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【水の匣】  作者: 石田善二郎
第五章 強襲、水の匣

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22 ぽよの呼吸




          (1)




「「わっ!? わあぁぁー!!!」

「「きっ!? きゃぁぁ!!!」

 と、乱雑に叫ぶ声から、

「「そっ、ソウー!!!」」

 と、パク・ソユンのDJネームを呼ぶ声が入り乱れ、会場は騒然となっていた。

 水のディスプレイ、それを構成する水のキューブが軍勢のようになり、


 ――ドッ、シャァァッ――!!


 と、まるで急降下爆撃をいっせいにするかのように!! パク・ソユンへと襲いかかっていたのだ!!

「「そっ、ソユンーッ――!?」」

 キム・テヤンとドン・ヨンファが、同時に叫び、

「み、水の匣かッ――!?」

 と、カン・ロウンも、跳び起きるように反応する。

「お、おいっ!? 何で、あいつ動かね――」

 キム・テヤンが、そこまで言いかけたところで、


「はッ――!?」


 と、気がついた。

 パク・ソユンが、いままさに水の匣に強襲される前後のこと、ピタッ――と、フリーズしたように動かず、されるがままに水のキューブに襲われるようにも見えた。

 ただ、このパク・ソユンだが、悪く言えば鈍感、よく言えば動じない人間であり、また、その戦闘力を考えてみても、こんな強襲をされた程度では、ビビって動けなくなるということは考えにくい。

 ゆえに、水のキューブに襲われた瞬間の挙動というのは、すこし不自然にも見えた。

 そこまで考えたところで、

「ま、まさか――!?」

 と、キム・テヤンは“何か”を察した。

「ああ……」

 と、カン・ロウンもそれは同様で、うなづいた。

 ふたりとは対照的に、

「え? ど、ゆ―「――てめぇ! まだ分かんねぇのか? タコ!」

 と、ドン・ヨンファは、「どゆ、こと――?」と聞こうとするより前に、キム・テヤンによって言葉をさえぎられる。

「え? えっ?」

 ドン・ヨンファは困惑していると、

「な、なん―「――“アレ”、だってんだよ!! 『人質を取る――』とか、脅迫されてんだよ!!」

 と、またしても、「何で?」と聞こうとした途中で、キム・テヤンが言葉を被せて、先に答えを言った。

「なっ!? 何だって――!?」

 ここで、ドン・ヨンファも理解し、驚愕の声をあげた。

 その、ドン・ヨンファが続けて、

「でも、さ? そんな、人質って……、どこにいんだい?」

「さあ、な……。恐らく、おおかた、プールにいる客連中とかじゃねぇのか」

「まあ、ソユンの異能力で、いくらかは水のキューブを妨害することはできても……、これだけの数の人間を、守り切るってのは困難、不可能だろうし……」

 と、カン・ロウンが、途中、息を継ぐようにしながら、

「それに……、ソユンの異能力は、“そういうこと”には、適してないからな」

 と、言葉を添えた。

 あくまで、グロ動画などから得たイメージをもとに、チェーン・ソーなどの武器・ガジェットを具現化したり……、あるいは、例えば、首輪爆弾の爆発も耐えて見せるほどの、“異常な耐久力”を発揮することのできるパク・ソユンの異能力――

 ちなみに、過去の調査において犯人と対峙した際に、この首輪爆弾を爆発を受けても無事であったというのは、『ぽよ』と呼吸したこと――、すなわち、『ぽよの呼吸』などと、パク・ソユン本人は宣っているのだが、恐らく、それは絶対にない。

 まあ、そういうわけであるから、ドローンやミサイルの飽和攻撃のような水のキューブ群の急襲において、自分の身を守るだけならまだしも、これだけ大人数の観客の身を守ることは、確かにパク・ソユンの異能力では難しかった。

 それはさておき、その間にも

 ――ドド、ド……

 と、急降下するようにして、水のキューブ群はパク・ソユンへと降り注ぎ、

 ――ぐ、ぐっ……

 と、合体して融合していく。

 しまいには、


 ――シャッ、キーン――!!


 と、水とは思えぬ“ソリッド”――

 すなわち、“限りなく完璧な直線”の辺で構成される、立方体――、【水の匣】へと変化へんげする!!

 そして、その“匣”の中には、


 ――ゆらぁっ……


 と、パク・ソユンが、まるでクリムト絵画にでてくるかのような、水の中で眠れる姫や美女のように、漂っていた。

 それを、ステージ下の、プールサイドから眺めていたところ、

「「そっ、ソーウッ――!!」」

「「ソユンー!!」」

 などと、DJネームと本名が入り乱れながら、叫ぶ声が聞こえた。

 壇上を見るに、

 ――ドタ、バタ!!

 と、ゴーグルサングラスのホン・ドヒョンにキム・ユナ、それからイベント関係者、スタッフたちや、DJ仲間が駆け寄るのが見える。

 それを見て、カン・ロウンがふたりに、

「くっ……! こ、これは、俺たちも、ボサっとしている場合じゃない! 行くぞ!! テヤン!! ヨンファ!!」

「ああ!! 分かってらぁ!!」

「あ、ああ、」

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