表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/154

第五章:帝国動乱編 第33話 亀裂 ― 守る者の迷い

壁を守る者は、

外を見ない。


だが、

内側に

声が反響し始めた時、

守っているものが

何だったのか、

分からなくなる。


制度の亀裂は、

外から叩かれて

生まれるのではない。


内側で、

ためらいが

芽吹いた瞬間に

始まる。

評議院。


文書局の一角。


夜遅くまで、

灯りが消えない机が

増えていた。


意見書。

分類表。

資格確認票。


紙は、

整然としている。


だが、

読む者の手は

重い。


***


若い文官が、

束を抱えて

立ち尽くす。


文官

「……これ……

 資格は……

 満たしています……。」


上官

「……中身は……?」


文官

「……再開発で……

 移った……

 家族の……

 生活……

 です……。」


上官は、

眉をひそめる。


上官

「……専門的……

 意見か……?」


文官

「……生活実態の……

 分析……

 として……

 提出されています……。」


沈黙。


規定は、

守られている。


だが、

何かが

引っかかる。


***


別の机。


中堅の文官が、

低く呟く。


中堅文官

「……最近……

 増えすぎだ……。」


同僚

「……現場の……

 話だろ……。」


中堅文官

「……いや……

 “現場のふり”……

 だと思ってた……。」


同僚

「……違った……?」


中堅文官

「……本当に……

 現場……

 だった……。」


言葉が、

机の上に

落ちる。


***


廊下。


反王派の貴族が、

文官たちの様子を

遠目に

見ている。


反王派

「……迷いが……

 出ている……。」


側近

「締め付けを……

 強めますか……?」


反王派

「……強めれば……

 壊れる……。」


反王派

「……まだ……

 使える……

 壁だ……。」


その言葉は、

人ではなく、

制度を

語っていた。


***


討議所。


人々は、

相変わらず

話している。


直接は

届かなくても、

言葉は

記録される。


その事実が、

安心と

緊張を

同時に生む。


***


ある日。


一人の文官が、

討議所の

入口に立つ。


私服。


記章は、

外している。


文官

「……見学……

 しても……

 いいですか……?」


運営責任者

「……どうぞ……。」


文官は、

隅に座り、

黙って

聞く。


***


農民

「……書類に……

 なる……

 って……

 本当か……?」


記録係

「……なります……。」


農民

「……じゃあ……

 嘘は……

 書けない……

 な……。」


誰かが

笑う。


文官の胸が、

わずかに

痛む。


***


その夜。


文官は、

自室で

一通の

意見書を

読み返す。


内容は、

討議所で

聞いたばかりの

言葉だった。


だが、

筆致は

整っている。


文官

「……これを……

 弾いたら……

 何を……

 守ってる……?」


答えは、

出ない。


***


評議院・小会合。


反王派

「……分類は……

 終わった……

 か……?」


文官

「……はい……。」


反王派

「……問題の……

 意見は……

 除外した……

 な……?」


文官は、

一瞬

言葉に

詰まる。


文官

「……基準は……

 満たしています……。」


沈黙。


反王派

「……君は……

 制度を……

 守る……

 立場だ……。」


文官

「……はい……。」


だが、

声は

揺れている。


***


皇城。


アリアは、

短い報告を

受けていた。


エリオン

「……文官が……

 討議所に……

 出入り……

 している……。」


アリア

「……始まった……。」


エリオン

「内部から……

 割れる……

 か……?」


アリア

「……割れ目……

 が……

 増える……。」


アリア

「……壊す……

 必要は……

 ない……。」


***


夜。


評議院の建物。


外から見れば、

変わらない。


だが、

内側では、

紙をめくる

音が、

以前より

長く

続いていた。


制度を

守る者たちは、

初めて

問い始めている。


――誰のための

壁なのか。


その問いは、

声高ではない。


だが、

最も

深い亀裂だった。

この亀裂を

決定的にする

一つの出来事が

起こります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ