40 仙人や仙女のように、オールドチャイナ風にもスタイリッシュに
(2)
ふたたび場面は戻って、中国の蘇州にて。
まだ、後ろで、警察がアクア・キューブリック社の捜査をしている中、
――ブ、ツッ――
と、カン・ロウンの電話が切れた。
そのまま、
「ふぅ……」
と、一息ついてスマホをしまっていると、キム・テヤンが、
「まったく、何だって? マーのヤツは?」
「何か、ソユンのことを心配して、かけてきてくれたみたいでね」
「ソユンを、心配してだと?」
「ああ……、ニュースで、観たらしくてね、意識不明と報道されていたみたいで」
「けっ……、全然、ピンピンしてんだろうが」
と、舌打ちした。
「まあ、あの時、現場は混乱してたから……、情報が、錯綜してたんだろうな」
カン・ロウンが言った。
そんな、ふたりを見ながら、
「ふむ。のほほんと話しているが、これから、どうするのだ? ゴミ芥ども」
と、妖狐が、サラリとゴミ芥よばわりして聞いてきた。
「あぁ”? 誰が、ゴミだってんだよ?」
イラっとするキム・テヤンと、
「そう、ですね……?」
と、それをスルーして、カン・ロウンが考える仕草をすると、
「このままいけば、現地警察――、中国の警察は、この、“アクア・キューブリック社の線”で、話を進めていくだろう」
「まあ、そいつは、勝手にしてくれよというところだが」
と、妖狐の言葉に、キム・テヤンが答える。
そのようにしながらも、
「しかし、まったく……、何も、手掛かりがつかめないな」
と、カン・ロウンが、改めて言った。
そのまま続けて、
「もし、異能力、魔法のような力だとすれば……、いったい、どんな……?」
と、ひとり言ぎみに自答しつつ、皆にも投げかける。
「何か、できないの? タヌ、キツネさん?」
ドン・ヨンファが、タヌキと呼びそうになるのを訂正しながら、妖狐に聞いてみた。
ざっくりとした問いかけであり、何か文句だったり、嫌味を言われるかと思いきや、
「ふ、む……?」
と、妖狐は、天を仰ぐしぐさをする。
ひと呼吸、間をおいて、
「――まあ、そしたら、こっちにいる妖怪、魔人でも調べてやるか」
と、言うとほぼ同時、
――ふ、わり……
と、宙に浮いてみせた。
床から、およそ5、6メートルほどの高さのところに、まるで仙人や仙女のように、オールドチャイナ風にもスタイリッシュに漂う妖狐。
その姿に、
「「お、おぉッ――!?」」
「「何だ、何だぁッ――!?」」
などと、警察たちから驚きの声があがる。
まあ、妖狐と分かったうえでも、このように視覚的にも分かりやすく、大胆な事をされれば、驚くのも無理はないだろう。
また、そこへ、
「おいおい? こっちの妖怪、魔人を調べるったぁ、」
「何か? 目ぼしい者でも、いるのですか?」
と、キム・テヤンとカン・ロウンが、聞いてきた。
妖狐と面識があり、また、これまでにも“超常的な存在”というのを調べてきたことから、空中を浮いて見せるくらいでは驚くことはない。
それはさておき、
「――さ、あ? “それ”は分からんが……、何か、ざっくり水系の力、能力をもつヤツを調べれば……、何か、調査をすすめる手掛かりならないか、と思ってな」
と、妖狐が、先の問いに答える。
「「何だよ、ざっくり水系って、」」
とここは、キム・テヤンとドン・ヨンファのツッコミがそろう。
また、妖狐が続けて、
「それに、私は、数十、数百キロ 短時間で移動して調べることができるようが、貴様たちは無理だろう」
「ま、あ」
と、ドン・ヨンファが、「どゆこと?」の顔をしてうなづき、
「てか、そんな移動して、何すんだよ?」
と、キム・テヤンが、「どゆこと?」と聞くも、
「まあ、いい……、貴様たちは貴様たちのほうでも、何か調べておくか、考えておくのだ、ゴミ芥ども」
と、妖狐は聞いてないのか、答えるのが面倒くさいのか、ふたりの問いをはぐらかす。
そうしながらも、
――ふ、わり――
と、滞空していた妖狐は、動き出す。
どんどん、高く浮いていく。
そうして、天井高のある大空間の天井へと達すると、
――ぽ、ちゃん……
と、天井が、まるで何か落として水しぶきを上げる水面のように、“エフェクト”する。
まるで、CGのような、超常的光景――
妖狐は、水面からダイビングするように、天井に消えて行ってしまった。




