第五章:帝国動乱編 第27話 反跳 ― 押された力の行き先
押さえつけられた声は、
必ずしも
消えるとは限らない。
多くは、
行き場を失い、
別の場所へ
流れ込む。
それは、
王の手を離れたところで、
王の意図とは無関係に、
形を変えて
跳ね返ってくる。
帝都。
公開討議所の出席者は、
さらに減っていた。
だが、
議論が消えたわけではない。
***
下層区。
夜の酒場。
人の密度は、
以前より
濃い。
職人
「……あそこ……
行きにくく……
なったな……。」
農民
「……書類……
時間……
多すぎる……。」
若者
「……でも……
話さないと……
腹に……
溜まる……。」
声は、
低い。
だが、
抑えられていない。
***
別の場所。
路地裏の
空き倉庫。
小さな集まり。
誰が
主催したのか、
分からない。
だが、
人は集まる。
規則は、
ない。
記録も、
ない。
ただ、
不満と、
経験が
投げ合われる。
***
若い兵士
「……命令が……
遅れる……。」
商人
「……検査が……
急に……
増えた……。」
母親
「……学校の……
話……
聞いて……
もらえない……。」
言葉は、
鋭くなる。
誰も、
止めない。
***
エリオン
「……地下に……
流れた……。」
アリア
「……うん。」
アリア
「……予想……
してた……。」
エリオン
「制御……
できない……
場所だ。」
アリア
「……制御……
しない……。」
アリア
「……ただ……
見失わない……。」
***
評議院。
反王派の報告。
反王派
「……非公式な……
集会が……
増えています……。」
第一評議員
「……違法か。」
反王派
「……現時点では……
いいえ……。」
第一評議員
「……なら……
問題は……
ない……。」
だが、
声は
固い。
***
数日後。
帝都外縁。
小規模な
抗議行動。
旗は、
ない。
スローガンも、
統一されていない。
ただ、
人が
立っている。
沈黙したまま。
***
通行人
「……何だ……
あれ……?」
誰も、
答えない。
だが、
視線は
集まる。
沈黙は、
時に
言葉より
重い。
***
守備兵は、
動かない。
命令が、
ない。
違法行為も、
ない。
ただ、
立っているだけの
人々。
それが、
最も
扱いにくい。
***
夜。
アリアは、
高い塔の
窓から
それを見ていた。
エリオン
「……王の……
意思……
ではない……。」
アリア
「……うん。」
アリア
「……でも……
王の……
時代……。」
エリオン
「危険だ。」
アリア
「……止めたら……
私が……
壊す……。」
アリア
「……放っても……
誰かが……
壊す……。」
エリオン
「難しい。」
アリア
「……だから……
ここに……
いる……。」
***
翌朝。
評議院に、
緊急連絡。
「沈黙の集団」が、
増えている。
反王派の
一人が、
苛立ちを
隠さず言う。
反王派
「……抑えた……
はずだ……。」
別の者
「……押し返され……
ただけ……
だ……。」
***
帝都。
沈黙の人々は、
まだ
声を上げない。
だが、
確実に
見える場所に
立っている。
それは、
暴動ではない。
だが、
無視できる
静けさでもない。
アリアは、
その光景を
胸に刻む。
アリア
「……反跳は……
始まった……。」
風が、
強く吹く。
それは、
嵐ではない。
だが、
押し戻された力が、
どこへ向かうか。
帝国は、
まだ
それを知らない。
この沈黙が、
一つの「象徴的な事件」によって、
意味を持ち始めます。




