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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います(編集中)  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿

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第62話 枢機卿のお願い

翌日。

レオンは執務室で、机の上に積み上がった書類を片づけていた。


コンコン、と扉が叩かれる。


「入れ」


返事をすると、扉が静かに開いた。

入ってきたのはセリオスだった。

その後ろには、いつもの護衛騎士が控えている。


「失礼いたします」


「どうされました?」


レオンは書類から顔を上げた。

セリオスは僅かに申し訳なさそうな笑みを浮かべる。


「一つ、お願いがありまして」


「お願い?」


「はい」


セリオスは頷くと、真剣な表情でレオンを見つめた。


「薬草採取へ同行させていただけないでしょうか」


思いがけない申し出に、レオンは目を瞬かせる。


「薬草採取ですか?」


「はい」


セリオスは迷うことなく頷いた。


「昨日、子供達と話をしました。皆さん、薬草に関する知識を驚くほど身につけています」


そこで一度言葉を切り、僅かに眉を下げる。


「ですが、実際にどのような場所で、どのように採取しているのかまでは分かりません。子供達が危険な環境で働いていないか、自分の目で確かめておきたいのです」


レオンは納得するように頷いた。

確かに、セリオスなら言いそうなことだった。

教会の孤児院を監督する立場として、帳簿や話だけではなく、実際の現場まで見ておきたいのだろう。


「危険ですよ?」


「承知しております」


即答だった。


「護衛もおりますので」


その言葉に応えるように、背後の護衛騎士が胸を張る。

レオンは腕を組み、少し考えた。


薬草採取には討伐隊の巡回と騎士の護衛がつく。

危険な区域へ近づくことも禁じている。

それでも、魔獣の棲む森へ入ることに変わりはない。

安全だと言い切ることはできなかった。


だが、セリオスの性格を考えれば、止めたところで簡単には諦めないだろう。


「分かりました」


「ありがとうございます」


セリオスの表情が、分かりやすく明るくなった。


「ただし、条件があります」


「条件ですか?」


「護衛はこちらで出します」


セリオスが僅かに目を見開く。


「ノルディア騎士団の方々を?」


「ええ」


レオンは頷いた。


「さすがに、枢機卿をノルディア領の森で怪我させるわけにはいきませんから」


その瞬間だった。

執務室の扉が勢いよく開かれる。


「若様! お呼びですか!」


現れたのは、騎士団長のガレスだった。

レオンは開け放たれた扉を見つめ、僅かに眉を寄せる。


「……まだ呼んでいない」


「そうですか。まだでしたか」


ガレスはまったく気にした様子もなく、堂々と頷いた。

その背後から、今度はリックがひょいと顔を覗かせる。


「旦那! 俺達、暇なんだけど!」


「お前は絶対に暇ではないだろう」


「大丈夫だ! 新人に仕事を押しつけてきた!」


リックは笑顔で胸を張った。


「何が大丈夫なんだ。絶対に後で怒られるぞ」


「多分な!」


まるで反省していない。

さらにその後ろから、額を押さえたエルンが姿を現した。


「レオン様」


「何だ?」


「後ほど、リックを説教してもよろしいでしょうか」


「好きにしろ」


即答だった。

先ほどまで笑っていたリックの顔が、目に見えて引きつる。


一連のやり取りを眺めていたセリオスは、堪えきれず小さく吹き出した。

ノルディア騎士団は、彼が想像していたよりも遥かに賑やからしい。


レオンは疲れたようにため息を吐くと、三人へ顔を向けた。


「ちょうどいい。明日の薬草採取に、枢機卿様も同行されることになった」


ガレス達の表情が僅かに引き締まる。


「ガレス、エルン、リック。それからハンスとドーグを加えた五人で護衛してくれ」


「お任せください!」


ガレスは力強く胸を叩いた。


「枢機卿様は、俺達が必ずお守りします!」


リックも威勢よく続く。

すると、隣に立つエルンが冷ややかな視線を向けた。


「その前に、あなたは新人へ押しつけた仕事を片づけてください」


「……明日までには何とかする」


先ほどまでの勢いは、すっかり消えていた。

セリオスは苦笑しながら立ち上がると、ガレス達へ丁寧に頭を下げた。


「ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」


「はい! 我々にお任せください!」


ガレスの力強い声が、執務室に響き渡った。

こうしてセリオスも同行する、翌日の薬草採取が決まったのだった。

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