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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第十二章 対決

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61 てか、もう、あんまし道頓堀ウォーターが残ってないんだけど



 

          (3)




「なっ……!?」

「ど、どないなってんの、これ?」

 と、ス・イジュンと倉沢くららのふたりにとって、これは想定外のことだった。

 水のキューブによってパニックを起こし、混乱状態に乗じてカン・ロウンたちの身動きをとれなくする、あるいは、彼らも水の匣に閉じ込めてしまう予定だった。

 だが、カン・ロウンの異能力によって、群衆のパニックは制御され、また、水の匣も、パク・ソユンの持つ謎の注射器によって破壊されてしまうという。

 最初、圧倒的に有利だと思っていた状況が揺らぐ。

 ただ、それでも、

「くらら、これじゃ、まだ甘い。もっと、飽和攻撃のように、やつらを」

「ええ……」

 と、この空中庭園から、水のキューブは依然として多量のドローンのように作る出すことができ、


 ――ギュ、ィィン――!!


 と、先ほどの二倍か三倍の数の水のキューブを、空中に展開させる。

 面、空間を飽和する圧倒的な量に、

「「――!?」」

「「なっ――!?」」

 と、カン・ロウンたち四人と、

「う、嘘でしょ!?」

 と、ケ・ジウォンが驚愕するも、その暇すら与えず、

 ――ドドド、ドドッ――!!! 

 と、水のキューブの飽和攻撃が襲い来る!! 

 すると、先ほどまでは、なんとか避けれなくもなかった攻撃に、

「うっ、うわぁぁ!!」

「だ、ダメェだぁぁッ!!」

「こ、こんなの、逃げ場がッ――!! う、ぐッ――!!」

 と、人びとが捕まり、水の匣に閉じ込められてしまう。

 パク・ソユンが注射器で水の匣の破壊を、ケ・ジウォンが襲来する水のキューブをハサミで迎撃するものの、

「くっ!!」

「か、数が多すぎるわ!!」

 と、キム・テヤンとケ・ジウォンが、思わず声をあげる。

「ちょっと! アンタも何かしなさいよ!」

 ここで、パク・ソユンと、

「そうだぜ! てめぇは、ボサッとし過ぎなんだよ!」

 と、キム・テヤンが、ドン・ヨンファに向かって怒鳴る。

「あ、ああ、」

 ドン・ヨンファが遅ればせながら、ようやく動く。


 ――シュ、ババッ――!!


 と、蘇州で使ったのと同じく、石灰の蔓バラともいうべき、“疑似植物”を異能力で以って召喚させる。

 それらは、空間を縦横無尽に広がり、

 ――ジュワァァッ!!

 と、音を立てて、水のキューブを取りこみ、この場の群衆たちを守らんとする。

 しかし、それでも、大量の水のキューブに対して防御しきれるものではない。

 半分以上は、すり抜けてしまい、

「つ、捕まるっ――!?」

「いやぁぁぁ!!」

「た、助け――、」

 と、また何人も、水の匣に捕まってしまう。

 それらは、カン・ロウンたちに対しても、同様だった。

 格闘で応戦していたキム・テヤンだが、前方の水のキューブを蹴散らしていた隙に、

 ――ギューン!!

 と、死角から襲われてしまい、

「ちっ――!? しまった!!」

 と、背後、足を取られ、水の匣に捕まってしまう。

「て、テヤン――!!」

 カン・ロウンが叫ぶも、自身も同様に水のキューブに囲まれてしまい、

「うっ――!? うぉぉッ!!」

 と、同じく、水の匣に閉じ込められていく。

 そんな様子を、倉沢くららとス・イジュンのふたりは、上から眺めながら、

「よしッ! これで、俺たちは逃げよう」

「やね! これで、ちょっとは、時間を稼げるやろ」

 と、この場から逃走した。

「あっ――! に、逃げた!」

 ドン・ヨンファが反応をする。

 その刹那、

「ちょっと――! ヨンファ!」

「へっ――?」

 と、突然、パク・ソユンの声がして、飛び込むようにして真横に現れるや、ドン・ヨンファを

 ――ドゴッ!!

 と、突き飛ばしたのだ!!

「うぉぉッ――!?」

 と、ドン・ヨンファが声をあげながら、

 ――ズ、サァァ――!!

 と、転んで、床をすべっていく!!

 倒れた状態から、

「ぐっ……、な、何を、」

 と、「何をするんだ!?」と、文句を言おうとした、その時、 

「なッ――!?」

 と、驚愕して目を見開いた。

 自分が、さきほどいた場所に、

 ――ドドド、ドドッ――!!! 

 と、水のキューブが多方向から、パク・ソユンへと襲いかからんとしていた。

 すなわち、自分がボサッとしていたところを、どかして庇ったのだ。

「そ、ソユンッ――!!」

「ソウちゃん――!!」

 ドン・ヨンファとケ・ジウォンが叫ぶ。

 それでも、

「……」

 と、パク・ソユンは動じずに、最後まで水のキューブの動きを見切る。

 下半身が、水のキューブに捕まるも、逸らした上半身は注射器を手にしており、自身を包んでいく水のキューブに対して、

 ――チューッ

 と、道頓堀の水を注入していき、

 ――バシャァッ……

 と、その“形”を失わせ、破壊する。

 パク・ソユンは、捕まりかけた状態から脱出し、

「ああ、もうっ! 何やってんのよ、アンタたち!」

 と、カン・ロウンたちを、まず助けにかかる。

 手際よく、道頓堀の水を注入して破壊し、カン・ロウンとキム・テヤンが“水の匣”が崩れてできた水たまりに、

 ――ドサッ――

 と、吐き出される。

 ふたりは、床に手をついて立ち上がろうとしながらも、

「ゲホゲホッ……!」

 と、カン・ロウンのほうは、苦しそうに水を吐く。

 いっぽうで、

「す、すまねぇな、ソユン」

 と、キム・テヤンのほうは、情報部時代に鍛えていた――10分近い潜水にも耐えれるように訓練していたせいか、ケロッとしていた。

 ただ、これで終わりではない、

「てか、これ? 全部、助けるんだよね?」

 と、ドン・ヨンファが聞く。

 まだ、この場にいた多くの人たちが、水の匣に捕まってしまっていた。

「まあ、さすがに、ほっとくわけにはいかないでしょ」

 パク・ソユンが答える。

 先ほどまで、倉沢くららとス・イジュンのふたりを驚かせ、追いつめることができると思ったが、それどころではなかった。

 さらに、悪いことに、

「てか、もう、あんまし道頓堀ウォーターが残ってないんだけど」 

 と、パク・ソユンが手に持つ、注射器であるが、水を無尽蔵に出せるわけではない。

 しかも、まだ、水のキューブは数十体ほど残っており、自分たちを攻撃する期をうかがっている。

 それらから防空するドン・ヨンファが先ほど召還した疑似植物の姿もあるが、こちらも無制限に召還・具現化できるわけではなく、限界にきていた。

「くっそ、どうするか?」

 キム・テヤンが、険しい顔で焦り、

「何とかしてよ? このままじゃ、逃げられちゃうし」

 と、水の匣に対処しているパク・ソユンが、言った。

「う、む……」

 カン・ロウンと、

「……」

 と、ドン・ヨンファが、焦りを募らせる。

 犯人をみすみす逃げ指すわけにはいかないし、水の匣に捕まっている人間を放っておくこともできない。

 ただ、助けると言っても、依然として水のキューブによる攻撃のある状況で、助けきれるかも分からない。

 すると、



「――おい、先を行け」



「「「――!?」」」

 と、突如、どこかから声がした。

「た、タヌキ――!」

「神楽坂さん!」

 と、妖狐の神楽坂文が現れる。

「ここは、あとは、私が何とかするから、貴様たちは、倉沢くららとス・イジュンのふたりを追うのた」

 妖狐が言った。

「ああ”?」

「な、何だって?」

「は? アンタが、これ? 何とかするの」

 と、皆が反応すると、

「ああ……。だから、貴様たち――、ソユンとヨンファ、そして、何かオレンジのヤツは、犯人たちを追うのだ」

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