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【水の匣】  作者: 石田善二郎
第五章 強襲、水の匣

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23/32

23 おいッ!! 最初から、その能力使えってんだよ!!



          ***



 場面は、下から上へと――

 すなわち、プールの壇上のこと、

「「ソユンーッ――!!」」

「「ソー、ウーッ――!!」」

 と、ホン・ドヒョンにキム・ユナ、それから、DJたち並びにイベント関係者たちが叫びながら、パク・ソユンのもとへと――、“水の匣”へと駆け寄っていく。

「くっ!!」

「ま、まさか!! 水の匣が、現れるなんて!!」

「まったく!! 何で!? よりにもよって、こんな、イベントのときに!!」

 驚きを隠せない声と、憤る声が聞こえる。

 また、さらにそこへ、すこし離れたほうから、

「お、おぉい!!」 

「部外者は、来ないでくださいよ!!」

 と、恐らくイベント関係者、スタッフが、すこし声を荒げるのが聞こえた。

 その、声のしたほうを見るに、

「とおしてくれってんだよ!!」

 と、キム・テヤンが、制止しようとするスタッフ、あるいはセキュリティに阻まれながらも、それらを物ともしない形で、振りほどくようにして突破していき、

「そ、そうだよ!! それに、僕たちは部外者じゃ、」

 と、その後ろから、ドン・ヨンファが続いた。

「だ、から!! 部外者はダメだ!!」

「そうですよ、救護の邪魔になりますし……、皆が、押し寄せたら大変なことになりますから!! ここへは、入らないでください!!」」

 改めて、スタッフがカン・ロウンたち三人を追い返したがるが、

「だ、から!! まったく!! 俺たちは、“アイツ”の……、ソユンの仲間だっつうんだよ!!」

 と、キム・テヤンが、思わずパク・ソユンの名を出して叫んだ。

「あ、ぁ”?」

「は、ぁ……、? アンタたちが、ソウの仲間?」

 イベント関係者の者は、「は、ぁ?」との顔で、顔をしかめつつ、

「仲間や友人だとしても……、アナタたちは、イベント関係者ではないですよね?」

 と、あるスタッフの女は、毅然として言った。

 イベント関係者としても、部外者が野次馬のように押し寄せてしまえば、パニック状態になること、壇上での、パク・ソユンの救助作業に支障をきたすことを考えると、当然のことであった。

 だが、そんなふうに止めにかかるものの、

「おい!! 頼むから、通してくれってんだよ!!」

 キム・テヤンが、

「う、ぐぐっ!!」

「と、止まんねぇ!?」

 と、そこそこ体格のよいスタッフたちの制止を、ラグビーかアメフトのように振りほどき、突破せんとする。

 まあ、これは、さすが元情報部のエージェントというだけあって、身体能力に、鍛えている体幹の強さ的なもののあるのだろう。

 そのとき、先行するキム・テヤンのすこし後ろで、


 ――パ、チンッ――!!


 と、カン・ロウンが、とつぜん指を鳴らした。

 この、使っているのか使ってないのか分からないコードネーム、“スタイル”こと、カン・ロウンの異能力の発動する合図

「まあ、こんなことをしている場合ではないが、」

 カン・ロウンは、そう言いながらも、


 ――タッタカ、タッタカ♪


 と、ステップを刻む。

 合わせて、


 ――ジャカ、ジャカ♪ ジャカジャカ♪


 と、何ゆえか――? 音楽が流れてくる。

 さらに、そのカン・ロウンに合わせるようにして、

 ――タッタカ、タッタカ♪

 と、スタッフたちまで踊りはじめる。

「えっ――?」

「えぇぇーッ!?」

「な、何!? 何!?」

 彼らは、困惑の声をあげる。

 すなわち、カン・ロウンの異能力――

 プロモーション・ビデオのように、自身のダンスに周囲の人間を巻き込むことにより、このように侵入したり、あるいは敵によっては無力化したりすることもできる能力である。

「おい!! 何やってんだ!!」

 と、離れたところにいた仲間の声がするも、

「い、いや、」

「か、体が勝手に、」

 と、答えるより他なかった。

 そのようにして、


 ――タッタカ、タッタカ♪ タッタカ、タッタカ♪


 と、カン・ロウンはスタッフたちと踊る形で、まるで、赤絨毯か花道のように道が空くようにして、パク・ソユンのほうへと進んでいく。

「おいッ!! 最初から、その能力使えってんだよ!! ったく!!」

 キム・テヤンが言い、

「おいおい、こんな場面で、あんな能力使えと言われてもな、」

 と、カン・ロウンが、「勘弁してくれよ」の身ぶりで答える。

 そのようにしながらも、カン・ロウンたち三人は、パク・ソユンのもとへと急いだ。

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