表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【水の匣】  作者: 石田善二郎
第五章 強襲、水の匣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/37

28 もう片方の手にはドラ焼きという、すこし舐めくさった妖力発動スタイル




          (5)





『――てか? ソユンのヤツなら、あと、2、30分はいけるんじゃね?』


「「「「「「は――?」」」」」

 と、まるでCM開けのように、話を再開する。

 妖狐の神楽坂文に電話がつながり、パク・ソユンの救出の協力を求めたところ、返ってきたのは、この信じがたい言葉であったのだ。

「いやいや!? あと、30分は、って!?」

「合計で、一時間以上経つだろが!」

「いくら、アイツだからって、むちゃくちゃ言うなよ!」

 と、妖狐に対し、困惑の声と怒号が飛びかう。

『まあ、そういきり立つな、貴様たち』

「いや、いきり立つなじゃなくて、よう、」

 キム・テヤンが、苦虫を潰したような顔をし、

「そ、そうだよ! タヌキさん! ふざけてないで、まじめに、力を貸してくれよ、」

 と、ドン・ヨンファも訴えた。

『やれやれ……、冗談に決まっておろうに』

「ああ”? いま、冗談言ってる場合かよ」

 と、冗談との言葉に、キム・テヤンが呆れ、

「そうだって、まったく」

「てか? 何にも、してくれないの? 何のための、妖狐なの?」

 と、ホン・ドヒョンとキム・ユナが、すこし失望したように言うと、

『まあ、待て、カスども。いま、『何もしない――』とは、言ってないだろ』

「いや……、でも、こっちに、来れないんだろ?」

 と、ドン・ヨンファが聞いた。

『まあ、そっちには、すぐには行けないが……、すこしだけ、妖力で、“遠隔で”貴様たちを手伝ってやろう』

「遠隔で、ですか――?」

 と、カン・ロウンが聞き返し、

『ああ……。貴様と、テヤンのヤツに、遠隔で妖力を送る。“それくらい”

で、いまは、どうにかなろう――?』

「え、え……。分かりました」

 と、すこしドヤ顔する妖狐に、うなづいた。

 そうして、スマホの画面の向こうで、


 ――スッ……


 と、妖狐が虚空に手を伸ばし、妖力をこめる。

 なお、もう片方の手にはドラ焼きという、すこし舐めくさった妖力発動スタイルではあるが……

 それはさておき、


 ――ポゥ……


 と、赤いオーラが、海を隔てた日本の滝つぼから伝わる。

「お、う……?」

 キム・テヤンが気がつき、

「“こいつ”、か――?」

 と、自身の拳、そして足先に、赤いオーラが帯びているのを確認した。

 また、それは、ドン・ヨンファの魔法的な植物も同様であり、

「わ、わっ、」

 と、すこし驚いて見せたドン・ヨンファの眼前、


 ――ビ、ィィン……


 と、前方へと伸びる“ピカソ風の薔薇”――、その全体が、赤いオーラを帯びているのを目にした。

 そうしながら、

『ほら、これで妖力を送ってやったから、さっさとやるのだ。低級動物ども』

 と、妖狐がふたりを急かし、促した。

「ああ”!? 誰が低級動物だってんだよ!! このドラえもん野郎」

「ま、まあまあ、」

「イラっとするのは分かるが、いまは、それどころじゃないだろ! テヤンさん!」

 キム・テヤンは妖狐に苛立つも、DJオイスターとホン・ドヒョンに宥められつつも、

「ああ~……、ったく!! 仕方ねぇ!! さっさとやるぞ!! ヨンファ!!」

「あ、ああっ……!!」

 と、ふたたび、“水の壁”の突破を試みることにした。

 すぐさま

「はァッ――!!」

 と、キム・テヤンは気合を入れつつ、


 ――パァァンッ――!!


 と、目にも止まらぬ速さの突きを水の壁へと見舞う!!

 同時に、

「おぉいッ!! ヨンファ!!」

「あっ、ああッ!!」

 と、その呼びかけによってドン・ヨンファも、ほぼ同時、


 ――シュババッ――!!


 と、“例の薔薇”を水の壁へと放つ!!

 すると、

 ――ぐぐ、ぐッ――!!

 と、こんどは、召喚した植物が10センチほどか――、水の中へと入りこみ、侵襲せんとする!!

 そのまま、

 ――ぐ、ぐッ……

 と、水の匣に裂け目を入れながら、捕らえれているパク・ソユンのほうまで進もうとする。

 外野からは、

「「「も、もう少しか――!?」」」

 と、期待の声が重なった。

 そうして、

「そ、そのまま行ってくれ!!」

 と、ドン・ヨンファが力をこめ続けようとした。

 だが、そうは問屋が卸さずというべきか、


 ――ぐわ、わん……


 と、途中まで進んだ“薔薇”が、こんどは“水の匣”から押し返されはじめる。

 そして、


 ――パ、シィィッ……!!


 と、先ほどと同様、また魔法植物は弾かれ、侵入は失敗してしまった。

「くっ!?」

 ドン・ヨンファが顔を歪め、

「ちっ――!! ダメか!!」

 と、キム・テヤンが、水の匣に向かって、

 ――ドンッ――!!

 と、拳で殴った。

「もうちょい、妖力ってのを強くできねぇのか!! タヌキ!!」

『できなくはないが、いま、妖力は回復中だといっておるだろ』

「あ、あ”……!? まったく、よう!!」

 と、妖狐の言葉に、キム・テヤンは苛立ちを募らせる。

 そこへ、



「あっ――? そう言えば、」



 と、突然に、背後から声がした。

「う、ん――?」

 ドン・ヨンファと、

「あぁ、ん……?」

 と、キム・テヤンが、その声のほうに振り向いた。

 そこには、


 ――ス、タッ……


 と、オレンジ色と黒色をベースにした、すこしセクシーな感じの衣装の女――、すなわち、パク・ソユンのDJ仲間のアクティブ・クラブが、前に出てようとしていた。

 その、アクティブ・クラブが言う。



「私も、“異能力”――、使えるんだけど」



「「「「「「は――?」」」」」」



 と、ここでまた、人間性を疑う『は――?』の声が重なった。

 すなわち、「何で? いま、言った?」的な――

 あるいは、「いや、何で? お前? それ、もっと早く言わなかったの?」と、先ほどの妖狐の発言以上に、ドン引きした空気が場に流れた。


 …………、…………


 シーン……とした沈黙が、場に、しばらく続く。

 今さら“それ”を言うとは、天然なのか? それとも、何かサイコ的なところでもあるのだろうか――?

 皆が、次のひと言を言いかねていると、 

『おい、そこの、“オレンジのヤツ”』

 と、妖狐が呼びかけた。

((((何かオレンジのヤツ、て……)))

 皆の、心の声がそろう。

(((まあ、オレンジ色メインの衣装を着ているけど、ちょっと、直球すぎないか――?))

 と、いった具合に。

「は、へ――?」

 当の、アクティブ・クラブ本人も、ポカン――とするも、

『ねえ? 君、さあ? 人間性、おかしいと思わない? ねえ、ねえ? ふつう、そんな大事なこと、分かってたらさぁ? もう、最初の、始まってすぐの時点で申し出るのが、普通じゃない? ねえ?』

「は、はい……、まあ、そう、ですね……」

『ねえ、何で? 何で? 何か理由はあるの? もしかして、わざと? 何か、あとで言ったほうが話の展開的には面白いから、敢えて、最初には言わなかった、とか? ねえ?』

「い、いや、そういうわけじゃ……」

 と、モラハラモードで圧をかけてくる妖狐に、アクティブ・クラブは若干引きながら、

『はぁ……、ほんと、問い詰めたい、いまから、小一時間くらい問い詰めたい。いや、せめて30分くらい問い詰めてもいい? ねえ、ねえ?」

「「「「「よかねぇよ!! そんな暇あるなら、さっさとなんとかしろってんだよ!!」」」」」

 とここで、皆がようやく、妖狐につっこんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ