表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰冠(はいかん)の大陸アルメリア  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/142

第五章:帝国動乱編 第25話 痕跡 ― 作為を辿る

偶然は、

乱れる。


作為は、

整えようとする。


だから、

作られた出来事ほど、

不自然なほど

“揃って”しまう。


王が見るのは、

結果ではない。


残された、

人の手の跡だった。

帝都。


公開討議所の周囲には、

まだ緊張が残っていた。


入口に立つ者は、

互いの顔を

確かめ合う。


誰が来て、

誰が来なくなったか。


沈黙が、

選別を始めていた。


***


その頃。


討議所の裏手。


運営責任者が、

アリアに

一束の紙を差し出す。


運営責任者

「……当日の……

 入退場……

 記録です……。」


アリア

「……ありがとう。」


そこには、

時間と名前。


そして、

いくつかの

空白。


***


エリオン

「……名を……

 書いて……

 いない……

 者が……

 いる。」


アリア

「……うん。」


アリア

「……しかも……

 同じ……

 時間帯。」


偶然にしては、

揃いすぎていた。


***


別の資料。


守備兵の

巡回報告。


事故が起きた時刻だけ、

配置が、

微妙に

ずれている。


エリオン

「……命令記録は……

 ない……。」


アリア

「……だから……

 現場判断。」


アリア

「……誰かが……

 “それらしく”……

 頼んだ。」


***


さらに。


討議所で

最初に

不安を煽った

二人の男。


目撃証言。


「別々の日にも

 似た発言をしていた。」


「言い回しが

 妙に整っていた。」


***


アリアは、

一つずつ

線を引く。


点と点。


それは、

証拠にはならない。


だが、

“説明”には

なっていく。


***


夜。


小さな部屋。


アリアと

エリオン。


地図の上に、

紙片が

並べられる。


エリオン

「……黒だな。」


アリア

「……でも……

 裁けない。」


エリオン

「なら……

 どうする。」


アリア

「……示す。」


エリオン

「示す……?」


アリア

「……作られた……

 問題が……

 どう……

 作られたか。」


アリア

「……“正解”じゃ……

 なくて……

 “過程”を。」


***


数日後。


公開討議所。


再び、

人が集められる。


だが、

今回は

議論のためではない。


机の中央に、

紙が置かれている。


入退場記録。

巡回図。

発言の書き起こし。


アリアは、

立ち上がらない。


席に座ったまま、

静かに言う。


アリア

「……これは……

 結論……

 じゃ……

 ありません。」


ざわめき。


アリア

「……“説明”……

 です。」


***


アリア

「……事故が……

 起きた……

 時間。」


アリア

「……警備が……

 薄かった……

 理由。」


アリア

「……不安を……

 煽る……

 言葉の……

 共通点。」


一つずつ。

感情を

交えず。


問いを

投げるように。


***


商人

「……つまり……

 誰かが……

 仕組んだ……?」


アリア

「……“そう……

 見える”……

 だけ。」


役人

「……名前は……?」


アリア

「……出しません。」


その言葉に、

ざわめきが

走る。


***


法学者が、

低く言う。


法学者

「……これは……

 裁き……

 ではない……。」


アリア

「……はい。」


アリア

「……裁きは……

 権力が……

 やること。」


アリア

「……ここは……

 考える……

 場所。」


***


沈黙。


だが、

違う沈黙だった。


恐怖ではない。

思考の沈黙。


誰も、

即座に

声を上げない。


***


その夜。


帝都。


噂の流れが、

少しだけ

変わる。


「事故は……

 不自然だった……?」


「誰かが……

 得を……

 している……。」


断定は、

されない。


だが、

信じ切る者も、

減り始めた。


***


評議院。


反王派の一人が、

報告を読み、

眉を歪める。


反王派

「……王は……

 名を……

 出さない……

 だと……?」


別の男

「……だから……

 厄介だ……。」


別の男

「……否定……

 できない……。」


***


夜。


アリアは、

窓辺に立つ。


エリオン

「……攻めない……

 のに……

 効いてる。」


アリア

「……疑いは……

 剣より……

 長く……

 残る。」


風が、

静かに吹く。


それは、

嵐ではない。


だが、

作られた問題の

継ぎ目を、

確かに

撫でていた。

この“疑いの余白”を

嫌う者たちが、

より強引な手に出ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ