第87話 孤児院の畑
翌日。孤児院の裏手に作られた畑
レオン達はそこへ足を運んでいた
風が吹き畑には青々とした魔力草が並んでいた
レオンはしゃがみ込み葉を確認する
「問題無さそうですね」
「ええ」
セリオスも頷いた
「順調です」
クロエも畑を見回す
「ちゃんと育ってるね」
ゼムも続く
「枯れている物も見当たりません」
レオンは小さく息を吐いた
これで一安心だった
栽培は成功した
後は教国から派遣される管理役
エミルの到着を待つだけだ
その時だった
「レオン様」
シスターが近付いて来る
その表情はどこか安心したようだった
レオンは立ち上がる
「どうしました?」
シスターは畑へ視線を向けた
「ありがとうございます」
レオンは首を傾げる
「礼を言われる事はしていませんよ」
シスターは首を振った
「そんな事はありません」
そして静かに話し始める
「昔からグラニウス様には感謝していました」
レオンは黙って聞く
「薬草採取の依頼を下さっていましたから孤児院にとって大切な収入源でした」
それは事実だった
薬草採取は孤児院へ優先的に依頼されていた
もちろん危険な仕事ではない
討伐隊出動後のみ
護衛付き
森の奥は禁止
父は徹底して安全を優先していた
シスターも頷く
「子供達も多くの事を学びました、働く事、お金を稼ぐ事、お金の大切さ、寄付だけでは教えられない事です」
レオンは少しだけ目を細めた
父らしいと思った
ただ施すだけではない
自分で生きる力を身につけさせる
そんなやり方だった
だがシスターは少し表情を曇らせた
「それでも心配でした」
レオン達は顔を上げる
「討伐隊の後だけ、護衛付き、森の奥は禁止、十分配慮して頂いていました……それでも絶対安全ではありません」
静かな声だった
シスターは少し視線を落とす
「実際にグラニウス様も……」
そこで言葉を止め皆が理解する
【ワイバーン五体討伐】ノルディアで知らない者はいない
孤児院の子供達を守る為に戦い
そして父は倒れた原因の戦い
レオンの拳が僅かに握られる
シスターは続けた
「森は危険な場所です何が起こるか分かりません、だから毎回送り出す度に心配でした」
孤児院の子供達は家族だ
血は繋がっていなくても
大切な子供達だった
シスターは再び畑を見る
風に揺れる魔力草
孤児院の敷地内
安全な場所
「ですが今は違います、ここで育てられます、危険な森へ行かなくて済みますし、しかも安定した収入になります」
そして深々と頭を下げた
「本当にありがとうございます」
レオンは少し困ったように笑う
「礼なら父上にも言って下さい」
シスターは顔を上げる
そして優しく微笑んだ
「もちろんです!グラニウス様にもレオン様にも……」
レオンは何も言えなかった
父が残した物
自分が繋げた物
それが確かに誰かを救っている
そう思えたからだ
その時だった
「レオン様!」
元気な声が響く
リンだった
後ろにはラッツもいる
リンは胸を張る
「見てください!毎日ちゃんと世話してます!」
レオンは苦笑した
「そうか……偉いな」
リンの顔が輝く
そして次の瞬間
「じゃあ愛妾にしてくださ「しない!!」」
即答だった
リンが固まりクロエが吹き出した
ゼムは視線を逸らす
セリオスは肩を震わせながら笑っていた
「まだ諦めてなかったんですね」
「当然!」
リンは真剣だった
レオンは頭を押さえる
ラッツは呆れたようにため息を吐いている
畑には笑い声が広がった
平和な時間だった
レオンは改めて魔力草を見る
順調に育つ畑
安心したシスター
笑う子供達
そして仲間達
セリオスが帰れば少し寂しくなるだろう
だが前へ進まなければならない
魔力草事業
ポーション事業
二万枚の目標
やるべき事は山ほどある
レオンは空を見上げた
青空が広がっていた
セリオスが旅立つ日もきっとこんな空なのだろうと思った




