31 いや、何故ぽよ?
(3)
引き続き、如水イベントの会場にて――
“水の匣”に、出演者のDJソウこと、パク・ソユンが襲撃されるという衝撃的な事件がおこってしまったから、会場はイベントどころではなくなっていた。
警察や関係者たちが入り、ただちに、捜査・調査を行っていた。
それで、カン・ロウンたちSPY探偵団の面々はというと、ちゃっかりと、警察たちが調査するのを眺めていた。
現場に、ホン・ドヒョンたちイベント関係者とともにいたこと、それからパク・ソユン本人が“水の匣”に閉じ込められた被害者であり、なおかつ、そのパク・ソユンの救出にカン・ロウンたちが尽力したこともあり、現場から締め出されることもなかったわけである。
なお、そのパク・ソユンであるが、レスキューや、現場に駆けつけた医師、救急隊員たちから、
「さあ、行きますよ」
「は、ぁ……? いや、私は、大丈夫なんだけど、さ?」
「大丈夫って、ねぇ、」
「念のため、検査が必要ですから」
などと、救急車に乗って入院するように促させていた。
まあ、ケロッとはしているものの、水の匣の中に――、すなわち、水中に45分間も閉じ込められたいたわけである。
念のため入院させ、検査を受けさせようというのは、当然といえば当然のはなしだろう。
ただ、案の定というか、
「いま、大丈夫だからって、検査してみないと分かんないでしょ」
「とにかく、病院に連れて行くからな」
「いや、何故ぽよ?」
と、パク・ソユンはゴネていた。
それを見て、
「いや、『何故ぽよ』じゃ、ねぇってんだよ」
「そうだよ」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファも、つっこみ、
「まあ、ここは無理をしないで……、念のため、すこし様子を見よう、ソユン」
「はぁ、」
と、カン・ロウンも説得しようとした。
「――で? その間、どうするわけ?」
パク・ソユンが、聞いた。
「どうするって……、とりあえず、俺たち三人で、続けて調べることになるだろうな。何だ? 心配でもしてくれてんのか?」
キム・テヤンが答えつつ、聞き返し、
「いや、別に」
「いや、別にって、」
「まあ、でも……、もしかすると、調べてる途中で、さ? アンタたちも、水の匣に襲われたとき、どうするわけ? さっき見た感じじゃ、ヨンファとテヤンの異能力も、効かなかった感じじゃん」
「まあ、確かに」
ドン・ヨンファが、そこは認め、
「てか? お前? あの、水の匣ってか、水のキューブか――? に、襲撃されたとき、避けたり、何か対処できなかったが……、“何か”、あっただろ?」
と、キム・テヤンが思い出して、聞いてみた。
「うん」
パク・ソユンは、うなづきながら、
「何か、さ? ヘッドホンから、謎の声がしたんだけど」
「「「ヘッドホンから、声だと――?」」だって――?」
三人の声が重なる。
「うん。それで、何か、また、人質を取る系のこと言われてさ」
「ああ、それで、動けなかったわけか」
「そっ、」
と、キム・テヤンに、またパク・ソユンがうなづく。
また、カン・ロウンが、
「まあ、その、謎の声の主についても、気になるが……、それはいったん置いておき……、確かに、万が一、もし自分たちが水のキューブに襲撃された際に、どうするのかというのも、考えておいたほうがいいだろうな」
「そうだね」
と、相づちするドン・ヨンファに、
「とりあえず……、タヌ――、神楽坂さんにも、このまま、協力を続けてもらえないか、相談してみるが」
「はぁ? アイツも?」
「けっ、あのドラえもん野郎と、調査を続けんのかよ」
「まあ、そう言うな、ふたりとも」
と、妖狐の名に顔をしかめるパク・ソユンとキム・テヤンを、カン・ロウンは宥めつつ、
「神楽坂さんと、あの、君のDJ仲間の子の協力が無ければ……、ソユンの救出は、不可能だったかもしれないじゃないか」
と、すこし離れたところにいる、まだ着ているオレンジと黒の衣装の目立つアクティブクラブを指して言った。
また、カン・ロウンが、さらに続けてパク・ソユンに質問する。
「ちなみに、だけど……、ソユン? この、水の中に――、“水の匣”の中にいて、何か、気になることは無かったかい?」
「気になる、ことねぇ……? まあ、半分、寝ていたようなものだったし……」
パク・ソユンは、空を仰ぎつつ思い出そうとすると、
「寝て、た?」
「寝てた、だと――?」
と、ドン・ヨンファとキム・テヤンの声が、ほぼ同じタイミングで重なりながら、
「そいつは、体力を温存して的な――、ということか?」
「まあ、そうかもしんない」
と、続けて聞いたキム・テヤンに、パク・ソユンは答えた。
また、ふたたび、カン・ロウンも会話に入って、
「そう、だな……? それ以外は、その、普通の水みたいな感じだったか? それとも、何か異質な水だったり、異能力のような力とかは、感じたりしなかったか? ソユン」
と、質問した。
「う~、ん~……? 何とも、言えないかしら?」
パク・ソユンは、また思い出そうとする。
「何とも言えない、だと……?」
と、キム・テヤンが聞き返すと、
「あ、あ……? ただ、何か、鼻からさ? すっごい、入ってくる感じがした――、ってのは、あるかな」
「鼻から入ってくるって……、まあ、そりゃ、水の中で溺れる時って、そうじゃねぇのか?」
「まあ、そうかもしんないけど、さ、」
と、パク・ソユンとキム・テヤンが、そこまで話していると、
「ほら、行きますよ」
「話してないで、早くしてください」
と、救急隊員らが急かしてきた。
「はぁ、仕方ないわね」
パク・ソユンが、やれやれと言いながら、
「ああ? ちなみに、さ? アンタたちに、その、もし水の匣に襲われた場合のアドバイスがあるんだけど?」
と、話を少しもどして、
「アドバイス、だと――?」
「それは、どんなアドバイスだい? ソユン?」
と、キム・テヤンとカン・ロウンのふたりが聞き返した。
すると、
「うん。それは、『ぽよ』って息をすることで―「「――いや、おめぇにしかできねぇよ」」
と、答えるパク・ソユンに、キム・テヤンとドン・ヨンファが声を重ねてつっこんだ。
「ぽよ」
パク・ソユンが、また『ぽよ』で答えると、
「「いや、ぽよ、じゃなくて、」」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファが、ふたたびつっこんだ。
また、そこへ、
「さぁ? もう、いいですか?」
「気が済んだなら、行きますよ」
「貴方たちも、これから救急搬送しようとする人に、ずっと話しかけないでください」
と、待たされて痺れをきらしたのか、救急隊員が再度急かしてきた。
「いや、だから、大丈夫だから、さ? いく必要が、あるわけ?」
「いや、念のため 来てください」
「そうですよ。それに、40分も水の中にいて溺れなかった貴方は、調べるのに貴重なサン――、いや、貴重な患者さんですよ」
「いま、サンプルとか言おうとしたでしょ?」
と、パク・ソユンはつっこんだ。
そんな感じで、
――ドタ、ドタ――
と、騒がしくしながらも、
「だから、ちょっ、よすぽよ」
「もう、いい加減にして、来なさい」
「何なんですか? 『ぽよ』って」
「じっとしろぉ、まえ」
などと、パク・ソユンは連行されるように、連れていかれてしまった。




