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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第十章 日本へ

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48/62

48 いや、夜神ラ〇トのスペックは、一般人的じゃないでしょ




          (1)




「――それで、犯行をしたい現場の、リアルタイムの映像さえあれば……、犯人は異能力をもって水を操り、“水の匣”をつくることが可能だというのはわかったが……」

 カン・ロウンが、まず、まとめるように言った。

 その流れで、

「これまでのケースは、どうなんだ? マー?」

 と、キム・テヤンが続いて、スマホ画面の向こうの刑事たちに聞いた。

「ああ……、これまでの、ケースは……」

 マー・ドンゴンが、思い出しながら答えようとした。

 だが、それより速く、


 ――フ、ァァン……


 と、またホログラフィが、マー・ドンゴンたちとカン・ロウンたちの両方のほうに現れた。

 映し出された内容はというと、何やら、捜査資料らしきもので、

「ふむ。これまでのケースは、ライブカメラや、監視カメラ……、もしくは被害者もしくは付近にいた第三者が、SNSなどで、動画でリアルタイムに発信されていた――、のいずれかの条件を満たしているな」

 と、妖狐が内容を見ながら言うと、

『あっ、』

 と、イ・ヨンヒが、何かを察した。

 ほぼ同時に、

『おいっ!! お前、うちのデータにハッキングしただろ!?』

 と、マー・ドンゴンも、声を大きくして妖狐に問いつめる。

「うん。“する”って、言っただろう」

『うん、じゃねぇよッ!!』

『そうよ!』

 と、マー・ドンゴンとイ・ヨンヒが、怒ってみせるが、

「まあ、いずれにしろ、話を進めるうえで、遅かれ早かれ出す必要のある資料だろ? 貴様たちが、わざわざ出す手間が省けたではないか」

『いや、そうだけどさ、』

 と、イ・ヨンヒが呆れるも、続きを話すのをやめた。


 そういうわけで、資料を見ていく。

 先日の、ソウルの別荘地区のケース。

 地区にあるカメラと、邸宅敷地に設けられた監視カメラ。

 監視カメラの記録には、落水庭園ともいえる場所から、まさに水のキューブ群が現われ、ガイシャたちを襲う始終の映像がのこっていた。

 それから、マー・ドンゴンとチャク・シウがコーヒーブレイクに寄っていたカフェでは、SNSのいくつかから、映る水辺から、水のキューブが出現するのが見てとれる。

 また、これは韓国警察の資料ではないのだが、本日のさきほど、中国は蘇州の如水イベントの動画サイトでの発信に映る、パク・ソユンが水のキューブに襲撃される様子。

 さらに、アクア・キューブリック社にある、美しい水の室内庭園の様子が、ライブカメラにて映し出されており、やはり、そこから水のキューブの大群が出現していた。

 それから、日本の黒部峡谷のケースや、池袋のサンシャインシティでの水の匣のケースなど、おおむね確認しつつ、

「確かに、すべてのケースで、異能力者が水のキューブを操るのに充分な、リアルタイムのカメラ映像というのが、ありますね」

 と、カン・ロウンが言い、

「これらの映像を見ながら、犯人が、異能力を、現場付近にあった水にこめて操るわけかい?」

 と、ドン・ヨンファが、確認するように言った。

 ただ、そこへ、

『まあ、だけど……、厳密には、最終的には。カメラに写ってない場所で“水の匣”につかまってしまった被害者もいるのだけど?』

 と、イ・ヨンヒが、資料を見ながら気になると、

「ふむ。まあ、そこは、水のキューブの“ドローン”さえ作ってしまえば、それらが、なかば自律的にターゲットを襲う――。そうすると、襲撃の、カメラに写っていない部分も説明できるのではないか」

『何? そこは、都合がいいのね』

「うん。異能力なんて、そんなもん」

『はぁ、何? その、軽いノリ』

 と、補足した妖狐につっこんだ。


 また、話を続けて、 

「――で、ここまでのことを、考えるに……、まあ、監視カメラに関しては、誰でも彼でもアクセスできるわけではないから、何らかのハッキング技術がいるだろうが……、その辺の、小っちゃいことは、気にせずに、だ――」

 と、妖狐が前置きすると、

「いや、気にしろよ」

 と、キム・テヤンと、

『小っちゃいことじゃ、ないでしょが』

 と、イ・ヨンヒがつっこんだ。

 ただ、それらをスルーして、

「あとは、簡単に考えるため、犯人が単独犯であると仮定すれば、だ――、犯人が、おおよそ全ての現場を“見た痕跡”というのが、残っているはずだ」

 と、妖狐が言った。

『“見た痕跡”って、アクセスした記録とか、かな?』

 イム・ジェユルが聞き、

『まあ、そうでしょが』

 と、イ・ヨンヒが答えた。

「ふむ。何らかの形で、電子空間上に、犯人がアクセスした記録が残っているだろう」

「だが、よぅ? そんなもの、簡単に、残すものか? タヌキ」

 妖狐に、キム・テヤンが疑問を投げるも、

「まあ、“我々が今しているような調査をする者”がいることを、もし、犯人が想定しているというならアレだが……、まあ、ふつうは、そんなことなど、想定してないだろう」

「まあ、そうだろうが、」

 と、キム・テヤンが、何か言いたげに相づちし、

「とりあえず、今回は、そんな想定をせずに……、どちらかというと、“一般人的な犯人”というのを仮定して話を進める」

『何よ? その、“一般人的な犯人”って』

 と、イ・ヨンヒが、妖狐のあげたキーワードに引っかかり、

『たまたま、デスノートを拾った夜神ラ〇ト――、みたいな?』

 と、イム・ジェユルが思いつくも、

『いや、夜神ラ〇トのスペックは、一般人的じゃないでしょ』

 と、つっこまれた。

「まあ、夜神〇イトはアレだが……、一般人が、たまたま、何か異能力を手にした、もしくは異能力を発動できるようなアイテムを手にした――、みたいに考えてよかろう。とりあえず、その仮定で調べていくぞ」

「ええ」

 と、カン・ロウンと、

『ああ、分かったよ』

 と、マー・ドンゴンが、仕方なさそうに頷いた。

 妖狐が続けて、

「それで、もし、犯人が、“現場を見た記録”が残っているとすると、だ――、こんな、水の匣事件、十数件の現場すべてを、犯行時もしくは犯行前に見ている人物などというのは、限られるだろう」

『だろうな――。数現場くらいなら、たまたま見ていた人間なんざ、何人か、被るがだろうが……、十数件だとな』

 と、マー・ドンゴンが、同意ぎみに捕捉し、

『まあ、天文学的な確率でしょうね』

 と、イ・ヨンヒも、つけ加えた。

 そうして、

「では――、ちょっと、“見て”みようか?」

 と、妖狐は言うなり、


 ――ポ、ワァァンッ……


 と、身体のまわりを覆うオーラが、強くなる。

“葛葉”の、出力が上がり、インターンネット空間上の、膨大な情報・記録を蒐集せんとする。

 それには、少々時間がかかるわけで、

「……」

「……」

 と、カン・ロウンたちと、

『……』

『……』

 と、マー・ドンゴンたちともに、しばし、ジッ……と待つ。

「妖力とは、そんな都合よいものか」と言いたかったが、とりあえず、黙って見る。

 ――フ、ァァン……

 と、“葛葉”の“つる”と金糸は、光ファイバーにように光っていた。

 情報の蒐集だけでなく、ちゃっかりと警察や調査機関などのコンピュータも拝借しつつ、情報を解析していく。

『まだ、かかるのか?』

 マー・ドンゴンが、聞く。

「ああ……」

 妖狐はうなづきながら、

「我が妖力、けっこう弱体化していてな……、先日、私の居る異世界の住人どもとギャンブルしてて、負けてしまってな」

「「だから、それ、やめればだろが」いいじゃん」」

 と、キム・テヤンとドン・ヨンファのつっこむ声が、途中まで重なる。

『何? ギャンブルで負けたら、減衰する仕様なの? アナタの妖力』

 イ・ヨンヒが聞くと、

「うん」

 と、妖狐の返事に、

「「『『うん、って、軽いな』』」」

 と、こんどは、こちら側とスマホの向こうの声が重なった。

 また、妖狐が、

「ああ、ちなみに……、データ解析には、貴様たちのスパコンやらを、ちゃっかり使わさせてもらっているからな」

『あぁ”?』

 と、マー・ドンゴンが食いつくと、

「まあ、そう言うな。我が妖力、先ほど言ったように、無尽蔵でなくてな……、ギャンブルで負けて、減っているのだ。野獣か、貴様?」

『だから、ギャンブルやめれってんだよ。てか、野獣呼ばわりするなっての、タヌキ』

 と、嫌そうな顔で言った。

 また、

『それで、その、アナタの、“葛葉”だったかしら――? そんな簡単に、犯人らしき人物が、ひっかかるの?』

 と、イ・ヨンヒが効いてきた。

「ふむ。そうだ、な……」

 妖狐は、「もうすこし時間がかかる」と、答えようと思いきや、


 ――ピーン……


「むむ、む――?」

 と、“葛葉”から、“何か”感じ取った。

 その様子に、

『『ん――?』』

 と、マー・ドンゴンとイム・ジェユルが反応し、

『何か、分かったの?』

 と、イ・ヨンヒが、そう直観して聞いたところ、

「ああ……。おおよそ、“絞れた”ぞ」

 妖狐が、ドヤ顔で答えた。 

「おおっ……!」

 カン・ロウンが思わず声をあげ、

「「何、だって――?」」

 と、キム・テヤンとドン・ヨンファが続いた。

「まあ、監視カメラからの画像については、ハッカーの形跡など、ある場合もあるが……、おおむね、“ある人物”が、すべての事件ケースの現場の映像を見ていたり……、また、現場付近の情報を、おそらく、犯行前に品定めするように調べていたみたいだな」

 妖狐が言うと

「「『『――!?』』」」

 と、こちら側のカン・ロウンと、スマホ画面の向こうのマー・ドンゴンたちが、同時に驚愕する。

 その反応を見ながら、

「それで、だ――。“犯人と思しき者”のアクセス……、それは……」

 と、妖狐は間を置いて、


「――日本からだ」


「「「『『『なっ!? 何だって――!?』』』

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