第74話 群生地の正体
丘から戻った翌日
レオン達は再び実験場へ集まっていた
木箱の中では魔力草が順調に育っている
青白い葉は以前より大きくなり枯れる気配も無い
セリオスはその様子を見ながら頷いた
「間違いありません、栽培には成功しています」
クロエは嬉しそうに笑う
「やったね」
「まだ終わりではありません」
レオンは木箱を見る
「理由が分からなければ意味が無い」
偶然では産業にならない
再現出来てこそ価値がある
セリオスも頷いた
「その通りです」
レオンは机の上へ紙を置く
そして条件を書き出した
⸻
群生地の土
クロエの土
普通の土
⸻
三つとも成功
つまり土は関係無い
クロエも納得する
「少なくとも群生地の土じゃなきゃ駄目って訳じゃないね」
「ああ」
レオンは頷き次に紙へ書く
⸻
ボアの血
丘の水
⸻
「残るのはこの二つです」
セリオスが言った
レオンは腕を組む
そして整理を始めた
「まず群生地だ」
全員が視線を向ける
「魔力草の群生地には何があった?」
クロエが答える
「ウィンドウルフ」
「魔獣ですね」
セリオスも頷く
レオンは続けた
「解体場には?」
「ボアの血ですね」
ゼムが即答した
「そうだ」
レオンは紙へ線を引く
群生地
解体場
共通するものそれは魔獣だった
セリオスも少し考え込む
「確かに、魔力草の発見報告には魔獣の存在が記録されている事が多いですね」
レオンは頷いた
「魔獣の血には大量の魔力がある、そして群生地には魔獣がいる」
クロエも気付いたらしい
「……あ!じゃあ血は確定じゃない?」
「恐らくな」
レオンは答える
そして次の問題へ移る
「なら水だ」
部屋が静かになる
丘の湧水の魔力を帯びた水
解体場にも流れていた
レオンは昨日の事を思い出す
セリオスの反応、あれは明らかに普通ではなかった
「あの水は特殊です……間違いなく魔力を帯びています」
レオンは紙へもう一本線を引いた
血
水
そして群生地
少しずつ繋がっていく
クロエが首を傾げた
「でも何で群生地になるの?」
その一言で全員が考え込む
何故そこだけなのか
何故どこでも生えないのか
しばらく沈黙が流れた
そしてレオンが口を開く
「逆じゃないか」
「逆?」
クロエが聞き返す
「群生地だから魔獣が集まるんじゃない」
レオンは紙を見る
「魔獣が集まる場所だから群生地になるんだ」
セリオスの目が細まった
レオンは続ける
「魔獣が集まるすると縄張り争いをする、そして血が流れる……何故なら魔獣に必要な水が近くにあるから……」
クロエの目が少しずつ大きくなる
「それって……」
「天然の畑だ」
レオンは言った
「魔獣の血、魔力を帯びた水、その条件が揃った場所で発芽する」
セリオスも息を呑む
確かに説明が付く
群生地
解体場
討伐跡
全てだ
ゼムも静かに頷いた
「つまり再現可能という事ですね」
「ああ」
レオンは頷く
「条件さえ揃えればな」
クロエは木箱を見る
そこには順調に育つ魔力草
「じゃあ本当に栽培出来るんだ」
「そのようだな」
レオンは小さく笑った
セリオスは魔力草を見つめる
その表情には驚きが残っていた
「王国初かもしれません……いえ教国を含めても初でしょう」
誰も栽培など出来なかった
だから危険を冒して採取していた
だから高額だった
だが今は違う
目の前で育っている
クロエは思わず呟いた
「これ凄い事なんじゃない?」
「凄い事ですよ」
セリオスは苦笑した
「回復薬の材料を量産出来るかもしれないのですから」
部屋が静かになる
誰もがその意味を理解していた
回復薬
魔力草
孤児院
そして新しい産業
全てが現実味を帯び始めていた
レオンは木箱の中の魔力草を見る
まだ小さい
だが、この小さな芽が
ノルディア領の未来を大きく変えるかもしれなかった




