンファ。

「もしくは、何か、SFに出てくる、“超生命体”みたいなアイデアも、ありかな? と――」

 と、カン・ロウンが補足した。

「何ぽよ? その、SFに出てくる超生命体って? ケイ素生物、とか?」

「まあ、ざっくり、そんな感じかな。何らかの理由で、まるで人工知能のようになった分子ネットワークをもった水というのが現れて――」

「はぁ、」

 と、パク・ソユンが気の抜けた相づちし、

「ったく、何だよ? B級のSFホラーじゃあるまいに」

 と、キム・テヤンが顔をしかめる。

 また、カン・ロウンが、

「ちなみに、犯行は――、“水の匣の出現”っていうのは、わが国だけでなく、いまのところ、日本、中国とで、散発的に……、それも、不規則的に起きているじゃないか」

「ほ、う」

 と、キム・テヤンが、相づちしてやりつつ、

「そうすると……、この、超生命体のようになった水が、まさにホラーSFのように、この韓国、日本、中国で自己増殖している――、とか」

「はぁ、」

 と、こんどは、ドン・ヨンファが気の抜けた相づちをし、

「とか――、じゃねぇってんだよ、まったく」

 と、キム・テヤンが、「やれやれ」と呆れる。

 そんな、自分以外のメンバーたちに、

「まあ、超生命体説は冗談ていどにしておいて……、もし、水の匣の犯人が、何らかの怪人、異能力者だとしても、なかなかに、移動が大変じゃないかな? この、三国を、行ったり来たりしてってのは」

 と、カン・ロウンが、疑問を投げかけた。

「そうすると? 犯人は、複数人いる――、もしくは、何かグループか、組織の可能性があるってことになるってわけ?」

 と、パク・ソユン。

「ああ。“そうなる可能性”が、ある」

 カン・ロウンは、答えながら、

「ちなみに、超生命体説だと、そこは、考えなくていいかもな」

「けっ、もういいってんだよ、そのB級SFみてえなのは」

 と、キム・テヤンが舌打ちをし、

「まあ、とりあえずは……、ヨンファの友人の分析結果を待つのと並行しつつ、調べれたら、調べていこうか」

 と、カン・ロウンが、まとめた。

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