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妖狐、神楽坂文のコンサル譚09 【水の匣】  作者: 非常口どん八
第七章 進展と違和感

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38 てか、どっちの味方だよ? こいつは……




          (4)




 引き続き、アクア・キューブリック社研究所にて。

 妖狐とカン・ロウンたちは、警察たちに交じりながら調査を続けていた。

「まあ、先ほどは、助けてくれたことに礼を言わないとな」

「ああ……、アンタの、妖力というものが無ければ、我々は、やられていたからな」

 刑事たちが、妖狐に礼を言った。

「ふむ。そのとおりだ」

 妖狐が、ドヤ顔をする。

 妖狐の、“タヌキ化かしの木の葉”――、これによって侵入したものの、妖術を解いてしまったわけであるが、水のキューブに襲われている警察たちを助けたこともあり、調査に加わることを大目に見てもらったわけである。

 そうして、

「しかし、だ――」

 と、ベテラン刑事のひとりが、

 ――キ、リッ――

 と、アクア・キューブリック社がわの人間たちのほうを見た。

 その視線に、

「「……!?」」

「(うっ――!?)」

 などと、アクア・キューブリック社がわの人間たちは強張った。

 刑事が、

「さきほど、水のキューブが攻撃を向けたのは、アンタたち、アクア・キューブリック社の人間は含まれず……、我々、警察の人間に向けてだけだ」

 と、言って、

「これが、どういうことを意味するか――?」

「おい? 俺たちを、殺そうとしたんじゃないのか?」

「自分たちが事件に関係あることがバレそうになったから、我々を、殺そうとしたんだろう?」

 と、さらに、他の刑事たちも加わる。

「そ、そんなっ――!?」

「ち、ちがいますよ!!」

 アクア・キューブリック社がわは、否定しようとするも、

「違うといっても、な?」

「では、どうして? 貴方たちには、いっさい、水のキューブは襲ってこなかったのですか?」

 と、刑事たちは、相変わらず問い詰めようとする。

 まあ、そこは当然だろう。

 すると、


「まあ、待て――」


 とここで、妖狐の神楽坂文が、両者の間に割って入った。

「――?」

「あ、あ”……?」

 と、刑事たちは、怪訝な顔をした。

 妖狐が、

「まあ、追い込まれた悪役が、後先も考えずにほにゃらら――、というのは、出来の悪い創作のお決まりだが……、仮に、我々が来ることなく、もし、貴様たちがここで全滅したとしても……、そのあとの警察の追跡を、より一層強化するだけであろうし……、また、罪も、余計に重くなるだけだろう」

「まあ……、そうなろう、な」

 と、刑事のひとりが、相づちをし、

「ふむ。“それくらいのこと”など、ここの連中――、いちおうは研究者という、頭の良く、論理的思考のできる人間が、考えられないわけはないだろう」

「そ、そうですよ……!」

「それに、研究者じゃなくても、それくらいのことは、考えるでしょう」

 と、アクア・キューブリック社がわの研究者たちが、妖狐を援護するも、

「ふ、む……? ただ、それも、“アレ”だな……? 個々人としては、頭が良く、常識的なことを考えることができていたとしても、だ……、時に、人間というのは集団となると、非合理的で、とんでもない決断、選択をしてしまうというバグがあるではないか? ゆえに、今回も、その可能性が微レ存――?」

 との、妖狐の言葉に、

「「「……」」」

 と、刑事たちと、

「「「……」」」

 と、アクア・キューブリック社がわの人間たちと、それから、

「「「……」」」

 と、カン・ロウンたちの3人という、三者がそろって沈黙した。


 …………、…………


 チーン……とした、沈黙がただよいながらも、


(((((いや、何? 微レ存、って……? てか、どっちの味方だよ? こいつは……)))))


 と、この場にいる一同、つっこむ心の声が一致した。軽く、サイコパスなところのある妖狐に“引いて”いた。

 本題に戻って、

「それとも……、タヌ、神楽坂さん」

 と、カン・ロウンが、妖狐に話しかけようとすると、

「ふむ。何だ? というか、いま、タヌキと言いかけだろ? 貴様」

「え、ええ、すみません」

「まあ、よい。続けるのだ」

 と、妖狐はつっこみながらも、

「は、はい……、その、今回の、警察だけが水のキューブに襲撃されたというのは、別の第三者が、アクア・キューブリック社に疑惑の目を向けさせるために行った――、とかのパターンは、考えられないですかね?」

「そっ、そうですよ、」

「現に、我々のことを、よく思ってないライバル企業は、ありますし」

 と、カン・ロウンの言葉を聞いて、アクア・キューブリック社がわの人間たちは同調する。

「まあ、それくらいの可能性は……、常識の範囲内で、考えてもよいケースではないか? 貴様たち、警察としても」

 妖狐が言って、

「まあ、な……」

 と、そこは刑事たちも、「確かに」とうなづいた。

「ただ……、まあ、そうした、“常識的なケース”を考えるべき貴様たち、警察とと違って、だ――」

 妖狐は、こんどはカン・ロウンたち三人のほうを向いて、

「いちおう、人智を超えた、奇妙なケースというのを考えるべきなのが……、貴様たち、なのではないか?」

「ま、まあ……、それは、そうです」

 と、カン・ロウンも、「確かに」とうなづいた。

 その横から、

「それは、分かったけどよぅ……、お前は、どんな可能性ってのを、考えてるんだ? 怪人か? それとも、邪神とかいう類のヤツか?」

 と、キム・テヤンは、妖狐に質問で返した。

「ふ、む……」

 妖狐は、考えるような仕草で、

「それらの可能性は、私も考えたのだが……、微かに、何か、そのような痕跡程度のものはあるのだが……」

「それは、瘴気というものですか……?」

 と、カン・ロウンが聞く。

「いや、それとは違う……、異能力や呪詛の、“情報”の、ほんの微かな“痕跡”ていどのものは感じるのだが……」

 と、妖狐が、言葉を選んでいると、

「異能力や、呪詛の、痕跡だとぉ……?」

 と、刑事が、露骨に胡散くさがる顔をした。

「ああ……。“それらの力”というのは、まだ、貴様たち人間の科学が解明していない法則や力、エネルギーを使用していてな……、その痕跡というのは、いちおう、妖狐である私には分かるのだ」

「フン、胡散くせぇ」

 答える妖狐を、刑事は鼻で笑って一蹴する。

 まあ、そこは、互いに話が通じないのでスルーして、

「その……、微かな“痕跡”といったけど……、痕跡があるだけで、犯人の気配なんてのは、無いのかい?」

 ドン・ヨンファが聞くと、

「まあ、“そいつ”が分かれってれば、苦労せんだろが。さすがに、このタヌキも、先に言ってくるだろ」

 と、キム・テヤンが言い、

「ふむ。そのとおりだ……。この現場周辺や、すこし離れたところにも、残念ながら、犯人と思しき気配はないのだ」

 と、妖狐が答えた。

「ちなみに、それは、どれくらいの距離とか、ですか?」

 カン・ロウンが聞いた。

 まあ、時には、スナイパーが狙うような距離で発動する異能力もある。

 また、魔法や呪詛ともなると、もう少し遠い距離でも、力を及ぼすことが想像できるだろう。

「まあ、数十キロくらい、か……? いちおう、異能力や、呪詛の類の力を“使った”というの分かる。まあ、巧妙欺瞞したり、ものによっては、私でも検知できないものはあるが……」

 妖狐が答えた。

 一連の、話すのを聞いて、

「何だ、そりゃ?」

「話を聞いていたかぎり、お前たち、異能力者さまたちでも、結局分かんねぇってことだろ」

 と、刑事たちは「やれやれ」と、小馬鹿にするように言った。

 その態度に、

「ちっ、いちいち、嫌味っぽく言いやがって」

 と、キム・テヤンが舌打ちした。

「まあ、どちらにしせよ、このアクア・キューブリック社に関して、いろいろ調査、捜査は進めさせてもらいますが」

 女刑事が言い、

「どうぞ。それは、もちろんだ」

 と、妖狐が、答えた。

 そのようにしていると、


 ――ピリリン♪ ピリリン……♪


 と、電話が鳴った。

「「――?」」

「「あ、ん――?」」

 警察たち、カン・ロウンたちの両者とも、反応した。

「誰の、電話だ?」

 刑事が言うも、ほかの警察がわの人間たちは反応することない。

 すくなくとも、警察がわの人間の電話ではなさそうで、

「ん――? ロウンの電話か?」

 とここで、キム・テヤンが、

 ――スッ……

 と、スマホを取り出したカン・ロウンの動きに気がついた。

「あ、あ……」

 カン・ロウンは、ゆっくりと頷きながら、

 ――ピリリン♪ ピリリン……♪

 と、鳴り続けるスマホの画面を見てみる。

「……」

 着信の主を確認するカン・ロウンに、

「おい、誰からだよ?」

 と、キム・テヤンが、せっかちに聞く。

 おおかた、病院にいるパク・ソユンからだろうと思いきや、


「――ん? マー、さん?」


「「――!?」」

 と、意外な着信の相手に、キム・テヤンとドン・ヨンファが一瞬、驚いた。

「へ――?」

「マーから、だと……?」

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