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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第1章覚醒と別れ
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第9話 北へ

書いた物を読み返したら所々抜けや設定の間違えがありました

変更しています

ごめんなさい

馬を走らせ続けて半日以上が過ぎていた右から出た太陽が左上で輝いている

ノルディアの領都は既に遠く後方へ消えていた

進むのはまだまだ先である

空気も冷たくなっていく

バルド山脈に近付いている証拠だった

それから馬を走らせて数時間

進むにつれて魔獣の姿が増え始めた


「前方!」


リックが叫ぶ

街道脇の茂みが揺れ奥から遠吠えが聞こえた

次の瞬間三頭のウィンドウルフが飛び出してきた

普通の狼より大きい魔獣で群れで獲物を狩る


「来るぞ!」


ガレスが剣へ手を掛けのだがその前にレオンが声を上げる


「リック!左の個体を牽制!ハンスは中央!」


「了解!」


ハンスの矢が放たれウィンドウルフの額に命中した

左のウィンドウルフが反応し跳躍してレオンを襲いかかる

その瞬間


「今だ、ドーグ!」


「おう!」


ドーグが戦斧を振り抜いた

空中で戦斧が直撃し魔獣の頭蓋が砕けた

残る二頭


「右はガレス!」


「任せろ!」


騎士団長が飛び出し鋭い剣の一閃を魔獣の首に与えた

魔獣の首は宙を舞いやがて床に落ちた

最後の一頭はリックの短剣が喉を貫き戦闘が終了した

掛かった時間は僅か十数秒、魔獣は全滅していた

ドーグが笑う


「若様は指示が早い、敵の動きが見えているみたいだ」


レオンは曖昧に笑った

実際に見えている、こればゲーム知識ではない辺境で育った経験だ

父グラニウスに叩き込まれた知識

魔獣がどう動くか、どこを狙うか、誰をぶつければ最も効率良く倒せるか自然と分かるようになっていた

だがレオンは嬉しくなかった、本当に見ていてほしい人は今も病床に伏しているのだから

ノルディア領の北部へ入るにつれ景色は大きく変わっていた

木々は少なくなり代わりに岩肌の目立つ荒野が増えていく

吹き付ける風は冷くなっていた

遠くには白く雪を被った巨大な山脈が見え始めた

⸻バルド山脈⸻


王国最北端に存在する巨大な魔境

レオンは馬上からそれを見上げる

ゲームで何度も見た景色だ

だが、実際に見ると圧倒される

山そのものが空へ突き刺さっているようだった


「今日はここまでにしましょう」


エルンが周囲を見渡しながら言う。

既に日が傾き始めていた

ガレスも頷き口を開いた


「若様」


「大丈夫だ構わない」


本当には早く洞窟に到着したいだが、今は休息も必要だ

そう自分に言い聞かせつつレオンは馬を降りた

皆は野営の準備を始めた

騎士達は慣れた手付きで作業が続く

焚き火が灯る頃には辺りはすっかり暗くなっていた

パチパチと薪の爆ぜる音だけが響く

その時だったリックが地図を見ながら口を開いた


「本当に行くんですか」


「何がだ?」


ガレスが聞き返す

するとリックは地図の一点を指差した

バルド山脈の麓に記されている洞窟


「迷い洞窟ですよ」


空気が少しだけ重くなる

ドーグが顔をしかめた


「縁起でもない名前しやがって」


「事実だろ」


リックは肩を竦める


⸻《迷い洞窟》⸻


北方の人々では有名な場所だった『一度入れば二度と帰れない洞窟』子供ですら知っている

冒険者

傭兵

盗賊

それに王都の騎士団

数え切れない人間が挑みそして消えきた

だから今では誰も近付かない


「正直、魔物の群れに突っ込む方が気が楽だ」


ドーグが頭を掻いた


「同感だ」


珍しくハンスも頷く

ガレスは黙ったまま焚き火を見つめていた

彼も十二分に知っている

迷い洞窟がどれほどの死地なのか


皆が沈黙した

その時レオンが立ち上がった


「出口はある」


レオンが静かに言った

全員が顔を上げレオンに視線が集まる

焚き火の向こう少年の蒼銀の瞳は真っ直ぐだった


「若様?」


「俺は知っている」


それだけだった。

だが、その声には迷いがない

リックが困惑した顔になる


「どうしてそんなことが分かるんです」


レオンは少し考えたが答えられない

前世のゲーム知識だ自分でも信じ難い記憶の数々皆は命を賭けてここに居る

どこの様に伝えればいいか言葉が見つからなかった

少しの間焚き火の火を見つめながらレオンはゆっくりと口を開いた


「……夢だ」


結局そう答えた


「夢ですかい?」


「ああ……昔から何度も同じ夢を見てきた洞窟の中を歩く夢だ……」


完全な嘘ではない

実際に何十時間もゲームで攻略した

やり込み過ぎて夢に出るほどだった

騎士達は顔を見合わせた信じてはいない

だが誰も否定はしなかった

今は少しでも希望が欲しいただそれだけだった

その時ハンスが口を開いた


「若様」


寡黙な男にしては珍しい


「もし……もし見つからなかったらどうしますか?」


静かな声だった

誰も口にしなかった疑問

レオンは迷わなかった


「見つける」


即答だった。


「いや、見つけなければならない」


それだけだった誰もそれ以上は聞かなかった

普通ならただの12歳のまだ子供の言う事、しかも根拠は夢だけである

しかしレオンの振る舞いに誰もが信じてしまう謎の説得力があった

ハンスは小さく頷いた

皆の気持ちは一緒であった父グラニウスを救うための希望へ


⸻その頃⸻


王都から少し離れた街道を一台の竜車が猛スピードで走っていた


「もっと速く!」


御者席から焦った声が飛ぶ

竜車を操る小柄な人はフードは深く被られている


「絶対追われてる!」


本当には誰も追っていないのだが本人は本気だった


「辺境伯家だよ!?王都の騎士団まで動いてるんだよ!?ヤバい……早く逃げなきゃ!」


竜車は森の奥へ消えていく

その荷台には何も積まれていない

先程まで山積みだった荷物は全て消えていた


竜車を飛ばしなが御者席で古びた肩掛バックに次々と入れていく物を入れていく

食料や魔道具や貴重な品の全てを


「よし、これで全部だね」


満足そうに頷き最後の商品の瓶に手を取った

『謎の秘薬』と書かれたラベルの瓶をバックに入れた


本人は知らないその薬を探している少年が

今まさに命懸けでバルド山脈へ向かっていることを

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