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【水の匣】  作者: 石田善二郎
第三章 水の匣の水、について

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14 アクア・キューブリック社

 話をもどして、

『まあ、いずれにしろ……、イジュンの、分析の結果待ちになるかな』

 と、ドン・ヨンファが言うと、

「うむ……」

 カン・ロウンはうなづきながら、

「――で、その結果次第では、もしかすると、キツ――、タヌキさんに相談してもいいかもしれないな」

「あ、あ”……?」

 とここで、キム・テヤンが顔をしかめる中、“タヌキ”との単語が出てきた。

 まあ、これは、妖狐の、神楽坂文のことである。

 カン・ロウンや、SPY探偵団のメンツと面識のある、異世界というか異界の住人の妖狐のであり、何か頼めば、、その妖力や妖具をもって、調査に協力してくれないこともないという、まるで“ドラえもんみたいなナニカ”である。

 ちなみに、妖狐であるから、タヌキではなくキツネである。

 なので、『キツ――、タヌキ』と、カン・ロウンは訂正したものの、これではキツネからタヌキへと、逆に訂正しているわけなのだが。

 まあ、“わざと”なのかもしれないが……


 本題に戻って、

「あとは……、他に、何か、あるか? ヨンファ」

 と、カン・ロウンが、ふたたびドン・ヨンファに聞く。

『そう、だねぇ……』

 ドン・ヨンファは、すこし思い出してみながら、

『もし……、その、“ポリウォータのようなもの”が実現できそうな可能性として、“ある企業”の名前が、あげられていてね――』

「う、む」

 と、カン・ロウンが、ゆるり……と相づちする。

 その傍から、

「けっ、てめえの友人の、アテにならねぇ情報か」

『うるさいなぁ』

 と、また、キム・テヤンとドン・ヨンファが、軽くバチる。

 それをスルーしつつ、

「それで、何て会社なんだ? タコ」

 と、キム・テヤンが聞くと、

『ああ……、何やら、“アクア・キューブリック社”って、とこでね……』


「「アクア、キューブリック社……?」」


 と、出てきた会社の名に、カン・ロウンとキム・テヤンが、声をそろえて聞き返した。

『ああ……。何やら、水に関して……、幅広い応用テクノロジーを扱っている企業みたいでね。水の構造を、クラスターレベルで、あらゆる機能を持たせるという――』

 と、ドン・ヨンファは答えた。

 その資料というのを、ス・イジュン友人からもらったものを見ていく。

『水に混和する物質によって、特殊な機能を持たせる――、まあ、“これ”は大小ふくめ、数多くの企業が昔からやっていることなんだけどね』

「それで? その、アクア・キューブリック社ってのは、どうなんだ?」

 と、カン・ロウンが問うと、

『まあ、さっきも言ったように、クラスターレベル――、いわゆるナノスケールの特殊な物質やそれこそ、ナノマシンといったものを混和させて、あらゆる分野での応用を、可能にする』

 と、ドン・ヨンファは答えつつ、その例だったり図を、皆で共有してみる。

 化学式というか分子式で分子マシンと思しきものと水分子のネットワークが、どう相互作用するのかといったことが図で描かれ、説明される。


「それと、これは――?」

 と、カン・ロウンが、別の資料に気がつく。

 そこにあるのは、ナノのスケールではなく、もっと大きな――、それこそ、パチンコの玉や米粒のサイズの“ナニカ”――

『ああ……、それは、小さい球体や微細な球体状の、ドローンみたいなものなのかな――? “これ”を入れてね、電流やワイヤレス送電などによって、水の塊に形をもたせる、変形させたりと、操作することができる技術みたいだね』

 と、ドン・ヨンファの答えを聞いて、カン・ロウンが、

「ほう……。そうすると……、これによって、“匣”のような形も、実現できるのでは?」

 と、聞いた。

 まあ、誰もが、直観的にそう思うだろう。

 しかし、

『まあ、僕も、そう思ったんだけど、さ……? だけど、実際に、現場に残された匣からは、そんな、目に見えて分かりやすいものなんか、入ってなかったんだろ?』

「ああ……」

 と、むしろ、現場で“匣”を直接見たのはカン・ロウンであり、この可能性は否定される。

 また、ドン・ヨンファが、

『さらに、それを、現場で匣の形を保持し続けるためには……、何らかしら、エネルギーを加え続ける必要がある』

 と、そこへ、

「そうすると、その、アクア・キューブリック社って情報があてになんのかよ? タコ」

『ああ、もう……、いちいち、タコってうるさいなぁ……』

 と、茶化してつっこんできたキム・テヤンに、ドン・ヨンファが嫌そうな顔をした。

「まあ、まあ……、他に、この企業が、まだ世に出してない技術というのがあるのかもしれない。なので、おいそれと、“水の匣とつながりのありそうな候補”から外さないほうがいいだろう」

 カン・ロウンが、そう話しながらドン・ヨンファを擁護した。

『ああ、僕も、そう思うよ』

「けっ、何が、しょー思うだ」

 と、ここでも、キム・テヤンが舌打ちしつつ。

 また、

「それで……、この、アクア・キューブリック社の拠点っていうのは、我が国だけでなく、日本、中国にもあるな」

『ああ……』

 と、カン・ロウンが、その企業拠点を確認した。

『ちょうど、水の匣が……、現れている国だね』

「本社が、日本のようだが……、上海に大きな支社……、それから、研究所が蘇州にも、あるようだが」

「あ”ん? 上海、蘇州つったら、“あいつ”が行っていんじゃねぇか?」

 とここで、キム・テヤンが思い出した。

 パク・ソユンが、今日から音楽イベントのため、中国は上海・蘇州へと発つことを。

「上海、蘇州か……」

 カン・ロウンが言うと、

『あっ? ちょうど、ス・イジュンと、その話をしたんだよ。上海ガニ、食べたいって、』

「ああ”? タコが、カニとか、何言ってんだ? タコ」

 と、相変わらずキム・テヤンが舌打ちと“タコ”と、つっこむ必要もなくつっこむと、

「いや、いいじゃないか、テヤン。私も、上海ガニは食べたいな」

 と、カン・ロウンが宥めつつ、

「まあ、そしたら……、これも、何かの偶然だろう。自分たちも、いまから、上海へ行こう」

「あ”――?」

『へ――?』

 とここで、怪訝な顔するキム・テヤンと、ドン・ヨンファがキョトンとしながらも、声を反応をそろえた。

「『何、だって――?』」

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