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【水の匣】  作者: 石田善二郎
第七章 進展と違和感

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33/37

33 いや、“コン”じゃねぇよ……。いや、キツネだから、コンでいいのか……




          (1)




 そのまま、妖狐の妖具もあってか、三人はシレッと調査をし続ける。

 警察たちは、水のディスプレイを担当していたスタッフたち、現場に来ていたアクア・キューブリック社の男に尋問をしていた。

 とくに、パク・ソユンがDJプレイをしている最中に襲われた場面について、

「何か、操作をしたわけではないのだな?」

 と、刑事が聞くと、

「え、ええ、」

「あのような、ドローンの群れのように襲いかかるなんて……、今の技術的には難しいですよ」

 と、担当スタッフと、アクア・キューブリック社の男が答えた。

「はぁ、」

 刑事のひとりが相づちしつつ、

「“今の”、だと――? それは、“そういう技術”を開発しているということだろう」

 と、別の刑事が、食いついて尋問を続け、

「我々は、貴社の技術に関しても、調査しているのですよ」

 と、女刑事も、アクア・キューブリック社の男に詰め寄った。

 そんな、刑事たちのプレッシャーに、

「い、いえ、そんなっ……!」

 と、男は慌てながらも否定する。


 また、警察は、彼らが用いたパソコンも調べていた。

 科学分析チームの者が、

「ここから、イベント中の、水のディスプレイの制御記録を見たところ……、何か、怪しい操作をした形跡や、外部から、ハッキングされたかのようなものは、ありませんでしたね」

 と、報告した。

 手ごたえのない報告に、

「はぁ、」

 刑事が、とりあえずの相づちした。

 そこへ、

「ふむ? とりあえず……、貴方がたは、この“水のディスプレイ”――、“それを構成するもの”が、一連のケースで用いられた――と、考えているのですか?」

 と、妖狐が、間に入って質問した。

「ま、あ……」

「今回の件に関しては、“そう”だと考えるのが、自然な線になるんじゃないか」

 刑事が、曖昧そうに答える。

 妖狐は、

 ――ボ、ワン……

 と、妖力を以ってか――、ホログラフィを出現させ、今回の水のディスプレイの

技術資料を空中に表示してみせる。

「「「お、おっ……!?」」」

 刑事たちは、すこし驚き、

「もしかして、妖術……、とかですか?」

 と、聞いた。

「コン」

 妖狐は、うなづく。

 それを聞いて、


((((いや、“コン”じゃねぇよ……。いや、キツネだから、コンでいいのか……))))


 と、何人かが心の中でつっこむんだが、よく考えると、特につっこむことではないので、そのまま黙っておいた。

 そうして、

「水のディスプレイを構成していたのは、球体コアと、周囲を覆う、ゲルだったり触手と、なっているな――?」

 と、妖狐がホログラフィを皆に見せつつ、確認した。

「ええ……」

 アクア・キューブリック社の男が、返事した。

 妖狐が続けて、

「今回のケースでは、“これ”が、そのまま“水の匣”へとなっていたのだが……、これまでに、中国内で起きた、水の匣の他のケースでは、どうなのだ?」

 と、こんどは警察たちに、特に科学分析チームの面々に聞いた。

「そう、ですね……」

「さすがに、“こんなもの”は、見つかった記録はないです」

 と、科学分析チームたちは答えた。

 すなわち、今回以外のケースでは、この水のディスプレイのようなコアだったりゲルなんていうものは無かったということである。

 そんな、助け船を出すような妖狐の話を聞いて、

「そ、そうでしょ……!」

「ですから、今回の件は、わが社以外の何者かが――」

 と、アクア・キューブリック社の者たちは、弁解するものの、


「ふむ……、――とは言え、待つのだ」


「「へ――?」」

 とここで、せっかく擁護する材料が出てきたのに、妖狐は“待った”をかけた。

「もし、他の水の匣のケースでも、この水のディスプレイと同様に、コアとゲルで構成された“水のキューブ”が用いられているとして……、それらの材料が、“時間とともに分解されてしまう”――、といったものであれば、どうなのだ?」

 妖狐の仮説に、

「「「時間とともに、分解するだと――?」」」

 と、警察たち面々が、声をそろえた。

 また、妖狐は、

「もし、“そんな物質”というのを……、貴方がたの会社、アクア・キューブリック社、もしくは会社のなかの一部の人間が、研究しているとすれば……」

 と、アクア・キューブリック社の男たちのほうを、意味深に見た。

 その、妖狐の視線に

「うっ……」

「――!?」

 と、男たちは反応してしまう。

 そこへ、

「おう、」

「その可能性があるなら、アンタたちの会社が関わっている可能性も、否定できねぇな」

 と、刑事たちが、またアクア・キューブリック社の男たちに詰めよった。

「そっ、」

「それは、」

 男たちふたりは、慌てたようすで困惑する。

 なお、そんな、助け船を出したかと思えば気まぐれに手のひらを返す妖狐に、

「(おいおい、)」

「(どっちの、味方だよ……?)」

「(サイコかよ、)」

 と、何人かは顔を歪め、人間性を疑うように、軽くひいた目で見ていた。

 まあ、人間ではないのだが……


 またここで、

「ただ……、その場合だと、水の匣が出現してから、しばらくの間、“匣の形”を保ち続けていることの説明は、どうなるのだ?」

 と、キム・テヤンが、問いを投げかけた。

 事件の多くのケースでは、水の匣が出現してから、数日だったり一週間以上も、その形を保っていたりするのである。

「そ、そうです、」

 アクア・キューブリック社の男が、また助け船のような言葉に飛びつき、それに続けて、

「うん。それな」

 と、妖狐が、うなづいた。

「「『それな』じゃねぇよ」」

 キム・テヤンと刑事のツッコミがはいる。

 また、キム・テヤンが、

「もし、“分解されてしまうようなナニカ”が用いられるならば、それと同時に、“匣の形”を保てなくなるんじゃないか?」

 と、先の問いの捕捉をした。

「これまでに、警察が調べたサンプルは、すべて、“匣の状態の水”からとったサンプルであるな?」

 妖狐が、科学分析チームのほうを見て、確認する。

「ええ」

 と、科学分析チームの男がうなづいた。

 また、妖狐が続けて、

「それらのサンプルの中で、何か、“特殊な成分”というのは、見つかっていないのか?」

「いえ、それも……、今回の、アクア・キューブリック社の製品のような成分というのは出てこないのです。まあ、仮に、成分がふくまれる量がかなり微量であり……、なおかつ、その“分解される”というのが、分析する前に、まるで証拠を消すように行われるのであれば、話は変わるかもしれませんが――」

「ふむ……」

 妖狐は、相づちした。

 まあ、微妙な可能性ではあるが、否定はできない。

 たまに、異能力とハイテク、化学物質を組み合わせることで、“このようなこと”も不可能ではないからである。

 さらに、妖狐が、

「あとは、今回のように……、“水の匣”が形成されるには、水のキューブがドローンのように動き、合体して一体となるなど――、“ある程度のエネルギーの供給”というのが、必要であろう?」

「まあ、」

「そう、ですね」

 と、科学分析チームは相づちしながら、

「この会場なら、“そうしたエネルギーの供給”というのは出来るだろうが……、これまでの事件のケースでは、そう簡単には行かないだろう?」

「まあ、それは、」

「仮に、現場周辺から……、例えば、ワイヤレス送電などで水のキューブ群にエネルギーを与えるなどを考えてみても、そんなに簡単にいくか?」

「そ、そうですね、」

「そう考えると……、この、アクア・キューブリック社の関与が考られるというのも、この会場だけの、特殊なケースではないのか?」

「は、はぁ、」

 と、淡々と問いを投げかけてくる妖狐に圧される形で、科学分析チームのメンツは、とりあえずの相づちを続けるという構図が続く。

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