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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第十二章 対決

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59/62

59 あと、小バカにしてるんじゃなくて、若干、けっこうバカにしてるぽよー




          (1)




 大阪、なんばアクアガーデン――

 曲線に囲まれた、斬新な空中庭園と、高層建築の組み合わせ。

 庭園内には柱状の噴水だったり流水があり、また、水の織りなすアートは建物の内と外にもつながる。

 敷地内と建物は、ほどよく迷路のようになっており、行きかう人も、それなりに多い。

 そして、大量の水――

 すなわち、水のキューブを自在に操る犯人たちにとって、好都合きわまりない場所だった。

 ここに、倉沢くららとス・イジュンのふたりが向かったとの情報を得て、カン・ロウンたちSPY探偵団とケ・ジウォンの五人は、やってきた。

 妖狐の神楽坂文は、万一の場合に、静養しながら待機している。

 曲線で囲われ、段々のようになった空中庭園と、接続される建物を見て、カン・ロウンが、

「思ったより、複雑になった場所だな……。もし、ここで、犯人たちの異能力で、水のキューブに襲われたら、厄介だな」

「ああ……。おおかた、ここで騒乱を起こして……、それに駆けつける俺たちを始末し、そのまま、逃走する算段かもしれないな」

 と、キム・テヤンが答える。

 すると、


「ふふ……、そのとおりだよ」


「「「――!?」」」

 と、会話を聞いていたのか、上から声がした。

 声のほうを見て、

「いっ、イジュン――!!」

 と、ドン・ヨンファが叫んだ。

 そこには、上からこちらを見下ろすかっこうで、ス・イジュンと、倉沢くららの姿があった。

「フン……、来たか、ヨンファ」

 ス・イジュンは、鼻で笑うような態度を見せる。

 また、

「やっぱ、来はったね」

 と、倉沢くららも、迎えうつ犯人として、堂々と佇んでいた。

「い、イジュン、どうして? あんなことを?」

 ドン・ヨンファが、まだ動揺した様子で聞いた。

「おいおい? また、動機を聞くんなんて、ベタなことを」

 ス・イジュンが、やれやれとジェスチャーして、

「どうせ続けて、『こんなことはやめるんだ』と、友人としての忠告ってのを、するんだろ?」

「い、イジュン、」

 と、ドン・ヨンファが、友人に対して動揺を見せる。

 いっぽう、

「……」

 と、ス・イジュンは、不敵な笑みを浮かべながら、バーコード・ヘアを手で流してキメて見せた。

 すると、

「いや、アンタが友だちか実は友だちじゃないかは、別に、どうでもいいけど、さ? 何で、こんなことしてんのか? 純粋に知りたい」

 と、パク・ソユンが割りこんできた。

「う、ん……?」

 ス・イジュンの表情が、一瞬、ピクッとなり、

「純粋に知りたい、ですか?」

 と、倉沢くららが、聞き返した。

「ぽよ」

 パク・ソユンが答えたところ、

「「ぽよ――!?」」

 と、倉沢くららとス・イジュンの、犯人ふたり組も、さすがに驚愕した。

 いっぽう、

「うわ……、出たよ、“ぽよ”」

「まった……、こんなとこでも、緊張感なく、“ぽよ”かよ……」

 と、聞きなれたドン・ヨンファとキム・テヤンは、顔をしかめて呆れていたが。

 彼らの反応を無視して、

「だって、さ? あんな、“ただの水”の箱なんかに入れて、さ? 何か、意味あるわけ? あんま、意味ないと思うんだけど」

「意味がない――、ですか?」

 倉沢くららが、聞き返す。

 どこか、面白くなさそうな表情になりながら。

「うん。ちょっと意味が、ないと思う。というか、意味がない寄りの、意味が無いよー」

 パク・ソユンが、軽い調子で言うと、

「何だい? その、小バカにしたような態度は?」

 と、ス・イジュンの表情を険しくしながら、ドン・ヨンファのほうを向いて、

「ヨンファ」

「う、ん……?」

「友人として、忠告しておくよ。こんな失礼な女を、君は相方にしているようだが、やめておいたほうがいいよ」

 と、冷たい表情で言うと、

「あっ? 残念でしたー。そもそも、相方じゃないし……、あと、小バカにしてるんじゃなくて、若干、けっこうバカにしてるぽよー」

「ちょっ! ソユン!」

「おっま! 何、刺激するようなこと言って!」

 と、表情は変わらずにおちょくるようなことを言うパク・ソユンに、ドン・ヨンファとキム・テヤンが慌てるも、

 ――ピ、キッ――

 と、すでに、ス・イジュンと倉沢くららの“何か”が切れる。

 同時、

 

 ――ズ、シャッ――!!


 と、剛速球よりも速く――!! 新幹線なみのスピードで、つぶてのように放たれた水のキューブがパク・ソユンを掠める。

 そのまま、

 ――バシャァッ――!!

 と、水のキューブは、床に弾ける。 

「「「――!?」」」

 何人かが、思わず驚くも、

「……」

 と、パク・ソユンだけは、眠そうにぼーっとした様子で、動じなかった。

「まったく、品性のないヤツだな。まあいい……、ヨンファ、どうせ、お前たちなどに、彼女の――、くららの考えなど分かるまいし、説明しても意味はないだろうな」

 ス・イジュンが、やれやれと言うと、

「いや、説明するぽよー。もうすこし若干バカにしたいから、説明するぽよー」

 と、パク・ソユンが、さらに刺激する。

「「そ、ソユン! やめなって!」」

 カン・ロウンとドン・ヨンファと、

「だから、刺激するなっての! お前は!」

 と、キム・テヤンが、制止しようとするも、

「フッ……、もういい、身をもって思い知るがいい、バカどもが!」

 と、ス・イジュンはパク・ソユンたちに声を荒げながら、

「くらら」

「ええ」

 と、倉沢くららに、合図した。

 すると、


 ――ギュ、ィィン――!!


 と、まるで領域展開のごとく――!! 

 広場内のあらゆる水場から大小の水のキューブ群が現れるなり、整然と、360度の2、30メートル四方八方に、立方体状に並びながら広がっていく!!

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