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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿
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第66話 回復薬

魔力草の話が一段落した頃

セリオスは再び資料へ手を伸ばした


「実は回復薬について一つお話があります」


レオンが視線を向ける

クロエも首を傾げた


「話ですか?」


「はい……」


セリオスは頷く


「多くの方は回復薬を薬師が作っていると思っています」


クロエは迷いなく頷いた


「違うの?」


「それは違います」


セリオスは静かに答えた


「回復薬は魔法陣で作られているのです」


部屋が静まり返る

クロエが目を丸くした


「魔法陣?」


「えぇ」


セリオスは一枚の羊皮紙を取り出した

そして机の上へ広げる

複雑な魔法陣だった

幾重にも重なる円

細かな文字

無数の線

クロエは数秒見つめる

そして即答した


「僕……全然分からない」


レオンは思わず苦笑する


「諦めが早いな」


「だって考えても分からないし」


クロエは開き直った

セリオスも苦笑する

一方レオンは魔法陣を見つめていた

最近は夜になると賢者の資料を読み続けている

魔法陣についても以前より理解は深まっていた

しばらく眺めそしてゆっくり口を開いた


「これは……魔力草の成分を抽出する魔法ですか?」


セリオスの目が僅かに見開かれる

そして穏やかに頷いた


「えぇ正解です」


クロエが二人を見比べる


「何で分かるの?」


「何となくだ」


「絶対嘘だよね」


即答だった

レオンは肩を竦める

セリオスは小さく笑った


「実際かなり正確です」


セリオスは魔法陣に指をさしながら答えた


「この魔法陣は魔力草から有効成分を抽出するためのものです」


そう言って資料をめくる


「回復薬の材料はそれほど多くありません、まず主材料は魔力草……そして……水です」


クロエが目を瞬かせた


「それだけ?」


「正確にはこの魔法陣も必要ですが」


セリオスは頷く


「材料だけならそれだけです」


レオンは腕を組む

思ったより単純だった

もっと希少な素材が必要なのかと思っていた

その時、クロエがふと手を挙げた


「ちょっと待って」


「何だ?」


「回復薬って誰が作るの?」


レオンとセリオスが視線を向ける

クロエは続けた


「火属性じゃ無理とか、治癒魔法が使えないと駄目とか、そういうのあるでしょ?」


商人として当然の疑問だった

もし特殊な才能が必要なら量産は難しい

だがセリオスは首を横に振った


「いいえ、回復薬製造に属性は関係ありません」


クロエが目を瞬かせる


「え?」


セリオスは机の上の魔法陣を指差した


「回復薬を作るのは人ではなく魔法陣です、なので術者は魔力を流し込むだけ」


そして静かに告げた


「魔力さえあれば誰でも作れます」


部屋が静まり返る

レオンも少し驚いた


「誰でもですか?」


「えぇ」


セリオスは頷く


「火属性でも水属性でも風属性でも土属性でも関係ありません、魔力さえあれば作れます」


クロエは目を丸くした


「そんな簡単なんだ」


「だからこそ材料不足が問題なのです」


セリオスは苦笑する


「魔力草さえ十分に確保出来れば生産量は大きく増やせます」


そう言って資料を広げた

そこには各国への出荷量が記されていた


「教国は現在も回復薬を生産しています……ですが需要に供給が追い付いていません、騎士団、冒険者、傭兵、各国の軍、回復薬を求める者は非常に多いのです」


レオンも理解する

戦争

討伐

護衛

需要が無くなる事はない


「ノルディア領も例外ではありません」


セリオスは続けた


「魔物被害が多い地域です、そのため王国内でも優先的に回復薬が回されています」


レオンは頷いた

確かに討伐隊や騎士団には欠かせない

だが、セリオスは少し表情を曇らせた


「それでも限界があります、王国へ流れる回復薬の数には限りがあります…………材料不足が原因です」


クロエが腕を組む


「つまり魔力草が増えれば回復薬も増える?」


「その通りです」


セリオスは頷いた


「王国へ流れる量も増えるでしょう」


しばらく沈黙が流れる

そしてクロエがふと口を開いた


「でもさ」


全員の視線が集まる


「栽培出来るなら話変わってくるよね?」


レオンが眉を上げる


「どういう事だ?」


クロエは当然のように答えた


「輸送だよ」


机を指で地図をなぞった


「ノルディアで魔力草を採る、それを教国へ運ぶ」


セリオスが頷く


「えぇ」


「教国で回復薬を作る」


「そうですね」


「それを王都へ売る」


「はい」


クロエは首を傾げた


「無駄じゃない?」


部屋が静まり返る


「ノルディア……教国……王都……こそれで結局ノルディアにも回復薬が来るんでしょ?」


レオンも思わず考える

確かにその通りだった


「輸送費も掛かるし護衛も必要、馬車も必要だし、途中で盗賊や魔物に襲われるかもしれない」


クロエは肩を竦めた


「だったら最初からここで回復薬にした方が安くない?」


商人らしい発想だった

セリオスも苦笑する


「物流だけを考えればその通りです……ですが問題があります」


そう言って魔法陣へ視線を向けた


「この魔法陣は教国の秘術です」


空気が少し変わる


「回復薬の製法は国家機密です、魔法陣まで流出すれば国家問題になります」


そしてセリオスは苦笑いをする


「流石に私の独断では許可出来ません」


クロエも納得したように黙った

だが、レオンは一つの言葉が引っ掛かっていた

魔力さえあれば誰でも作れる

その言葉だった

そして静かに口を開く


「なら孤児院で作ればいい」


セリオスが固まった


「……はい?」


クロエも目を瞬かせた

レオンは続ける


「王国の孤児院は教国管理ですよね?」


「えぇ」


「なら施設も人員も教国側だと製法も守れます」


部屋の空気が変わった

セリオスは無意識に身を乗り出していた

レオンの提案の意味を理解し始めていたからだった

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