第五章:帝国動乱編 第24話 仕掛 ― 問題を作る者
問題がない場所は、
攻めにくい。
秩序も、
暴力も、
破る理由がないからだ。
だから人は、
理由そのものを
作り始める。
それは、
壊すよりも
静かで、
発見しにくい。
そして、
最も卑劣なやり方だった。
帝都。
公開討議所は、
いつもと変わらない
朝を迎えていた。
人の出入り。
ばらばらの声。
結論のない時間。
秩序違反は、
ない。
それが、
気に入らない者がいた。
***
評議院・非公式会合。
反王派の貴族が、
低い声で話す。
反王派A
「……規制の……
口実が……
ない……。」
反王派B
「……なら……
作る……。」
反王派A
「……露骨すぎる……。」
反王派B
「……露骨で……
なければ……
いい……。」
沈黙。
反王派C
「……“事故”だ……。」
その言葉が、
静かに落ちる。
***
数日後。
討議所。
いつもより、
人が多い。
入口付近で、
見慣れない男が
立っている。
身なりは、
労働者風。
だが、
視線が、
落ち着きすぎていた。
***
議論が始まる。
テーマは、
自然発生的に
「治安」へ移る。
男
「……最近……
犯罪が……
増えている……。」
誰かが、
首を傾げる。
商人
「……数字は……
出て……
いない……。」
男
「……体感だ……。」
その言葉に、
ざわめき。
体感は、
否定しにくい。
***
別の男が、
続ける。
別の男
「……討議所の……
せいで……
警備が……
手薄に……。」
運営責任者
「……その……
関連性は……
確認……
されて……
いません……。」
男
「……確認……
されるまで……
何もしない……
のか……?」
空気が、
わずかに
荒れる。
***
若い母親が、
不安そうに言う。
母親
「……最近……
夜道が……
怖い……。」
誰も、
否定できない。
怖いという感情は、
事実だからだ。
***
その時。
後方で、
小さな衝突音。
誰かが、
倒れる。
悲鳴。
混乱。
だが、
刃も、
拳も、
振るわれていない。
男
「……ほら……
危険だ……!」
その声が、
場を切り裂く。
***
守備兵が、
入口に現れる。
彼らは、
中へ踏み込まない。
だが、
存在自体が、
圧力だった。
守備兵
「……状況を……
確認する……。」
運営責任者
「……負傷者は……
軽傷です……。」
だが、
空気は、
もう戻らない。
***
その夜。
帝都中に、
噂が走る。
「討議所で事故。」
「危険な集会。」
「無秩序の象徴。」
事実は、
歪められる。
***
翌朝。
評議院。
反王派A
「……見たか……。」
反王派B
「……問題は……
起きた……。」
文官
「……偶発的な……
事故です……。」
反王派C
「……だから……
こそ……
危険だ……。」
第一評議員
「……安全対策の……
再検討を……
提案する……。」
空気が、
流れを変える。
***
北方。
アリアは、
報告を受けていた。
エリオン
「……始まった……。」
アリア
「……うん。」
アリア
「……“問題”を……
作った……。」
エリオン
「閉鎖の……
流れになる。」
アリア
「……そう……
させない……。」
アリア
「……でも……
反論だけじゃ……
足りない……。」
彼女は、
静かに考える。
問題を、
否定するのではない。
“問題の作り方”を、
暴く必要があった。
***
夜。
討議所の灯りは、
以前より
少し暗い。
人々は、
警戒しながら
言葉を選ぶ。
それを、
誰かが
望んでいた。
アリアは、
その灯りを見つめ、
低く呟く。
アリア
「……作られた……
問題は……
必ず……
痕跡を……
残す……。」
風が、
重く吹いた。
それは、
嵐の前兆だった。
アリアが
この「作られた問題」に対し、
正面から抗わず、
別の角度から切り込みます。




