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【水の匣】  作者: 石田善二郎
第三章 水の匣の水、について

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15/22

15 そういえば、さ? 日本に、『水が如く』って、ラーメン屋あったじゃん? 夜行きたくなる




          (4)




 場面はかわって――

 韓国からお隣は中国、夜の上海の、租界時代の外灘のことである。

 モデル兼DJの、DJ・SAWことパク・ソユンであるが、彼女のスタッフのふたり――、大柄のゴーグルのようなサングラスをした男、通称ゴーグルサングラスことホン・ドヒョンと、すこし姉御肌した女スタッフのキム・ユナとともに、朝から上海入りしていた。

 昼間は、撮影だったり、明日の打ち合わせをしていた。

 明日は、この上海の隣の蘇州で、音楽フェスがある。

 音楽フェス、【如水】――

 その名のとおり、まさに、“水が如く”――!! ハードコア水遊びイベントである――!!

 波のあるプールに、壇上から舞うウォーターキャノン!!

 浮き輪や、ビーチボールの飛び交う中、男も女も色とりどりの水着にて、縦ノリに、横ノリ――!! そして、波ノリと!! 水の滴る中、音にノる――!! 

 なお、水と球体状の超小型ドローンを用いた――、まるで、水自体をディスプレイみたいにする最新空間技術が、空間をさらに水づくしにするという!!

 まあ、【如水】音楽フェスの紹介はそこそこにして、パク・ソユンたち三人のことに話を戻す。

 彼らは、何ゆえか? そのまま、蘇州に泊まらずに、わざわざ上海に戻っているという。

 その、租界時代の、洋風の石造建築の多く残る外灘――

 川沿いの建築群とその背後に広がる現代高層ビル群の織りなす夜景に、人びとの散策する遊歩道、そして浮かぶ船と、その眺めは美しい。

 そして、この租界建築群の中にある、ルーズベルト・スカイバーというバーで、パク・ソユンたち三人は酒を飲んでいた。

 外灘を見下ろすデッキから、上海ガニに、ロブスターにムール貝と魚、様々な酒、カクテルを愉しめる、洗練されたお洒落な空間。

 なお、クラブスペースもあるようで、そちらはDJブースもあり、明日の【如水】イベントに出演するDJ仲間も来ていた。

 韓流イケメンを絵に描いたような、DJオイスター。

 それから、オレンジと黒を基調にした、セクシーな衣装でパフォーマンスすることで知られる女DJこと、DJアクティブクラブと――

 彼らがDJするのを遠目に眺めつつ、


「如水、かぁ……」


 と、ゴーグルサングラスこと、ホン・ドヒョンが呟いた。

 聞いて、酒を飲みつつ、上海ガニに手をつけていたパク・ソユンが、

「そういえば、さ? 日本に、『水が如く』って、ラーメン屋あったじゃん? 夜行きたくなる」

「う、ん――?」

 と、ホン・ドヒョンと、

「水が、如く……?」

 と、キム・ユナが、順に反応する。

「うん。名古屋の、イベントに行った時に、行ったじゃん」」

 パク・ソユンが答えて、スマホをみせる。

 名古屋城から、すこし行ったところの幹線道路沿いにある、あっさりとした和風だし系の、ガラス張りのお洒落なラーメン屋で、地元でも有名である。

「ああ、そう言えば、行ったねぇ。何か、お洒落なカフェみたいな雰囲気の」

「すこし、駅から離れたけど、何か、結構並んでたよな。近くに、江戸時代の将軍家の庭園があったよな」

 と、キム・ユナとホン・ドヒョンも思い出した。

「こんど、日本のイベント行くとき、さ? もっかい、行きたいんだけど」

「まあ、名古屋で、あればな。俺も、あの、あっさり系は好きだかんな」

 と、パク・ソユンに、ホン・ドヒョンが答えた。

 まあ、上海ガニ食いながら、日本のラーメンの話とは……、というところであるが。

 なお、パク・ソユンは、紹興酒だのビールだの、カクテルだのと、ごっちゃに飲んていた。

 独特な、市松状の模様の入った、キューブ状のグラスに入った青いカクテル。

 これを、


 ――スッ、コーン……!


 と、テーブルに軽く音を立て、豪快に飲み干した。

「おおっ? 相変わらずの、飲みっぷりだな」

「あんた、ほどほどにしときよ? 明日、イベントでしょ?」

 と、キム・ユナが、注意するように言うと、

「は? いや、何を、言ってるぽよ? だから、いつもいってんじゃん、お酒は、絶―「「――はいはい、『絶対やめた』ね。いい加減、好きだね? そのネタ」

 と、また『お酒は絶対やめた』とパク・ソユンが言い切ろうとする前に、ふたりは言葉を被せて阻止をした。

「ぽよ」

 と、パク・ソユン。

「「いや、『ぽよ』じゃねぇし」」

 と、ふたりはつっこみつつも、

「てか、『ぽよ』で、誤魔化すことに、味を覚えてない? アンタ?」

「ぽよ」

「「……」」

 と、やっぱり『ぽよ』で返してくるパク・ソユンに、絶句した。

 そのこころ、

((ああ……、もう、だめだ こいつ……))

 と、ゴーグルサングラスとキム・ユナのふたりは、もはや諦めるより他なかったわけである。


 それは、さておき、

「――てか? 何か、イカしたグラスだな」

 と、パク・ソユンが空にしたグラスを見て、ホン・ドヒョンが、そのゴーグルサングラスを近づける。

「はぁ、」

 と、曖昧な相づちするパク・ソユンに、

「四角というか、キューブというか」

 と、キム・ユナも、グラスを指して言った。

「四角、キューブ、青いカクテル――」

 ゴーグルサングラスが、ふと呟きながら、何か連想して、

「ああ……? そう言えば、“水の匣事件”ってのが、最近、ソウルでもあったよな?」

「水の匣、事件……? ああ、先日の、別荘地の」

 と、キム・ユナとともに、先日の、水の匣事件のことを思い出した。

 いちおう、ニュースになっている事件ではある。

「もしかして、ソウ? 君たち、この事件、調べてたりする?」

 ゴーグルサングラスが、パク・ソユンに聞いてみると、

「ぽよ」

「「いや、どっちの『ぽよ』だよ」」

 と、やはり『ぽよ』で返ってくるので、またふたりしてつっこむ。

 すると、

「ああ……、その事件なら、調べてるわよ」

 と、パク・ソユンは、ちゃんと答えつつ、

「てか? 何で? 私たちが調べてるって、分かったの? なかなか、目ざといっていうか、」

「いや、目ざといって、」

「まあ、目ざといのは、すこし否定はできないかもしれないけどな」

 と、ホン・ドヒョンが、そのゴーグルサングラスを光らせた。

 続けて、

「それで? その、“水の匣”について、何か、分かったことはあるのかい? ソウ? 君たちの調査で」

「そうね、私も、知りたいわ。というか? いったい、ほんと、何なんだろうね? この事件」

 と、キム・ユナも便乗しながら、

「この“水”も……、何か、“特殊な水”なんだろ?」

 と、ホン・ドヒョンが、改めてパク・ソユンに尋ねると、

「いや……、何か、さ? “ふつうの”、水道水と、変わらない水らしいんだけど、」

 との、返ってきた言葉に、


「「え――?」」


 と、ふたりは声をそろえ、一瞬、ポカンとした。

 それが、解けるなり、

「ふ、ふつうの水――、だって?」

 と、ゴーグルサングラスが、「嘘だろ?」の口を、聞き返した。

「ぽよ」

「「いや、『ぽよ』は、いいから」」

 と、また『ぽよ』に味をしめて使ってくるパク・ソユンに、ふたりはつっこんだ。

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