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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿
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第63話 薬草採取

翌朝、孤児院の前には子供達が集まっていた

籠を抱える子

背負い袋を背負う子

皆慣れた様子で出発の準備をしている

その中には白い法衣を纏った青年の姿もあった

セリオスだった

周囲には教国の護衛騎士達そして

ガレス

エルン

リック

ハンス

ドーグ

ノルディア騎士団の五人もいる

レオンの姿は無い

領主として政務があるためだ

出発前、レオンは一言だけ言っていた


「子供達を頼みます」


その言葉を思い出しながらセリオスは子供達を見る


「セリオス様!」


小さな少女が駆け寄って来た


「今日は一緒に行くの?」


「はい」


セリオスは微笑む


「皆さんのお仕事を見学させて頂きます」


子供達の顔が明るくなる


「じゃあいっぱい教えてあげる!」


「僕達詳しいんだぞ!」


セリオスは思わず笑った

そうして一行は森へ向かった



森へ入ると子供達はすぐに動き始めた

慣れた足取りで薬草を探していく

セリオスはその様子を見守っていた

すると一人の少年が薬草を掲げる


「止血草見つけた!」


セリオスは頷く


「正解です、どんな効果があるか分かりますか?」


少年は胸を張った


「傷を塞ぐ!」


「その通りです」


すると別の少女が手を挙げた


「でも天日干しは駄目!薬効が落ちるから陰干し!」


セリオスが目を瞬く


「よく知っていますね」


「レオン様が教えてくれた!」


少女は得意そうだった


さらに別の少年が薬草を持って来る


「これ毒草!葉っぱは毒だけど根っこは薬になるやつ!」


セリオスが確認する

確かにその通りだった

薬師でも知らない者がいる知識だ


「正解です、根には解熱作用があります」


すると別の子も続ける


「葉は使わない!お腹壊すから!」


さらに別の子


「採った後は布に包むんだぞ!袋にそのまま入れると傷む!湿ったままだと腐るし!」


次々と知識が出てくる

セリオスは言葉を失った

薬草の名前だけではない

保存方法

採取方法

毒性

薬効

全て理解している

普通の孤児院では考えられない知識量だった


「凄いですね……」


思わず本音が漏れる

すると子供達は不思議そうな顔をした


「普通だよ?」


「レオン様が教えてくれたし!」


「本も貸してくれた!」


セリオスは小さく息を呑む

やはりそうか、この知識は偶然ではない

レオンが教えているのだ


「レオン様は何でも知ってる!」


「物知りだからな!」


子供達は誇らしげだった

セリオスは小さく笑った

領地運営だけではない

知識まで与えている

やはり普通の十五歳ではなかった

その時だった、一人の少年が声を上げる


「あれ?」


皆が振り返る

少年の手には見慣れない薬草があった

青色の葉

淡く光る茎

セリオスの表情が変わる

すぐに近寄った


「見せて下さい」


慎重に観察する


そして目を見開いた


「魔力草……」


周囲の子供達が首を傾げる

聞いた事の無い名前だった

セリオスは薬草を見つめる

何故こんな場所にある

本来ならそう簡単に見付かる薬草ではない

何か引っ掛かる

だが今は答えが出なかった


「大事な薬草です……丁寧に採取しましょう」


子供達は頷いたその直後だった


「グルルルル……」


低い唸り声

空気が張り詰め子供達が固まった

森の奥の木々の間から三頭の魔狼が姿を現す

ウィンドウルフだった

風属性を持つ狼よりも一回りも大きい魔獣だ

普通の兵士なら苦戦する相手だ


「下がってろ」


ガレスが前へ出る

長剣を抜く

その隣には戦斧を担いだドーグ

後方ではハンスとリックが弓を構えていた

エルンは周囲へ視線を走らせる


「右から一頭来ます」


即座に指示を飛ばした

次の瞬間

ウィンドウルフが飛び掛かった


「ヒュンッ」


ハンスの矢が飛び先頭の魔狼の肩を貫く

ほぼ同時リックの矢が足を射抜いた

ウィンドウルフ動きが止まる


「行くぞ!」


ガレスが踏み込む

長剣が閃く

一頭目が倒れる

横から飛び掛かった二頭目を

ドーグの戦斧が叩き潰した

轟音と共に巨体が地面へ転がる

最後の一頭が逃げようとする

だが、既にエルンが回り込んでいた

剣が閃きウィンドウルフの首が落ちた

それは戦闘終了だった

時間は一分も掛からなかった

子供達から歓声が上がる


「凄い!」


「ガレスさん強い!」


「ドーグさんも!」


「ハンスさんの矢速かった!」


セリオスも感心したように息を吐く


「流石ですね」


倒れたウィンドウルフを見る


「ノルディアの精鋭部隊と言われるだけあります」


すると、エルンが苦笑した


「指揮ならレオン様の方が凄いんですけどね」


セリオスが目を瞬く


「レオン様がですか?」


「ええ」


エルンは頷く


「敵の配置、地形、戦力差、全てを考慮して指示を出します」


少し笑う


「私も長く戦場に居ましたが、レオン様ほど先を読める方は見た事がありません」


セリオスは驚いた


「戦闘の指揮もされるのですか?」


今度はガレスが笑う


「するどころじゃありませんな、今では我々の方が教わる事も多い」


そして続けた


「それに剣なら私より上ですしな」


セリオスが固まる


「レオン様がですか?」


「ええ」


ガレスは頷く


「最近は模擬戦でも勝てません……年齢を考えると末恐ろしいです」


セリオスは言葉を失った

ノルディア騎士団長

北の戦神グラニウスの左腕と言われてた武人

十五歳にもなっていない少年が

その男よりレオン上だと言う

信じられなかった

するとリックが笑う


「そりゃそうですよ」


皆の視線が集まる

リックは肩を竦めた


「旦那は毎日」


指を折る


朝は剣術、昼は政務、夜は魔術の訓練、その後は魔法陣の研究ですからね」


セリオスが目を瞬く


「魔法陣まで……」


「ええ」


リックは当然のように頷く


「いつ寝てるのか俺も知りません」


ハンスも頷いた


「私も知りません」


ドーグが腕を組む


「若いって怖ぇな」


エルンがため息を吐く


「若さの問題では無いと思いますが……」


セリオスは黙る

領主

剣士

魔術師

研究者

そして指揮官

どれか一つだけでも大変な事だ

それを全て続けている

自然と空を見上げそして小さく呟いた


「何故そこまで……」


その声は誰にも届かなかった

だが、その疑問はセリオスの中に深く残る事になる

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