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乙女ゲーの辺境伯に転生したので奴隷落ちする悪役令嬢を金貨2万枚で救おうと思います  作者: トンビが鷹を産んだトンビの方
第4章 新事業と枢機卿
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第50話 成功してるのに足りない

ノルディア辺境伯家執務室

朝日が大きな窓から差し込んでいた

執務室の中も昔とは違い壁際には本棚

机の上には帳簿の山

地図やら討伐報告書や税収報告書それに商会との取引記録

辺境伯家の執務室というより商会の事務所に近い

レオンは一冊の帳簿を閉じた

静かな音が部屋に響く

窓の外では朝日が昇り始めていた

父グラニウスの死から二年半

ノルディア領は大きく変わった

討伐隊の死者はほぼゼロ

以前は毎回のように死傷者が出ていた

家族を失った子供は孤児院へ送られる

そして仕事を求めまた討伐兵に志願する

その繰り返しだった

だが今は違う

討伐方法を変えた

帝国製の大楯を導入した

無理な突撃を禁止した

結果、死者は激減した

見舞金の支出も大きく減り兵士も増えた

ボア肉事業も順調だった

三ヶ月に一度はクロエと取引を行いボア肉を積み込む

代わりに王都周辺の生活物資を運び込む

利益は最小限のほぼ原価

それでも意味はあった

今まで手に入りにくかった物が店に並ぶ

人が集まる

金が落ちる

街が賑わう

税収も増えた

領民の暮らしも確実に良くなっている

順調だった

誰が見ても成功していた

だがレオンの表情は晴れない

帳簿の最後の数字を見る

現在資産

金貨二〇二三枚

目標

金貨二万枚

あと六年

レオンは椅子へ深く座り込んだ


「足りないな……」


確実に成功している

だが全く足りない

あと六年で一万七千枚以上

どう考えてもボア肉だけでは届かない

新しい事業が必要だ

それも今まで以上の規模の事業

レオンは天井を見上げた


そしてもう一つの問題を思い出す

クラリス・ローゼンベルク

乙女ゲーム 【ノルドレア・ロワイヤル】


前世の記憶

レオンは紙を一枚取り出した

そこには攻略対象達の名前が並んでいる


アレク

ルーカス

セリオス

カイン


レオンは順番に視線を動かす


アレクルート

クラリスは断罪される

奴隷として売られ帝国へ渡る

そして王都を滅ぼしに来る


ルーカスルート

王国と帝国の戦争

ノルディアは最前線になる


セリオスルート

民衆の反乱

貴族狩り


カインルート

龍脈改変

バルド山脈周辺は大混乱になる

そこまで考えてレオンは動きを止めた


「待てよ……」


ゲームでは描かれていない

だがノルディアはどうなるかレオンは考えた


アレクルート


クラリスは断罪され奴隷として帝国へ売られる

帝国の実験体となり最後には王国を滅ぼす存在となる

そのクラリスが王国へ侵攻する際

帝国からだとノルディアを通る

辺境伯領が無事なはずがなかった


ルーカスルート


王国と帝国の戦争が起こる

それはゲーム内でも描写されていた

帝国軍は王都付近まで進軍している

ならば、その間にあるノルディア領はどうなったか

考えるまでもない


カインルート


龍脈改変で北竜が復活

北のバルド山脈から現れた竜は王都へ向かう

その道中に存在するのはノルディア領だ


セリオスルート


セリオスが倒れる事で暴動が起き

貴族粛清が始まる

民衆が貴族を襲い屋敷が焼かれる

そして処刑が行われる

ゲームでも多くの貴族が命を落としていた

辺境伯家であるノルディア家が無事で済むはずがない


レオンの背筋を冷たいものが走る


「全部駄目じゃないか……」


どのルートでもノルディアが滅んでいる

ゲームでは描かれなかっただけ

王都の外では

既に終わっていたのかもしれない

レオンは目を閉じた

クラリスを救う

最初はそのつもりだった

だが、それだけではないのかもしれない

ノルディアを守るためにも

未来を変えなければならない

コンコンっと、扉が叩かれた


「レオン」


聞き慣れた声

それはクロエだった

レオンは顔を上げる


「あぁいいぞー」


扉が開く

灰色の髪を揺らしながらクロエが執務室へ入ってきた

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