38 てか、どっちの味方だよ? こいつは……
(4)
引き続き、アクア・キューブリック社研究所にて。
妖狐とカン・ロウンたちは、警察たちに交じりながら調査を続けていた。
「まあ、先ほどは、助けてくれたことに礼を言わないとな」
「ああ……、アンタの、妖力というものが無ければ、我々は、やられていたからな」
刑事たちが、妖狐に礼を言った。
「ふむ。そのとおりだ」
妖狐が、ドヤ顔をする。
妖狐の、“タヌキ化かしの木の葉”――、これによって侵入したものの、妖術を解いてしまったわけであるが、水のキューブに襲われている警察たちを助けたこともあり、調査に加わることを大目に見てもらったわけである。
そうして、
「しかし、だ――」
と、ベテラン刑事のひとりが、
――キ、リッ――
と、アクア・キューブリック社がわの人間たちのほうを見た。
その視線に、
「「……!?」」
「(うっ――!?)」
などと、アクア・キューブリック社がわの人間たちは強張った。
刑事が、
「さきほど、水のキューブが攻撃を向けたのは、アンタたち、アクア・キューブリック社の人間は含まれず……、我々、警察の人間に向けてだけだ」
と、言って、
「これが、どういうことを意味するか――?」
「おい? 俺たちを、殺そうとしたんじゃないのか?」
「自分たちが事件に関係あることがバレそうになったから、我々を、殺そうとしたんだろう?」
と、さらに、他の刑事たちも加わる。
「そ、そんなっ――!?」
「ち、ちがいますよ!!」
アクア・キューブリック社がわは、否定しようとするも、
「違うといっても、な?」
「では、どうして? 貴方たちには、いっさい、水のキューブは襲ってこなかったのですか?」
と、刑事たちは、相変わらず問い詰めようとする。
まあ、そこは当然だろう。
すると、
「まあ、待て――」
とここで、妖狐の神楽坂文が、両者の間に割って入った。
「――?」
「あ、あ”……?」
と、刑事たちは、怪訝な顔をした。
妖狐が、
「まあ、追い込まれた悪役が、後先も考えずにほにゃらら――、というのは、出来の悪い創作のお決まりだが……、仮に、我々が来ることなく、もし、貴様たちがここで全滅したとしても……、そのあとの警察の追跡を、より一層強化するだけであろうし……、また、罪も、余計に重くなるだけだろう」
「まあ……、そうなろう、な」
と、刑事のひとりが、相づちをし、
「ふむ。“それくらいのこと”など、ここの連中――、いちおうは研究者という、頭の良く、論理的思考のできる人間が、考えられないわけはないだろう」
「そ、そうですよ……!」
「それに、研究者じゃなくても、それくらいのことは、考えるでしょう」
と、アクア・キューブリック社がわの研究者たちが、妖狐を援護するも、
「ふ、む……? ただ、それも、“アレ”だな……? 個々人としては、頭が良く、常識的なことを考えることができていたとしても、だ……、時に、人間というのは集団となると、非合理的で、とんでもない決断、選択をしてしまうというバグがあるではないか? ゆえに、今回も、その可能性が微レ存――?」
との、妖狐の言葉に、
「「「……」」」
と、刑事たちと、
「「「……」」」
と、アクア・キューブリック社がわの人間たちと、それから、
「「「……」」」
と、カン・ロウンたちの3人という、三者がそろって沈黙した。
…………、…………
チーン……とした、沈黙がただよいながらも、
(((((いや、何? 微レ存、って……? てか、どっちの味方だよ? こいつは……)))))
と、この場にいる一同、つっこむ心の声が一致した。軽く、サイコパスなところのある妖狐に“引いて”いた。
本題に戻って、
「それとも……、タヌ、神楽坂さん」
と、カン・ロウンが、妖狐に話しかけようとすると、
「ふむ。何だ? というか、いま、タヌキと言いかけだろ? 貴様」
「え、ええ、すみません」
「まあ、よい。続けるのだ」
と、妖狐はつっこみながらも、
「は、はい……、その、今回の、警察だけが水のキューブに襲撃されたというのは、別の第三者が、アクア・キューブリック社に疑惑の目を向けさせるために行った――、とかのパターンは、考えられないですかね?」
「そっ、そうですよ、」
「現に、我々のことを、よく思ってないライバル企業は、ありますし」
と、カン・ロウンの言葉を聞いて、アクア・キューブリック社がわの人間たちは同調する。
「まあ、それくらいの可能性は……、常識の範囲内で、考えてもよいケースではないか? 貴様たち、警察としても」
妖狐が言って、
「まあ、な……」
と、そこは刑事たちも、「確かに」とうなづいた。
「ただ……、まあ、そうした、“常識的なケース”を考えるべき貴様たち、警察とと違って、だ――」
妖狐は、こんどはカン・ロウンたち三人のほうを向いて、
「いちおう、人智を超えた、奇妙なケースというのを考えるべきなのが……、貴様たち、なのではないか?」
「ま、まあ……、それは、そうです」
と、カン・ロウンも、「確かに」とうなづいた。
その横から、
「それは、分かったけどよぅ……、お前は、どんな可能性ってのを、考えてるんだ? 怪人か? それとも、邪神とかいう類のヤツか?」
と、キム・テヤンは、妖狐に質問で返した。
「ふ、む……」
妖狐は、考えるような仕草で、
「それらの可能性は、私も考えたのだが……、微かに、何か、そのような痕跡程度のものはあるのだが……」
「それは、瘴気というものですか……?」
と、カン・ロウンが聞く。
「いや、それとは違う……、異能力や呪詛の、“情報”の、ほんの微かな“痕跡”ていどのものは感じるのだが……」
と、妖狐が、言葉を選んでいると、
「異能力や、呪詛の、痕跡だとぉ……?」
と、刑事が、露骨に胡散くさがる顔をした。
「ああ……。“それらの力”というのは、まだ、貴様たち人間の科学が解明していない法則や力、エネルギーを使用していてな……、その痕跡というのは、いちおう、妖狐である私には分かるのだ」
「フン、胡散くせぇ」
答える妖狐を、刑事は鼻で笑って一蹴する。
まあ、そこは、互いに話が通じないのでスルーして、
「その……、微かな“痕跡”といったけど……、痕跡があるだけで、犯人の気配なんてのは、無いのかい?」
ドン・ヨンファが聞くと、
「まあ、“そいつ”が分かれってれば、苦労せんだろが。さすがに、このタヌキも、先に言ってくるだろ」
と、キム・テヤンが言い、
「ふむ。そのとおりだ……。この現場周辺や、すこし離れたところにも、残念ながら、犯人と思しき気配はないのだ」
と、妖狐が答えた。
「ちなみに、それは、どれくらいの距離とか、ですか?」
カン・ロウンが聞いた。
まあ、時には、スナイパーが狙うような距離で発動する異能力もある。
また、魔法や呪詛ともなると、もう少し遠い距離でも、力を及ぼすことが想像できるだろう。
「まあ、数十キロくらい、か……? いちおう、異能力や、呪詛の類の力を“使った”というの分かる。まあ、巧妙欺瞞したり、ものによっては、私でも検知できないものはあるが……」
妖狐が答えた。
一連の、話すのを聞いて、
「何だ、そりゃ?」
「話を聞いていたかぎり、お前たち、異能力者さまたちでも、結局分かんねぇってことだろ」
と、刑事たちは「やれやれ」と、小馬鹿にするように言った。
その態度に、
「ちっ、いちいち、嫌味っぽく言いやがって」
と、キム・テヤンが舌打ちした。
「まあ、どちらにしせよ、このアクア・キューブリック社に関して、いろいろ調査、捜査は進めさせてもらいますが」
女刑事が言い、
「どうぞ。それは、もちろんだ」
と、妖狐が、答えた。
そのようにしていると、
――ピリリン♪ ピリリン……♪
と、電話が鳴った。
「「――?」」
「「あ、ん――?」」
警察たち、カン・ロウンたちの両者とも、反応した。
「誰の、電話だ?」
刑事が言うも、ほかの警察がわの人間たちは反応することない。
すくなくとも、警察がわの人間の電話ではなさそうで、
「ん――? ロウンの電話か?」
とここで、キム・テヤンが、
――スッ……
と、スマホを取り出したカン・ロウンの動きに気がついた。
「あ、あ……」
カン・ロウンは、ゆっくりと頷きながら、
――ピリリン♪ ピリリン……♪
と、鳴り続けるスマホの画面を見てみる。
「……」
着信の主を確認するカン・ロウンに、
「おい、誰からだよ?」
と、キム・テヤンが、せっかちに聞く。
おおかた、病院にいるパク・ソユンからだろうと思いきや、
「――ん? マー、さん?」
「「――!?」」
と、意外な着信の相手に、キム・テヤンとドン・ヨンファが一瞬、驚いた。
「へ――?」
「マーから、だと……?」




