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灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


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128/152

第五章:帝国動乱編 第32話 防壁 ― 制度が身を守る時

制度は、

無機質な紙の集合ではない。


それは、

積み重ねられた

判断と利害と恐怖の

化石だ。


揺らされれば、

崩れる前に

身を守ろうとする。


その防壁は、

剣よりも静かで、

炎よりも冷たい。

帝都。


評議院の奥。


普段は

使われない

小会議室に、

人が集められていた。


声は、

低い。


だが、

決意は

固い。


***


第一評議員

「……意見書が……

 多すぎる……。」


文官

「……分類が……

 追いついて……

 いません……。」


反王派の貴族

「……分類など……

 不要だ……。」


反王派

「……基準を……

 設ける……。」


その言葉に、

数人が

頷く。


***


反王派

「……制度に……

 影響を……

 与える……

 意見には……

 “資格”が……

 必要だ……。」


文官

「……資格……

 とは……?」


反王派

「……専門性……。」


反王派

「……代表性……。」


反王派

「……責任能力……。」


それは、

もっともらしい

言葉だった。


***


別室。


新しい文案が

作られていく。


『政策反映対象意見の

 提出要件について』


条文は、

丁寧だ。


だが、

一つ一つが

壁になる。


***


討議所。


その噂は、

すぐに

届いた。


商人

「……資格……

 だって……?」


農民

「……俺たち……

 外れる……

 な……。」


若い母親

「……書いた……

 意味……

 あった……?」


不安が、

広がる。


***


記録係が、

静かに言う。


記録係

「……まだ……

 決まって……

 いません……。」


だが、

声は

弱い。


***


皇城。


アリアは、

草案を

読んでいた。


エリオン

「……防壁だ……。」


アリア

「……うん。」


アリア

「……制度が……

 自分を……

 守ろうと……

 してる……。」


エリオン

「破るか。」


アリア

「……破ったら……

 “制度破壊者”……

 になる……。」


エリオン

「……では……

 どうする……。」


アリア

「……触れない……。」


エリオン

「……触れない……?」


アリア

「……内側から……

 摩耗……

 させる……。」


***


翌日。


討議所。


アリアは、

一人の

学者に

声をかける。


アリア

「……あなた……

 資格……

 ありますね……?」


学者

「……一応……。」


アリア

「……この……

 意見……

 代わりに……

 提出……

 できますか……?」


紙には、

農民と

母親と

職人の

言葉が

並んでいる。


学者は、

一瞬

黙る。


学者

「……名前は……?」


アリア

「……残します……。」


学者

「……責任は……?」


アリア

「……私も……

 負います……。」


学者は、

深く

息を吐く。


学者

「……分かりました……。」


***


数日後。


評議院・文書局。


分類済みの

意見書の中に、

“資格要件を

満たす提出”が

増え始める。


だが、

中身は――

現場の声だった。


***


文官

「……内容が……

 似通って……

 います……。」


反王派

「……専門家の……

 見解だ……。」


文官

「……専門家が……

 急に……

 同じ……

 現場感覚を……?」


反王派は、

黙る。


***


討議所。


人々は、

直接

提出できなくても、

話すことを

やめない。


言葉は、

別の手を

経由して

紙になる。


***


夜。


アリアは、

机に

向かっていた。


エリオン

「……制度は……

 壁を……

 作った……。」


アリア

「……でも……

 壁は……

 摩耗……

 する……。」


アリア

「……触れ続ければ……。」


窓の外。


風が、

同じ場所を

何度も

通り抜ける。


壁は、

まだ

立っている。


だが、

目に見えない

削れ跡が、

確かに

刻まれ始めていた。

この摩耗が、

制度内部の人間に

亀裂を生みます。

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