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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第十一章 対決

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57 「え――? いまさら、それ言う、お前?」みたいな、気まずい空気




          (3)




 場面は変わって。

 カン・ロウンと、妖狐たちは、新幹線で新大阪に向かっており、京都に近づいていた。

 まだ、妖狐は、

「ハァ、ハァ……」

 と、苦しそうにしていた。

 顔には、小さなヒビが入ったままで、脂汗が垂れていた。

 他の乗客や、乗員に心配されてもアレなので、窓際の席で目立たないようにしていた。

「大丈夫、ですか……?」

 カン・ロウンが、心配すると、

「まあ、な……」

 妖狐は、答える。

 ドン・ヨンファが、

「もしかして……、まさか、まだ、ずっと、妨害し続けているのかい? イジュンたちの、異能力を」

「ああ、そのまさかだ。バカみたいに、ずっと異能力を使いおって、やつら」

 妖狐が、「バカみたいに」と、口悪くして答える。

 これには、

「な、何だって!」

「「――!」」

 と、何人かは驚いた。

「まあ……、やつらは、ワンチャン、この私の妖力が、消耗してくものだと気がついた可能性があるな」

「そ、そんな……」

「ど、どうやって、」

 と、ドン・ヨンファとカン・ロウンが困惑するが、

「――なので、連中は、嫌がらせのように、あらゆる場所で遠隔の力を発動させ、この私を、できる限り消耗させたいのだろう」

「まあ、確かに、嫌がらせみたいに、嫌らしいですね」

 と、ケ・ジウォンが、言った。

 そこへ、

「はぁ、」

 と、パク・ソユンが、気の抜けた声で相づちしながら、

「てか、さ――? タヌキ」

 と、妖狐に、何か言おうとした。

「う、ん……?」

「ん? ソユン……?」

 と、カン・ロウンとドン・ヨンファが反応し、

「ふむ。何だ?」

 と、妖狐が、聞き返す。

 注目の集まる中、ひと呼吸おいて、 


「そもそも、さ? 犯人たちの、パソコンでもスマホでも、ぶっ壊せばいいんじゃない? その、遠隔の力ってのを使うには、ライブカメラか何かだっけ――? の映像を見て、リアルタイムでやってんなら、さ? パソコンぶっこわせば、できないじゃん」


 と、パク・ソユンが、言った。

 それを聞いて、

「「あっ――?」」

 と、カン・ロウンとドン・ヨンファの、声が漏れ、

「「――!?」」

 と、キム・テヤンとケ・ジウォンが、声にならず驚愕した。


 …………、…………


 と、沈黙が――、「え――? いまさら、それ言う、お前?」みたいな、気まずい空気がただよった。

「貴様……、いまさら、それ言う? 鬼畜か?」

 と、当の妖狐も、そう言うも、

「いや、まあ……、もっと早く気がつけばよかったけど、さ? 私も、いま、思いついたし」

 と、パク・ソユンは答えると、

「ふむ。まあ、いいか……。いうて、そこまで、消耗はしてないだろう……」

「おい、ほんとかよ、」

 と、「問題ない」との妖狐に、キム・テヤンが疑問の顔で言うと、

「それに、もし、パソコンをぶっ壊せばぶっ壊せばで……、やつらは、何をするか――」

「……」

「……」

 とここで、暗示のように言った妖狐に、沈黙がはさまる。

「確かに、神楽坂さんが言うように……、もし、パソコンを破壊した場合……、犯人たちはどう動くか、予想のできないことをする恐れも、ありますな」

 と、カン・ロウンが言い、

「ああ……。すくなくとも、パソコンを使っての遠隔の異能力と、それに対して、我が妖力で妨害を続けているかぎりは……、やつらの力の、水の匣の犠牲者は、出ることはなかろう」

「ま、まあ、確かに、」

 と、ドン・ヨンファが、あいまいに相づちし。

「そうすると、そのまま、バカみたいに匣をつくらせといたほうがいいだろう」

 と、妖狐が、強引にまとめた。

 恐らくは、すこし、やせ我慢のようなところもあるが。

「まあ、アンタがいいなら、いいけど。てか、いまさら、遅いけど」

 パク・ソユンが、言った。 

 まあ、その今さらを言ったのは、このパク・ソユンなのだが。

 また、そこへ、

「あ、のぉ……?」

 と、DJアクティブ・クラブこと、ケ・ジウォンが、妖狐に何か聞こうとした。

「ん?」

「あ、ん?」

 ドン・ヨンファとキム・テヤンヤツ

「ぽよ」

 と、パク・ソユンが反応する中、

「何だ? 何かオレンジのヤツ?」

 と、妖狐が、質問の内容を聞くと、

「えっと……、タヌ、キツネさんの妖力が、消耗するのは分かったんだけど……、犯人のほうは、どうなのかな――? って、思って」

 と、オレンジのヤツこと、ケ・ジウォンが答えた。

「確かに……」

 ドン・ヨンファが、同調する。

 もし、相手の異能力も妖力と同じように、使えば使うほど減るのであれば、都合がよい。

 だが、

「さあ、な……? やつらが異能力を使うことで、その力というのが、減っているのかどうかは、分からんな」

 と、妖狐の答えは、期待に応えるようなものでなかった。

「そんな、」

 ドン・ヨンファが、気落ちするような顔をし、

「神楽坂さんでも、分からないんですか?」

 と、カン・ロウンも、同様の顔で聞いた。

「まあ、分からんものは、この私でも分からんのだ」

 妖狐は、答える。

「もし、減ってなかったら……?」

 ドン・ヨンファが、悲観的な顔で聞く。

「ふむ。そうだな……?」

 妖狐は、天井を仰ぎながら、

「その時は……、何か、万が一の際の……、手を、考えておいたほうがいいだろう」

 と、言った。

「万が一の、手か……」

 キム・テヤンが、言葉をくり返すと。

「ああ……」

 と、妖狐はうなづきながら、

「先日の、如水での場合……、ギリ、妖力を用いたから、水の匣から、ソユンのやつを助け出すことができたが……、最悪のケース、妖力が、一時的に枯渇寸前までいってしまうこともありえる――」

「「「「――!?」」」」

 と、告げた言葉に、衝撃が走った。

 これまで、何だかんだ、妖狐の妖力を使えば、何とかなる節はあったのだが、そうはいかない場面のあることを突きつけられる。

 例えるなら、大長編のドラえもん映画で、秘密道具がいっさい使えない――、もしくは、ドラえもんがおらず、限られた秘密道具しかない――、それに似た状況だろうか。

「……」

「……」

 と、カン・ロウンとドン・ヨンファをはじめ、皆が重い表情をしていると、

「まあ、その時は……、本当になけなしの妖力・妖具と、お前たちの異能力の合わせ技で……、何とか、するしかないだろう」

 と、妖狐が、課題を出すように言った。

「何とか、か……」

 キム・テヤンが、反復すると、

「ああ……、何か、思い浮かぶことは、ないか?」

 と、妖狐が、皆に投げかける。

「う~ん……」

 カン・ロウンが、考えるようにうなり、

「思い浮かぶ、ことかぁ……?」

 と、ドン・ヨンファも、同じように、頭をひねろうとする。

 すると、


 ――ガタン、ゴトン……、ガタン、ゴトン……


 と、レール音が、車内にも聞こえてきた。

 列車は減速しており、京都駅に近づいていた。

「あっ、」

 ドン・ヨンファと、

「もう、京都か」

 と、キム・テヤンが、気がついて言った。

 京都と聞いて、

「京都かぁ……、清水寺、行ってみたいわ」

 と、ケ・ジウォンが言うと、

「は? 何、言ってんの? これは、仕事じゃないのよ。真剣に、やるぽよ」

 と、パク・ソユンが、タモリの名言みたいなこと言って、つっこむも、

「いや、『遊びじゃない――』の、間違いじゃ、ないのかい?」

 と、ドン・ヨンファに、さらにつっこまれる。

 また、ケ・ジウォンが、

「いや、そもそも、こっちは、アンタに無理やり連れてこられた立場の人間なんだけど」

 と、そもそもの、不平を言うと、

「まあ、とりあえず……、すまないが、協力してくれないか? ケ・ジウォンさん」

「ああ。そんで、終わったら、京都でも、ゆっくり行くこった」

 と、カン・ロウンとキム・テヤンが、なだめた。

「ま、まあ……、いいですけど」

 ケ・ジウォンは、そこは、うなづいた。

 その横で、

「しかし、清水寺、かぁ……。久しぶりに、行きたいよね? ソユン」

 と、ドン・ヨンファが、呑気にも、パク・ソユンに話をふる。

「清水寺、ねぇ……?」

 パク・ソユンが、清水寺との言葉に、何か考える仕草をする。

 スマホで検索し、『清水寺』との漢字についても、見てみると、

「清水寺――、清らかな、水――」

 と、単純に、漢字を分けてみたところ、


「ん――?」


 とここで、パク・ソユンが、何かにピンときたようだった。

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