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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第十一章 対決

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58 できたら、人さんに、迷惑かけたないねんけど




          (3)




 妖狐たちが大阪に近づいている中、いっぽう、倉沢くららとス・イジュンも動こうとしていた。

「その、妖狐――、キツネはんたちは、そろそろ、来るやろか?」

 倉沢くららが、そう言うと、

「そう、だな……」

 と、ス・イジュンは、すこし考えながら、

「ヨンファのやつらは、昨夜、俺に電話してきたが……、あの時間から、蘇州から、なるべく早く日本に来るとしたら――」

「……」

 と、沈黙して耳を傾ける倉沢くららに、間をおいて、


「午前の、今ごろ――、だろうか?」


 と、予想した。

 そうすると、

「ここでは、あかんやろうね」

 と、倉沢くららが言い、

「ああ……」

 と、ス・イジュンは、うなづいた。

 続けて、

「もし、いまここに、ヨンファたちが来たら、操れる充分な水がない」

「せや……。大量の水があればこそ、水のキューブを操って、何とかできるけど……、ここに、来られた時点で、お手上げやね」

 と、ふたりは確認する。

「そうすると……、いつでも自在に水が操れて、なおかつ、そうだな……? 人質は、要(い)るかい?」

「う、う~ん……、せや、なぁ……? できたら、人さんに、迷惑かけたないねんけど……」

「まあ、今回ばかしは、仕方がないかな」

「ほんま、堪忍やね」

 などと、ふたりは会話を交わす。

 そうして、大阪駅を中心として、場所を検討する。

 水の都市、大阪――

 中心部にも、水をテーマとした場所や、建築も多くある。

 その中で、条件から考える。

 大量の、清らかな水があること。

 妖狐やカン・ロウンたちと戦闘になった際、水のキューブをトラップのように複雑に配置でき、なおかつ、自分たちは逃げやすいこと。

 ある程度の数の人がおり、場合によっては人質、盾とすることができうる場所。

 そして、“水の匣”を、つくりたいと思える、アーティスティックな要素のある場所であること――

 これらの条件を、もとに、迎え討つべき場所を考える。

 その時、


「ん……?」


 と、ある場所が、ス・イジュンの目に留まった。

「ここなんか……、いいんじゃ、ないか?」

 倉沢くららに聞くと、

「ん……? ほんまや!」

 と、驚きと感嘆のまじった声をあげた。

 迎えうつための条件を満たし、また、デザインのセンスもある場所。

 それを、確認して、

「じきに、ヨンファと妖狐のやつらは、ここに来るだろうから、モタモタしている暇はない」

 と、ス・イジュンは、意を決して、

「よしっ! そしたら、ここで、ヨンファと妖狐のやつらを、迎え討とう」

「ええ!」

 と、倉沢くららも、覚悟を決めた。

 そうして、ふたりは動き出す。

「――それで、皆、始末しよう。くらら」

「ええ……。美しく、清き、“水の匣”にいれて、ね――」



          ***



 ――そうして、カン・ロウンと妖狐の神楽坂たちは、大阪についた。

 新大阪から、大阪駅まででており、

「ふむ。やつらは、部屋を出たようだ」

 と、妖狐が確認した。

“葛葉”と、魔界の虫を超小型ドローンのようにして、倉沢くららのマンションを調べてみた結果、分かったことだ。

「まあ、当然か……」

 キム・テヤンが、言い、

「やつらは、水があればこそ、異能力で以って操ることができる。ゆえに、そのまま部屋にいることは、無防備極まりなかろうからな」

 と、妖狐が続けた。

「すると、逃げようと、しているのかい?」

 ドン・ヨンファが聞き、

「だが、彼らも、妖狐という存在を知っているとすれば、逃げらないことなど分かるし……、それに、こっちの、日本の警察にも、こんな特殊な事件を調査する部署も、別組織も、“ある”」

 と、カン・ロウンが答える。

「ふむ。考えてみよ、貴様たち。追いつめられた状態で、すること――。遠隔で、異能力を発動しようとすると、妨害される……。そうすると、考えられるのは――」

 妖狐が言うと、

「う、ん……?」

 と、カン・ロウンと、

「まさか――!?」

 と、キム・テヤンが、すぐにピンときた。

 妖狐は、ドヤ顔して、

「ああ……。彼らは、直接的に、水を操って……、何か、大規模にコトを起こす可能性がある」

「「「……」」」

 と、皆の顔が、険しくなる中、妖狐は“葛葉”を用いながら、

「その、条件を満たす場所というのが――」

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