表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【水の匣】  作者: 石田善二郎
第六章 調査、如水会場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/37

29 まるで、そのための右手、そのためのヤシの木のように――




          (1)




 気を取りなおして、パク・ソユンの救出を再開する。

 この時点で、すでに5分か10分は、時間を無駄にしている。

 まあ、おそらく、『ワンチャン、パク・ソユンなら死なないから、まあいっか――』といった具合であるが、これは人間として、あまりよろしくない。

 そうして、

 ――ス、タッ――

 と、アクティブ・クラブが、水の匣を前にして立った。

『おい、何かオレンジのヤツ――、いや、何かオレンジ色のゴミカス』

 妖狐が呼びかける。

「ゴミカス、て……」

 アクティブ・クラブが、ゴミカス呼ばわりに“訂正”され、シュールな顔で引きつりそうになりながらも、

「……」

 と、気持ちを切り替えて、集中し、


 ――スッ……


 と、“水の匣”の手前、2メートルほどの空間に手を伸ばした。

 すると、


 ――ジャッ、キーンッ――!!


 と、虚空へ伸ばした腕は、あろうことか――!? 1メートル以上の金属質の――、大きなハサミへと変化をした!!

 オレンジと黒の、何か複合素材のようなハサミ―― 

 それを見て、

「う、うぉっ……」 

 と、DJ仲間の、オイスターが驚いていた。

「な、何だ? そのハサミは……?」

「あ、あ……、これ、は、」

 と、異能力で具現化した本人、アクティブ・クラブは言葉をつまらせる。

 まさかの、異能力を発動させることになるとは、本人も想定していなかったのだろう。

 すると、

『ふむ? これは、“アレ”ではないか――? あらゆるものを――、万物を“切る”ことのできる、ハサミ的な』

 と、妖狐が、アクティブ・クラブ本人に代わって答えた。

「あっ……、そ、そのとおりです! タヌキさん」

『タヌキじゃなくて、キツネな。貴様も、わざとだろ』

 妖狐は、またしてもタヌキ呼ばわりされつつも、もはや諦めの境地でつっこんだ。

 そうして、アクティブ・クラブが、


 ――ジャッ、キンッ……!!


 と、改めて、ハサミをかまえる。

 アクティブ・クラブは、皆の方を向いて、

「これで、切っていいの――?」

「「「「「「いやッ!? 切る以外の何があるんだよッ!! そのためのハサミだろッ――!!」」」」」」

 と、皆から、声を合わせてつっこまれる。

 まるで、そのための右手、そのためのヤシの木のように――

 それはさておき、アクティブ・クラブは“匣”に近づく。

 すると、


 ――ビ、ィィンッ――!!


 と、ハサミの刃は、切る対象である“匣”の大きさに合わせて、大きく伸びていく!!

「「おぉッ――!!」」

「「のっ、伸びたぁー!?」」

 数人の、歓声のように驚く声がする中、すでにアクティブ・クラブは


 ――ぐ、わっ――!!


 と、ハサミを広げ、切る動作に入る。

 そして、


 ――ググ、グ……


 と、刃を閉じ、“水の匣”を切ろうとした。

 だが、

った――!?」

 と、思わぬ抵抗感に声をあげる。

 やはり、刃から伝わってくるのは、まるでハリボー・グミのような反発――

 そんな、抵抗がありながらも、


 ――ス、パッ――!!!


 と、何とかハサミは閉じ、水の立体が切り取られる!!

「おっ、」

「いいぞぉッ!!」

「そのまま行けッ!! カニちゃん!!」

 と、DJオイスターが、彼女のあだ名で応援するも、

「ち、ちょっと、切れるんだけど……、すこし、硬くて、」

 と、DJアクティブ・クラブは、すこしキツそうな顔して訴えた。

 すると、

『ふむ? そしたら、貴様にも手を貸してやろうか? 何かオレンジのヤツ、いや、ごめん、何かオレンジのゴミカス』

「えっ――?」

 と、煽っているのか、「ごめん」と言いつつ“オレンジのゴミカス”に“訂正”しながらも、妖狐が、遠隔で妖力を送ってやる。

 すると、


 ――ポ、ワァァッ……


 と、ハサミに、ハサミと同色の黒色とオレンジ色のオーラが走り、

『それで、切ってみよ』

「え、ええ、」

 と、促す妖狐に、アクティブクラブは半信半疑にうなづきながらも、


 ――ジャ、ッキ――!!


 と、ふたたび、水の匣へと向けてハサミを構える。

 そうして、

 

 ――スパッ!!


 ――スパッ――!!


 と、先ほどとは違って抵抗がほとんど無く、水の匣を――、水の立体をラクに切れていく。

「おおッ!!」

「いいじゃねぇか!!」

「これが、妖力の効果か!!」

 外野の声が盛り上がる。

 しかし、その中で

「む――!?」

 カン・ロウンと

「――ッ!?」

 と、キム・テヤンが、“何か”に気がついた。

 それと同時、


『おい貴様たち、浮かれるのは早いぞ――』


 と、妖狐の声が響いた。

 見ると、アクティブ・クラブのハサミによって切り取られてできた水の欠片が、

 ――ぐぐ、ぐっ……

 と、大小のキューブへと変わる。

「――!?」

 アクティブ・クラブが、囲まれたことに気がつく!!

 それらは、

 ――くるっ……

 と、アクティブクラブ目がけ、ロックオンをかける――!!

 そして、


 ――ゴゴ、ゴゴゴッ――!!


 と、アクティブ・クラブに向け、まるでドローンの大群のように襲いかかる!! 「ひっ――!?」

 アクティブ・クラブが怯む。

 そこへ、

『おいキノコ頭!! 貸すのだ!!』

「へっ――!?」

 と、律儀にも「借りる」と言って、妖狐がドン・ヨンファの身体を半分乗っ取り、


 ――シュ、ババッ――!!


 と、彼の異能力の、“植物”を放つ――!!

 それは、妖力によって力を倍増された、石灰いしばいでできた蔓バラというべきか――!!

 その、石灰の蔓バラは


 ――ぐ、るん――!!


 と、アクティブ・クラブの周囲を籠のように覆う!!

 そして、それらに水のキューブ群が


 ――ド、ドド――!!

 

 と、つっこむと同時――!!


 ――ジュ、ワァァ……


 と、石灰の花は、水に取りこまれてしまうというべきか――? あるいは、石灰の花が、水を取りこんでしまうというべきか――?

 そのまま、固まってしまい、水のキューブたちは無力化されてしまった。

 その光景に、

「なっ……!?」

 と、助けられたアクティブ・クラブは、思わず驚愕して固まるも、

『おい、オレンジのヤツ――。ボサッとしてないで、貴様は、そのまま水の匣を切り続けるのだ』

「わ、わかったわ、」

 と、妖狐の言葉で、


 ――ジャ、キンッ!!


 と、ふたたび、ハサミを構える。

 そうして、


 ――スパッ、スパッ――!!


 と、水の匣を切ること、捕らえられたパク・ソユンまで、あと少しのところとなる。

 距離にして、もう1メートルもない、あと5、60センチと言うこところか、

『これで、充分だろう――。キノコ頭、あとは、貴様が入れ』

「あ、ああ、」

 と、妖狐が言うなり、ドン・ヨンファの身体に、

 ――ボゥッ……

 と、赤いオーラが帯びる。

 そうして、水の匣へと手を伸ばすと、


 ――スッ……


「え――? 入れ、た――?」

 と、先ほどまで苦戦していたのが嘘のように、手が、腕が入っていった。

 さらに、

 ――ド、ポンッ……

 と、ドン・ヨンファは全身、水の匣へと入っていく。

「(そ、ソユンッ……!!)」

 ぐったりとしながらも、眠れるような顔のパク・ソユンに、ついに手が届く。

 そうして、

 ――ぐ、ぐっ……

 と、そのまま、水の中でパク・ソユンをお姫様抱っこのようにして抱えつつ、


 ――ザッ、パァァ……

 

 と、水を散らし、滴らせながら、水の匣から出てきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ