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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第十一章 対決

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56 バッテリーのように減るかどうか

 そして、


 ――ファァン……


 と、倉沢くららは、“水の器”に、力をこめる。

 ――ぽ、ちゃん……

 と、波紋が立つ。

 光速、もしくは光速を超えた速さで、“共鳴”は伝わり、遠く離れたところにある水を操ることができる。

 パソコン画面に映る中、まだ人の姿がチラホラある豫園のちかくで、水のキューブを操り、“水の匣”をつくろうとした。

 そうして、事件を起こせば、またドン・ヨンファや妖狐たちは釘づけになってしまい、日本に向かうわけにはいかなくなるだろう。

 さらに、あわよくば、先ほどは殺せなかったパク・ソユンふくめて、皆殺せるかもしれない。

 まあ、残る妖狐の力は未知数だが、それで邪魔する者は、ほぼ排除できたことになるだろう。

 だが、


「――ん?」


 と、突然、倉沢くららの表情がかわる。

「どう、した……? くらら?」

 ス・イジュンも、おそるおそる聞く。

 倉沢くららは、何か違和感、異変を感じており

「おかしい、わ……」

「おかしい――、だって?」

 と、ス・イジュンが、怪訝な顔で聞き返す。

 この時点で、ス・イジュンも、彼女が感じている違和感を、半ば察しており、

「せや……、何か、力が伝わらへんのよ」

「力が、伝わらない……、だと?」

 と、ますます、表情を険しくさせる。

 ス・イジュンが、

「もしかすると、ヨンファたちのほうに、何か、より強力な異能力者が……、いや、妖狐か――! そいつが、“ブロック”しているんじゃないか?」

 とここで、妖狐のことにピンと来た。

「せや、たぶん、イジュンの言うとおりやで。その、妖狐っちゅうんやない?」

 倉沢くららが言うと、

「ちっ――!! くっそ!! ヨンファのヤツら!!」

 と、ス・イジュンが、声を荒げた。

「ほんま、腹立たしいね」

 倉沢くららも、言葉をあわせる。

 腹立たしいか、そうでないにしろ、どちらにせよ、ここでふたりの立てた見立ては崩れることになる。

 そこへ、ス・イジュンが、

「ただ……、待てよ、」

「ん?」

 倉沢くららが、反応すると、

「くらら、その、水の器っていうのは……、異能力を使うにつれ、だんだんと、消耗したりは、しないかい?」

 と、バッテリーのように減るかどうか気になった。

「い、え……、そんなことは、なさそうだけど……。ずっと使っている時も、何か、エネルギーだったりが、減るような様子はないと思うわ」

「そうか……、すると? ワンチャン、無尽蔵に、この異能力を出せる可能性は、あるよな」

「ま、あ……、せやね」

 倉沢くららは確信は持てないものの、確かに、この“水の器”の力が尽きることが無く感じる。

 すると、

「くらら、このまま、アイツらを――、妖狐を妨害するよう、いたるところで水の匣をつくり続けよう」

「え――?」

 と、ス・イジュンの言葉に、倉沢くららが思わず驚いた。

「どゆ、こと?」

「まあ、これは、俺の勘だけど……、その妖狐ってのは、おそらく、妖力を使い続けていると消耗して、弱体化してくるんじゃないか?」

「は、ぁ……、まあ、マンガ的な設定だと、あり得るわね」

「ああ……」

 ス・イジュンは、うなづきながら、

「――だから、その可能性を踏んで、このまま妖狐の力を、できる限り削って弱体化させる」

「あ、あ……」

 とここで、倉沢くららも合点した。

「それで、日本に、俺たちの前に来たときは、遠隔の力でなく……、直接、やつらを出迎えてやるんだ」

「やね。うちも、その時は、覚悟決めとくわ」

 と、ふたりは、腹をくくる。

 そして、ス・イジュンは嗤う。

「ふふっ……、ヨンファ、来るなら、来いよ……。こんどは、パク・ソユンのヤツといっしょに、お前も、水の匣で、いっしょに殺してやるよ」

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